第116話 告白。


「で?話って?」




私は先日の出来事を先輩に話そうと思い、アメリカの居候している先生の家に来てもらった。


たまたま先輩は先生の弟子の1人、つまり姉弟子にあたる人に着いてワールドツアーを回っており、折よくアメリカ公演の最中だったため、割と簡単に都合がついた。



「実は話すと長いのですが、単刀直入に申しますと、2人と結ばれました。」



「あら。遅かれ早かれそうなるとは思ってたけど、思ったより早かったね。」



「えっ?」




「そりゃそうよ。私がしたように、いつか暴発するだろうなぁ。と思ってたんだから。

で?2人にはちゃんと私のこと話してあるの?」


「ちゃんと話しました…。」



~~~〜〜〜時は遡り結ばれる直前。~~~〜〜〜




「実は2人に話しておかなきゃいけないことがある。」


「何?」


「あれじゃない、たぶん先輩のこと。」


「あぁ!」


「!?!?!?」

なんで知ってんの!?!?



「えっなんで知ってんの!?」


「だって私たち女の子ですもん。ねぇ?」


「そりゃそうだよ。柳井さん見てたらヒロのこと好きなの丸わかり。

ヒロが女の子と話してるの見かけた時なんかそわそわしてて、見てるこっちが辛かったような時もあったよ?

でもいつからか忘れたけど先輩に余裕を感じるように見えた。

例えるなら…正妻の余裕っていうのかな…。」




そう、まさにその通り。

先輩に私は既に口説き落とされてしまっていた。

日本を出る2日前くらいに、先輩からご飯に誘われて、先輩の覚悟を聞かされた。


そして、葛藤の中にあった自分のタイミングもあり、先輩と結ばれたのだ。




先輩は、そのときに言った。

きっとこの先何人も女は出来るし寄ってくるだろう。


でも、その場のノリと勢いでその子を抱くようなことはやめてほしい。


ちゃんとあなたのことを見ている人ならどれだけ遊んでてもいい。

藤原吉弘という名前を安売りすることだけはやめろ、と。






「うん、実はもう先輩とは…。」


「私たちはそのことはとっくに感づいてたよ。

でもねそれでも良いの。

ヒロが見る世界を一緒に見ていきたい。」



「私もそう。ヒロと一緒に歩いていきたい。

私だけにして、なんて言えないよ」






〜〜〜〜〜


「とまぁ、こんな具合でして…。」


「あの2人なら間違い無いね。私も仲良くできそう。」


「ごめんなさい。」


「謝ることなんかないわよ。

こうなることもわかっててあなたの傍が良いって望んだんだから。

そもそもまともな感覚してたら抗えないって。こんな良い男。」




貶されてるのか褒められてるのか…。


いや、褒められてるか。




「ありがとう。本当に。」


「どういたしまして。」


「これからも精進してまいります。」


「よろしい!

まぁ音楽家なんてクリーンな人間関係維持してる人なんていないんだから。

むしろヒロは純愛な方でしょ。」


「えぇ!?!?」


「そりゃもう先生も若い時は…」


「!?!?

若い時はどうだったの!?!?」


「そんなの到底私の口からは…」


「めちゃくちゃ気になる…。」



その話の後は、せっかくなので新作の譜面を見てもらったり、久々に稽古をつけてもらったりした。



「良いじゃん、新作。」


「でしょ?自信作。」


「でも珍しいね、ポップス。」


そういえば、先輩にはこれまで古典的なクラシックしか見せてなかったかもしれない。

自分の中では体感的に半々のつもりだったが。


「最近はポップス寄りのインストが多いよ。」


「そうなんだね。売れてる?」


「そこそこ。」


「結構なことで。」

先輩は満足げな表情でうなずいた。



先輩と音楽してて、気付いたら夜が明けていた。






先輩とは同じ音楽家として、

ひなちゃんとは安心して背中を任せられる存在として、

幸祐里とは友達のように一緒にバカやる仲間として。


3人それぞれと一緒に今後も人生を歩んでいきたい。






3人のおかげで私はもっともっとがんばることができる。


私はまだまだ成長途中。

本当に男として、昨今の人としての常識に当てはまっていないのは自覚している。

でも仕方ない。

3人から一人を選ぶなんてできないよ。



私の天命はもっともっと音楽をたくさんの人に届ける。

自分の演奏でも、自分の作品でも。

それを支えてくれるのなら、

私のことを愛してくれるなら、

私も愛で返しましょう。

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