第144話 飛行機に乗る。
出国審査と手荷物検査を受け、ANAスイートラウンジに向かう。
羽田空港のスイートラウンジは4階にあるため少し遠い。
ガラガラと、リモワのスーツケースを引っ張りながらラウンジを目指す。
長いエスカレーターを抜けるといきなり出てくる。
「お、ここか。」
ラウンジに入り、受付のスタッフさんから説明を受ける。
ラウンジに入ってみると、その静謐さに驚く。
そして人が少ない。
ほぼ貸切状態だったため、飛行機がよく見える窓側の席に陣取った。
荷物を置いて、軽食のメニューを物色すると、なんと生パスタがある。
今日のメニューはディアボロ風だったので、今から飛行機に乗ることを考えると胃の中がシェイクされそうな気がしたのでやめておく。
「お、海鮮丼あるじゃん。海鮮丼にしよ。」
まぁ海鮮丼でも気圧の関係で胃の中がおかしくなるかもしれないのは同じなのだが。
ということで海鮮丼を頼んでみると予想外の豪華さに驚く。
「これがファーストクラスか…。」
ファーストクラスラウンジではお酒も飲み放題なので、お酒を嗜まれる方には非常に良いだろう。
私はあんまり飲めないし、好きじゃないけど。
スイートラウンジは思ったよりも時間が潰せて、非常に過ごしやすかった。
スイートラウンジにはシャワーもあるのだが、今回は家を出る前に入浴してきているため、利用するのはやめておこう。
ラウンジの席で、パイナップルジュースを側に用意して、
パイロットトロリーからMacBook Proを取り出し、愛用のゼンハイザーのノイズキャンセリングヘッドホンをセッティングする。
ゼンハイザーのヘッドホンは割と最近買ったのだけど、こいつがなかなかいい仕事をする。
ヘッドホンやイヤホンといったガジェットが好きなのは男なら誰しも理解してくれると思う。
このヘッドホンはなかなか優れもので、ノイズキャンセリングの性能も良い。
音作りもわざとらしさがなく、低音の迫力と高音の抜けが気に入っている。
搭乗時間までは大学の入学前課題をこなした。
集中が高まり気分が乗り始めたところで登場時間となり、
少し消化不良を感じながらも搭乗ゲートへと向かう。
本日の搭乗ゲートは45番。
ゲート前について一息ついたところで、ダイヤモンドメンバーとファーストクラス利用者が呼ばれ、機内に乗り込んでいく。
飛行機のキャビンクルーさんたちは、飛行機のことをシップと呼ぶけど、あれかっこいいよね。
仲良いCAさんに教えてもらった。
ガラガラとスーツケースを引っ張り、ボーディングブリッジを歩き、シップに乗り込む。
座席に着いたところで感動した。
私は知らなかったのだけど、今ANAではファーストクラスのことをTHE Suiteと呼んでおり、座席の改修が行われたそう。
私が知っているファーストクラスの席よりはかなり豪華で贅沢になっていた。
まず座席のデザインが違う。
後から教えてもらったけど、あの布団の西川と協業して、まるきり新しいものに変わったらしい。
触るとふかふかで気持ちよい。
そして1番の驚きが完全な個室(天井は空いているので厳密には違うが。)になったことだ。
ドアがついたのだ!
これには驚いた。
1-2-1の配置で2列計八席があり、私は窓側の席だけど、真ん中の2席であればとなりとのパーティションを下げて、広い部屋みたいにして使うこともできるようになってるとか(伝われ)
1人感動して、荷物を小物入れにしまったりしていると声をかけられた。
「藤原様。本日はご搭乗ありがとうございます。
本日藤原様のフライトを担当させていただきます、徳森と申します。
よろしくお願いいたします。」
「あ、ありがとうございます。よろしくお願いします。
このファーストクラス初めてなので色々教えてくださると助かります。」
「承知いたしました。それでは…」
その後の徳森さんの流れるような説明は心地よく、大変助かりました。
アメリカの税関の申請用紙やリップクリームなどのアメニティもたくさんもらえて嬉しい。
「ウェルカムドリンクのご用意がありますがいかがいたしますか?」
「あ、じゃあオレンジジュースでお願いします。」
「かしこまりました。少々お待ちくださいませ。」
どうやら、離陸前にパジャマに着替えて良いらしいので私も着替えることにする。
ファーストクラスは綿100%のめちゃくちゃ着心地のよいパジャマが用意されていて、これがまた快適。
持って帰っていいらしいのでありがたい。
行きと帰りで2着手に入りそうでこれもまた嬉しい。
何着か集めて家のパジャマもこれにしよう。
少し機内は肌寒いので、パイロットトロリーから上着も取り出す。
今日の上着はロンハーマンのふわふわパーカーだ。
触り心地がたまらないので飛行機に乗る時は大体いつも持って行くようにしている。エコノミーに乗ってた時はこのパーカーが布団代わりになってたんだけど、今はこんなふうになっちゃったなぁ。
いいやら悪いやら。
着替え終わって、パソコンを取り出して、といったところで徳森さんがオレンジジュースを持ってきてくれた。
キンキン冷えててうまい。
「藤原様のことは早坂からよーく聞いております。」
一瞬オレンジジュースを吹きかけた。
「可愛がってくださっているようで。
今後ともよろしくお願いいたします。」
早川さんとは何年か前に仲良くなったCAさんで、いい感じの仲だったが、やはりお互いのスケジュール感の違いで進展はしなかったものの、今も良い友人として付き合いが続いてるCAさんである。
「あ、それはそれは…どうも…」
なんとも歯切れの悪い返事になってしまった。
ここでもう結婚したんですと言ってしまうと早坂さんと何かあったと言っているようなものだし、聞かれてもないことをベラベラと喋るのもなんか気分が悪いし、そもそも早坂さんと徳森さんの関係性がよくわかってないのであまり滅多なことも言えないし。
歯切れ悪くてもしょうがないと、自分を納得させる。
順調に進むと見えたフライトが乱気流に突入したような格好だが、何はともあれ離陸した。
大丈夫か?私。
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