第4話

「やれやれ…こうも貴族たちの不満が募っているようでは、そろそろレイナの代わりを探さないといけませんな」


「全くです。もう少し長く持つかと思っていたのに、こうも早くこの時がくるとは…」


 貴族家幹部である二人の人間が話をするのは、大地を統べる聖女として君臨しているレイナに関してだ。もともと聖女の立場と言うのは皆に非難されやすい位置にあり、今までも短い期間で様々な人物がかわるがわる聖女の立場に推されていた。しかし今回はその期間が非常に短いという事を、聖女の立場を担当するこの二人は嘆いているのだった。


「これからどうしましょう?とりあえず私は臣民たちからよさそうな者を探してきますから、あなたはこの状況をうまくまとめておいていただきましょうか」


「仕方がない。…いっそのこと、勝手にいなくなってくれれば助かるのだがなぁ…」


 自分たちがレイナを推しておいて、都合が悪くなると彼女をかばいもしない。そんな彼らにレイナが恩義を感じるはずもなく、時間を経ずしてある事件が起きるのだった。


――――


「ふ、封印だって!?レイナが自分自身を!?」


 最初こそその聞きなれない状況に動揺したものの、すぐにそれは喜びへと変わった。


「…いやむしろ好都合だ。願いが届いたのではないか?最後の最後に願いを聞き届けてくれるとは、やはり聖女だったんだな彼女は」


 しかしこの時に気づくべきだった。彼女が自ら封印したからこそ発生してしまう、これからの悲劇について…


――――


『貴族家は全員解散しろ!!!』


『そうだそうだ!!聞いたぞ、聖女様が自らを封印してしまったと!お前たちどういう扱いをしていたんだ!』


『お前たちのせいだぞ!これで我々になにか起きた時はどう責任を取る!!』


 市民の声は大きくなる一方で、もはや弾圧してもしきれない。もしも彼女が失踪していたなら、いくらでも言い訳はできたかもしれない。しかし自らを封印されたとなると、それは貴族家への明らかな不満や反逆の意思があるととられてしまい、それは市民世論に大きく影響することとなってしまった。


「ま、まずい…まさかこんな事になってしまうとは…」


「逃げるぞ!!俺たちは全く関係がなかった!そうだな!」


――――


 いくばくかの時を経て、封印から解かれたレイナ。彼女の目に入った貴族家の人物たちは、自分が知る人たちではなかった。彼女の封印をきっかけに、貴族家も国も生まれ変わることができた証拠であった。


「聖女様、私たちが今後、あなたの手となり足となることをお約束いたします!」


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