第29話 望月緋奈子という女。



私は望月緋奈子。


自他共に認める清楚系美人女子大生である。






そう、私は美人なのだ。

ちなみに家もそれなりに裕福ではある。






私にとっては、生まれてから約20年、毎日毎日鏡で見ている顔であるため、愛着のある顔で、母にも父にも要所要所で似ている、ぱっちり二重の極めて美しい顔だ。

両親には感謝しかない。






そんな私にも問題があった。

他人に興味がないのだ。

訂正しよう。異性に興味が湧かないのだ。




告白なんてされた回数は軽く三桁を超える。


サッカー部のキャプテンや野球部のエースピッチャー、学校のいわゆる上流階級の方々から告白されたことなんて掃いて捨てるほどある。




しかし興味が湧かない。

ついたあだ名がunknown。

ミュータントか、と。

私はミュータントなのか?




そんなこんなで激動の中高時代を持ち前のコミュニケーション力で乗り切り、女性の力が強い大学へと進学できたのは僥倖であった。






しかしそこで私は運命の出会いを果たす。




藤原吉弘くんとの出会いだ。

彼の顔は控えめに言って世界で1番整っている。


私がいうのだから間違いはない。

むしろほとんど男性経験のない私がいうから間違いしかないのか?




異性に興味を持ったことのない私の興味を根こそぎかっさらっていった彼。

初めて見たその日から私の、彼に対する興味は尽きない。




前期はなんだかんだ言って仲良くできた。

周りからは散々羨ましがられたが、コミュニケーション能力と我慢の力でなんとか仲の良い友達ポジションをゲットできた。




グッジョブ自分。

神の施しをあなたに。




順風満帆の学生生活を送るかに思えた私と彼だが、しかし彼に問題発生。

テストの過去問を持ってないという。

さてさて一大事。

ここで私は一肌脱いだ。

男気ならぬ、女気の見せ所だ。




私の人脈を最大限駆使して彼の受ける授業の過去問を全て入手したのだ。

まぁ感謝してくれましたとも。

とっても感謝してくれた。


感謝してくれまくって、

プラチケである学祭のコンサートのチケットをくれた。

目が飛び出るほど驚いたが、なんでも関係者らしい。

すごいなぁ。






藤原くんはなんとかテストを乗り切ったらしく、無事単位を取り切ったとのこと。

私も胸を撫で下ろした。


 


無事、彼も進級できそうなので、あの手この手で関係をきらないように

今日のこの日までちゃんと関係性を保ってきた。

あの手この手で、と言っても

昨日一緒にまわろ?とお願いしただけなのだが。




え?私?


今待ち合わせ場所の北門だよ?


集合時間?


12時だけど?


今?10時だよ?


なんだよ。


そうだよ!興奮して眠れなかったんだよ!!!!






いろんな妄想を頭の中で膨らませていると、

はるか彼方に藤原くんの姿を見つけた。




え、ちょっとまって、

え、やば、えっ、可愛い。


いやかわいかっこいい。

これはみんなヒロ様ヒロ様いうのわかるわ。


やば、かっこよ。




藤原くんは優しく私に優しく言葉をかけてくれた。

藤原くんの声は優しくて、丸い。


少し低めで、少しハスキー。

どエロいよね、もう。

色々と捗る。






そんなかっこいい藤原くんをみているとどうしても手を繋ぎたくなってしまった。




すんごい恥ずかしかったけど、なんとか手を繋ぐことに成功した。

男性経験ないんだもの。

許してよ。

でも藤原君の、「女の子に恥をかかせない」っていうことに関して、

慣れてるなって思った。悔しいけど。




手を握ったことで気づいたのだけれど、

藤原くんの掌は肉厚で指が長い。

そしてゴツゴツしてる。




話に聞く、ピアニストの手みたいだなって。


でも掌の一部が硬いところとかあって、なんかゴルフする人の手みたい。

お父さんの掌に似てる?かも。

でも思う感じ、お父さんの方が豆とかタコだらけかも?




どことなく中性的な顔立ちなのに手は男っぽい。

このギャップたまんないな。




ずっと一緒にいたいと思っちゃうなー、これは。


他の女の子に譲りたくないよ。


他の女の子といるところ想像するだけで胸がキュッてなる。






これは本気出すしかないかな…!


本気出したことないけど!!!

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