第106話 一時帰国2


いつも通りの時刻に目が覚めて、軽くストレッチ。

まだ早い時間帯なので、家の周りもランニングする。


ランニングのお供は最近のjpopヒットチャート。

アウトプットも大事だけど、インプットが無けりゃアウトプットにも限界があるからね。



あ、そうそう、gonewindレコ大最有力で、紅白出るらしいね。

家にテレビないからわからないけど。

事務所も社員も社長も不在のため電話回線開けてないけど。




ランニングしてると横に並ぶ影が。


「ん?」


「あ!!!やっぱり先生だ!!!!」


「!?!?!?」


「Syunです!!Ma'am Wooの!」


そういえばgone windのバンドの名前そんなんだったなぁと思い出す。

Ma'amと略す癖にマダムと読ませるとはひねくれたバンド名だと思った記憶がある。



にしてもすごい偶然だ。


「ああ!!!!お久しぶりです!お元気でしたか?」


「もちろんですよ!!

先生のおかげでライブもたくさんできてます!

その体力作りでランニング中なんです!

積もる話もありますしぜひ!」


Syunさんは近くの早朝から開いてるカフェに私を連れて行く。

行きつけらしい。


私はアイスラテをノンシュガーでお願いした。



「先生はニューヨークにいらっしゃるって聞いたんですけど、まさかこんなところで会うとは…。」



「今一時帰国中なんですよ。

Syunさんこそ、レコ大も紅白もおめでとうございます。」




「もう本当に先生のおかげで…!

まだ両方とも本決まりじゃないんですけどね。


やっと、いつまたバイトしなきゃいけなくなるか分からない域を脱出しました!」




その言葉を聞いてやはり音楽業界は当たるとでかいが、それでご飯を食べていくのは難しいのだと実感する。


「よかったです。

Wooの皆さんはたくさんの素晴らしいものをお持ちでしたから。」


「それもこれも先生のおかげですよ…。」


「ところで。」


その瞬間、Syunさんがピクッとしたのを私は見逃さない。


「ちゃんと練習、してます?」


冷や汗がテーブルの上にポトリ。


「まさかね、してないなんて、そんな訳ありませんよね。

まさか、私が日本にいるときの演奏と今の演奏が変わってない訳、ありませんよね。」


「も、もちろんでs」


「今日スタ練入ってます?」


「…入ってます。」

正直に言ったのはえらい。


「せっかくだし拝見させていただいても?」


「か、かしこまりました!!!!」


「何時からですか?」


「えーと、2時間後です。場所は赤坂のオデンです。」


「わかりました。楽しみにしてますね!」


「はい!!!!!」


後でまた会うので、一旦その場は解散して、

私はランニングに戻ったが、Syunさんは慌ただしく何処かへ電話していた。






〜〜〜〜〜〜side Syun~~~~~~




急いでみんなに連絡しなきゃ!!!

まずはドラムのリョースケ。




『緊急!!!!』


『なんだよこんな朝早くに。』


電話越しにタバコをくわえてジッポライターの蓋を開けるカチャンという音がする。



『今日のレコーディング、先生が来る。』

電話越しに、かちゃかちゃと小刻みに金属音がする。


最初はなんの音かと思ったけどわかった。


ライターの火がつかないのだ。


おそらく持ち手が震えてるのだろう。



『そ、それは、おま、それはマジか。』


『大真面目だよ、さっき先生とばったり会った。

楽しみにしてますねって。』



『…っ!!!』



『みんなへの連絡は任せた。

俺はすぐに準備してスタジオに向かう。』



『…わかった、頼む!ありがとう!』



『こっちは任せとけ…!』






〜〜〜〜〜〜side リョースケ~~~~~~




「こいつぁ、大変なことになったぜ…!」


まずKENNに連絡しよう。


『もしもし、KENNか?』


『なになに?今日はまだ遅刻してないよ?』


眠そうな声だ。

遅刻の常習犯のKENNはきっとまだ寝てたのだろう。


『そんなことより今日のことで大事なお知らせがある。』


『え?中止?ラッキー。』


『先生が来る。』





『は?』


KENNの声が一気に目覚める。


焦燥を孕んだ声だ。


『もう一度言うぞ、先生が来る。』




『いやいや、先生今ニューヨークでしょ?』




『たまたま日本に一時帰国中で、ばったりSyunが会ったらしい。


そしたら来るって。


「まさか、最後に聴いた演奏から進化してない訳ないですよね?」


というメッセージ付きだ。』



『ぜ、全然ヘーキだし(震え声)』



『俺はYUIに連絡するから。』




『わかった。じゃあ一応オデンに2時間後な。

俺もすぐ準備して、もういくから。

教えてくれてありがと。』



『了解。』



次はYUIだな。



『もしもし?』


『もしもし、リョースケ?どうしたの?今日中止?』

なんでどいつもこいつも中止しようとしたがるんだよ。



『違う、大事なお知らせだ。』



『大事なお知らせ?』


『今日先生が来る。

日本に一時帰国してて、Syunがばったり会った結果来ることになった。』




電話越しに息を飲む音が聞こえた。




『わかった、すぐ行く。

一応セッティングとかもしてるはずだからスタジオ自体はもう使えるんでしょ?』



『もちろん。俺らの集合時間がいまから2時間弱後ってだけ。』



『わかった、もう準備できてるからすぐ行く。』



『了解。』






今日は荒れるぜ…!!






〜〜〜〜〜〜side 藤原吉弘~~~~~~


家に帰りプロテインとフルーツスムージーを飲み。汗を流して身支度を整える。




さて、行きますか。


車がないのでタクシー移動だ。

車が無いのは不便だねぇ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る