第115話 本番アフター


本番の後は近くの小洒落たダイナーに2人をご招待した。

そこで2人の近況報告を改めて聞いた。






「まぁ私たちは2人でミスコングランプリとった。」


「そう、初のことらしいよ。」


これには素直に尊敬の念を抱くしかない。

偉業だと思う。


「すごいじゃん。幸祐里は芸能の道に進むの?」


「うーん、楽しそうだなとは思うけど、それで生きていくつもりはないかなぁ。」

この返答がなんとも幸祐里らしい。


「じゃあ、ひなちゃんには話したけどうちの事務所来る?」


「ヒロの事務所?そんなのあるの?」


「うん、仕事の窓口ってだけだけど。」

事務所といってもほぼ開いていないので防波堤の役目しかない。


「なんか仕事やらされるのは嫌だなぁ。」




「仕事なんてないよ。そもそも事務所開いてないし。」

うん、昼間の1時間しか回線繋げてないし。

そもそも日本に帰ってないし。


「あれ?それなのに事務所?」


「風除けよ、風除け。」


「なるほどね。そういうことなら入る。」


「いいの?ほんとに仕事ないけど。

仕事もないからお給料もやった分しかないけど。」

そもそも仕事ないどころかやる気もないけど。



「いいよ、別に本気でモデルとかやるわけでもないし。

会社っていう後ろ盾があるだけでいいの。」


そういうものなのかな。


「わかった、じゃ後でメールしとくね。」


「わかった!!!」

所属タレントが三人になってしまったのでいよいよメールアドレスくらいは公にしてもいいかなと思ったりもするがなんともめんどくさい。



「そういうヒロくんは最近何してるのよ。」

この質問はひなちゃんだ。


「別に何してるってわけでもないけど、好きなこと好きなようにやってるって感じかな。

あえて言うならこんなんやってみない?って友達に言う仕事してる。」



「なんかノリ軽いなぁ。」


「考えて答えが出るものでもないからね。答えなんてないのに。」


「そう言われたらそうね。」


「音楽なんて形無いものでご飯食べて行こうと思ってるんだから正解なんて気にしてたらやってらんないよ。」


「なんかプロっぽい。ね?」


「うん、なんかかっこいい。」


「それは元から。」


「自分で言うなし。」


「自分で言われると腹立つよね。」

2人から総スカンを喰らってしまった。


その後は今後どんなことをやっていきたいのか聞いたり、逆に自分は何をしたいのか言ったりして未来への実りがある食事会となった。




そして、食事会の最後、幸祐里から爆弾が投げ込まれた。



「それでさ、ヒロ。」


「うん?」


「昨日緋奈子と寝たんでしょ?」

私は飲んでいたペリエを吹いた。



「お前どこでそれを!!!」


「私言っちゃった。」

一番身近なところにおったで犯人。


「だからさ、寝たんでしょ?」


「まぁ、そうだけど。」

添い寝しただけなのだが。


「じゃ、今日は私ね。」


「えぇ!?」


「なによ、緋奈子は抱けて私は抱けないの?」


「いや、そういう訳じゃ…」


「なによ!」

まずい、幸祐里の目がうるうるしてきた。



「ん〜〜…わかった。私も男だ。


腹括った。2人まとめてこい。」

2人まとめてといえば引くだろうという打算があったのは否めない。


「いいね、2人。

私初めてだから先輩がいるの助かる。」


「わたしもさんせー!」

いきなり追い込まれる2対1の窮地。

どうやら逃げ切れないということを悟った。



ご飯が終わると、2人はウキウキ、私はドキドキで車に乗りホテルに向かった。

幸祐里も来たし、せっかく三人なのでホテルの部屋のアップグレードは既に済ませておいた。



部屋が変わったので、またベルのスタッフに部屋まで案内をしてもらう。

昨日までの部屋よりはだいぶ広い。

ベッドも大きい。




新しい部屋に2人は大騒ぎ。

私は逆に緊張が。

なにぶん久しぶりのことなのでね……。

いやなにがとは言いませんけどね。

2人はそそくさとシャワールームに消え、部屋に1人取り残された私はさらに緊張が高まることを自覚する。

すぐのようにも思えるし、かなり長かったようにも思えるが2人はシャワールームからバスローブ姿で出てきた。




「ヒロもお風呂どうぞ。めっちゃいいお風呂だったよ!」


「うん!ヒロくんも気にいるくらいのゴージャスで広いお風呂!」


「お!じゃあ楽しみにしながらお風呂入ってくるね。」

今めっちゃぎこちないね私。

なんかわざとらしいわ。

そんな1人反省会をしながら風呂に入る。

たしかにお風呂は綺麗で豪華で私の好みだった。

さすがは今大注目の都市型スタイル高級ホテル。



そして、私もバスローブ姿でリビングに戻る。

今から一世一代の大いくさが始まると思うと武者震いが止まらない。

と、いったところで、ここから先は勘弁してください。

私の名誉のためにも彼女たちの名誉のためにも。






まぁ一言言えるのは、やっと繋がることができたということですね。


女性に対する変な怖さも和らぎました。


彼女たちのおかげで。

そう、彼女たちの。




そして夜が明けて朝。




「とんでもないことをしてしまった。」



「そうね、とんでもないことしちゃったわね。」


「うん、とんでもないことをしたね。」

私の独り言に対して返ってくる返答は二つ。

言うまでもなく幸祐里と緋奈子だ。




「お兄さん、この代償は高くつくよぉ〜。」


「美人局かよ。」


「そんなんじゃ無いけど~」

緋奈子と幸祐里は悪戯っぽく、それでいて幸せそうに笑っていた。




「じゃ私行ってくるから。ゆっくりしててね。」


私は昨日の演奏会の反省会があるのでホテルの部屋を出る。


「いやぁ、すごかった。」



ちなみに、この後会う友人たちには


「なんかヒロの色気がすごい」と言われまくるのだが


それはまた別の話。


なんで私の色気が増えるんだよ。

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