第80話 ロシアへ。1


いよいよ今日はロシアに向かう日。

早朝だが、今車でひなちゃんちに向かっている。




教えてもらった一人暮らしの住所はこの辺だけど…。




お、いたいた。

家のマンションの前でスーツケース持って待ってる。






「おはよー、荷物積むね!」




「おはよっていうか車でか!」




「まぁ、いいからいいから。」




そんなやりとりをして一路、羽田空港へ。


 


羽田空港でチェックインをする時、席をプレエコにしたのがバレたが、すでにお金はもらっているのでもう受け取らない。


コレが孔明の罠よ。




「もう!なんでこんなことするの!」




「いや、無理やり付き合わせちゃったし、少しでも快適な方がいいかなって。」




「もう、ばか…。」


うーわ、かわいい。


女の子に拗ねた感じで「ばか…」って言われるの超たまんなくね?

私は大好きです。




モスクワまでは結構遠いけど、ひなちゃんとだったら頑張れるかも。

元気湧いてきたァ!




チェックインで荷物をカウンターに預けて保安検査場を抜けて出発ロビーに入る。

すると、そこはもう異国なので、たくさんの国の人がいる。


ただゲートを潜っただけなのに、もう外国の匂いがする。



「お、ストピだ。」


海外の空港にはよく置いてあるけど、日本の空港にもストリートピアノが置いてあるんだな。

説明書きを見てみると、期間限定とのこと。




「弾いてみる?」


ひなちゃんが目をキラキラさせながら弾いて欲しそうにこっちを見てる。



「じ、じゃあちょっとだけね?」

期待のこもったまなざしに負けた。

たまたま待ち時間ゼロですぐ弾けたので、適当に弾く。


あんまり練習らしく弾くのもよくないでしょ。


YouTubeに上げようと思ってカメラマンはひなちゃんに依頼した。




「こんなのとかどうだろ?」




曲目はA列車で行こう。

ジャズのスタンダードナンバーだ。


お、人がだんだんと寄ってきた。

ならこちらもちょっと歌うか。



歌うと言っても私が歌うわけではない。

ピアノに歌わせるのだ。


いろんなアレンジやネットで聞いたことがあるようなフレーズもちりばめながらどんどんジャズアレンジを加えていく。


コードとかはよくわからないけど、最終的に気持ちいいところにはめていけばいいっていうことくらいはわかる。




やっぱ海外の人はノリがいいね。

弾いてて楽しい。

もちろん日本の人もノってくれるが、さすがに踊ったり歌ったりはしない。






そうやって気持ちよく弾いていると、人混みから一際体格の良い黒人のお姉さんがヌッと出てきて歌い出した。






あれ、なんかすごい人が歌い始めた。


このままだと負けそうだぞ?


声量もアレンジもすご!!食われる食われる!




なんとかして盛り返したが五分五分の勝負とは言い難かった。

6:4で負けたな…。




弾き終わった後、そのすごい人からのリクエストでもう一曲弾くこととなった。

曲目はアメイジンググレイス。



チョイスがいいなぁ…。




アメグレは終始伴奏に徹した。

一応自分の色は出してみたが、私がその人の歌を聴きたかったから。




歌い終わると、出発ロビーには黒山の人だかりと大喝采。




「ありがと、楽しかったわ。」

歌っていたお姉さん?から握手を求められる。




「私も楽しかったです。お姉さん歌うまいですね!」

そういうと、お姉さんは大爆笑をした。


「また今度、あなたが音楽を続けていれば、

きっと一緒にやれると思うから覚えておいてね。

これ私の名刺。」


黒人のお姉さん?は名刺を渡すとさらーっといつの間にかいなくなった。




弾いてる時はよくわからなかったが、終わってみると、周りがえらく沸いていた。


このままだと面倒なことになりそうなのでそそくさと退散。


ひなちゃんを連れて飛行機の方へ。






「吉弘くんすごかった!!!!

歌のひともすごかった!!!」




「私はそんなでもないけど、歌の人凄かったね!

周り沸いてたけどすごい人なのかな?」




「えぇ!?知らないの!?」




「うん。有名なの?」




「世界的に有名なゴスペル歌手さんだよ!

