第30話 学祭1日めの夜。
望月さんとの学祭はとても楽しめた。
手を繋いじゃったりなんかして (ここ重要)
いろんなお店を回った。
タピオカとか、モッフルとか。
クレープなんかもあった。
なんか原色の目がチカチカするようなサイダーとか。
望月さんはそのすべてに目を輝かせていて、普段の清楚でおとなしい感じからは想像もつかないくらい楽しんでるように見えた。
あと手が柔らかかった。(ここも重要。)
俺なんかが望月さんの手を握っているからだろう、殺気を感じることが多々あった。
途中途中で殺気を感じたものの、大まかな学祭の出し物はほとんど回ることができ、非常に楽しかった。
ここ最近は、かなり根を詰めてピアノを弾いていたため、いい気分転換になった。
なんなら朝もピアノ弾いてたし。
「今日はありがとね!望月さん!」
「ううん、私もすっごい楽しかった。」
「いや、よかったよほんとに…。
望月さんが楽しそうにしてくれてたから私も楽しめました。」
「…ねぇ、望月さんじゃなくて、下の名前で読んでよ。せっかく手まで繋いだのに。」
「えっ、いいの!?」
「うん!」
「じゃあひなちゃんって呼んでもいい?」
「ひなちゃんて…。」
望月さん改め、ひなちゃんは眉をハの字にして笑っていた。
「ひなちゃんでいいよ。
じゃ私もヒロくんって呼んでもいい?」
「もちろん!」
「やった!
じゃあまたね!ヒロくん!」
「うん!今日はありがとう、ひなちゃん!
またね!」
そう言葉を交わし、ひなちゃんと別れた。
「これが青春か…!」
ひなちゃんはそのまま家に帰るとのことだったので、駐輪場に寄ってから駅まで送っていった。
ひなちゃんを見送ると、朝使っていた練習室に戻る。
練習室に戻ってまた指の体操をしていると来客が。
コンコン。
ドアをノックする音。
「どうぞ〜」
「…。よぉ。」
「なんだ幸祐里か。」
「なんだとはなんだ、ご挨拶だな。」
「おう、えらい機嫌が悪いじゃないか。」
「そりゃそうだろ!
どっかの誰かさんが、女はべらして学祭回ってたらしいからな!!!!!」
「なんだそいつは。ふてぇやろうだ。」
「おうよ!」
「そいつの特徴を言ってみな?」
「なんでもヴァレンティノの白シャツに、黒のセットアップで、スモーキーグリーンのおしゃれなコートを着てるやつらしい。」
「ほう。」
聞き覚えのあるワードがいくつか聞こえてきた。
練習室の壁に据え付けられたコートラックを見ると、ダークトーンのスモーキーグリーンのチェスターコートがある。
ふと手元に目を落とすと黒のセットアップのジャケットの袖が目に入る。
そういえば今日はヴァレンティノの白シャツを着ていたなぁと思い出す。
「私のことか。」
「そうだよ!バカ!」
「なんだよそんなにカリカリすんなよ。」
「別にカリカリしちゃないけどさぁ〜
ちょっと心配というか…。
彼女できたのかなとか…。」
「なんだよ、最後の方は聞こえねぇよ。
別に望月さんとはそんな男女の仲とかじゃねぇよ。」
「なんだよ、心配させやがって!
もう!心配して損した!
もう付き合ってないような女の子と手を繋いじゃダメだからな!!!!」
「はいはい、わかったわかった。」
「約束だからな!」
「わったわかった!」
「よぉし。」
幸祐里は満足そうに鼻息をふんと吹き、練習室を後にした。
「なんなんだあいつは…。」
練習を再開して、早数時間。
そろそろ時刻は夜の12時を迎える。
そろそろ帰るか、広げた店をたたみ始めると、またドアをノックする音が。
「どうぞー」
「お疲れ様〜」
「あら、実季先輩。」
誰かと思えば私のライバルでもある実季先輩だった。
ライバルとはまだ胸張って言えないけど。
「聞いたわよ〜、今日えらい美人さんと学祭手を繋いで回ってたらしいじゃない。」
「実季先輩が言うと嫌味っすよ。」
「そんなことないでしょ、私ってチンチクリンだし、そんなに綺麗って顔でもないし…。」
それを聞いた私は頭が混乱した。
チンチクリン!?
綺麗じゃない!?
「いやいやいや、先輩。
先輩はチンチクリンでもないし、綺麗系ではないかもしれないですけど、めちゃくちゃ可愛いですし、顔めっちゃ整ってるじゃないですか。
背が低いのも、すごく可愛いと思います。」
「いや、そんな真顔で言われても照れると言うか…。」
「とにかく先輩はめちゃくちゃ可愛いです。」
これは間違いなく言える。
「あ、ありがとう…。」
光の関係でよくわかんなかったけど、多分先輩は耳まで赤くなってた。
よくわかんなかったけど。
「今から暇っすか?」
「ん?うん。暇。」
「飯行きます?」
「いく。」
そのあと前行ったイタ飯屋さんでしこたまご飯食べた。美味しかった。
実季先輩「吉弘くん、めっちゃご飯食べるね」といわれた。
私から言わせると先輩の食が細すぎるだけなのだけども。
いよいよ明日本番か…
身が引き締まるな…。
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