来日してるのニュースでやってたじゃん!」




「うちテレビないからわかんねーや。」




「あらまぁ〜。」


まぁでも、音楽に国境はないんだね。






搭乗口の前の待ちスペースで、さっきの話をしながらくっちゃべってると、搭乗時間になったので飛行機に乗る。






座席はプレエコなのでわりと前の方だった。


「私プレエコって初めて!エコノミーより全然座席広いんだね!」



「そうだね、やっぱエコノミーより快適だよなぁ〜。」




暇な機中では、ひなちゃんから簡単なロシア語講座を受けた。

まずキリル文字が読めないのだからそこからやる必要があるね。




しばらく講座を受けたところで軽食の時間。

ひなちゃんは、ゆっくりと少しずつおやつを食べる。


それがまた小動物みたいでかわいい。

あとそのせいか、上品に、育ちが良い人に見える。


そういう風に大事にご飯を食べる人を見ると、

自分がすごく野蛮な人のように思えて反省すら覚える。





ご飯を食べると2人とも眠くなったので、お昼寝?タイム。


途中、ひなちゃんがもたれかかってきて、

ムフムフしてたら、腕を絡めとられて、

痛くはないが、キッチリ関節を極められてしまった。



ひなちゃんの頭は私の肩のところにあるので、めちゃめちゃ良い香りするし、関節きめられるし、でも手をぎゅっとされてるので、プラスマイナス大幅プラスだ。


生きててよかった。




途中ひなちゃんがトイレに起きたとき、

ひなちゃんの腕と私の腕がそうなっていることに気付いたのだが、

一瞬固まったあと、

えへへと言って照れてたのが最高にキュンキュンしてたまんなかった。






お父さんお母さん、この世に産んでくれてありがとう。


ひなちゃんの親御様も、ひなちゃんをこの世に産み落としてくれてありがとうございます。


私は幸せです。






私は片腕を取られていたので、映画を見ながら暇を潰したり、楽譜を見て音源を聞いたりしてたら今度はしっかりめのご飯の時間だ。


このあと消灯らしい。




「ひなちゃん、おきて、ご飯よ。」




「んぁぇ?あぁ、ごはんか…」


もうわざとかと思うほどかわいい。

実際わざとでもなんでもいい。可愛けりゃ正義。


男もイケメンがやりゃなんでも許されるんだろ、どうせ。




もう、関節をキメられるのも慣れた。


そんなわけないはずなのにひなちゃんに関節きめられると、

肩まわりとか腕が楽になるんだよなぁ。


なんでかわかんないけど。


もしかして揉んでくれてるの?




ご飯を食べると、ひなちゃんは寝る準備ということで歯磨きとか化粧落としとかそういうやつに行った。


私もひなちゃん帰ってきたら行こう。




準備から帰ってきたひなちゃんはかなり楽そうな格好に着替えていた。

ふわふわでかわいい。




「すっぴんなんだから見ないで!」




「すっぴんなのにそんな綺麗だったら見ちゃうよ。」




「もう!そんなのいいから!ほらいっといで!」




「はーい。」




すっぴんなのに肌超綺麗で可愛かった。

たまらん!






そういう幸せな時間を過ごしているとあっという間に消灯時間。


もう、そうなることが決まっているかのように、流れるようなスムーズさで腕を取るひなちゃん。




ひなちゃん、気づかなかったけど結構あるのね…!


何がとは言わない。何がとは言わないけど、結構あった。


ゆる着になって薄着だから気付いちゃったけど、

これじゃ私眠れなくなっちゃうよ…。






そして朝、飛行機のゴーという音で目が覚める。


ひなちゃんと一晩過ごしちゃったよ。


飛行機の中でさ、ひなちゃん寝てる時に、

寝ぼけて私のことめっちゃギュってしてきた。

可愛くない?最高。いろんな意味で最高。


体感的に一晩明けて、モスクワ着。

ちなみにひなちゃんが可愛すぎてあんまり寝れてない。

今で、日本を出てだいたい11時間かそれくらい。




まだ頭が完全に目覚めてはないが、モスクワでのトランジットは1時間半。

まぁまぁ急いで、ロシア国内線に乗ってサンクトペテルブルクへ到着。




飛行機の中ってなんかやっぱりいいよね。

独特の異世界感ある。

私は飛行機移動結構好きなんだよ。






サンクトペテルブルクに着いてやっと目が覚めた感覚。

さすがに眠すぎてこの飛行機の機内では結句しっかり寝られた。

ちなみに、まだまだサンクトペテルブルクは昼過ぎである。


今からホテルに向かうこととする。




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