第3話
「レルク様、リーリエ様から社交界の日程についての調整を承っているのですが…」
レルクとリーリエは確かに婚約関係にあった。けれどレルクは彼女の事を婚約者とは思えないほどほったらかしにし、ある別の人物の元へばかり足を運んでいた。
「社交界?…そんなものあいつ一人で行かせればいいだろう。僕はこれからしばらくセレナとともに出てくる。帰りはかなり後になるだろうが、まぁこっちでのことはよろしく頼む」
「そ、そんなことを言われましても…だ、旦那さま!」
主君思いの部下であるソルドの言葉にも全く耳を貸さず、愛する妹であるセレナの元へと足早に向かっていくレルク。
「…このままではいったいどうなってしまうのか…リーリエ様からのお申し出で、その詳しい生まれについてはお知らせしていないからと言っても、この行いはあまりにも…ましてやリーリエ様の詳細な出生を知ってしまった時には…な、なんとしてもこの場を取り持たなければ…」
そう、彼はすべての真実を知っている人物だった。リーリエがレルクには秘密にしてほしいと言った自分の生まれや背景についても、彼はすべて知っている。だからこそ真面目な彼の辞書には、逃げ出すという選択肢はない。婚約の破棄が濃厚ともいえるこの状況においても、主君のためになんとかしようと考えている。
しかしそんなソルドの思いは届くことはないのであった。ほかでもないレルクの行いによって…
――――
リーリエの出生は有名な大貴族なのだが、リーリエ本人の意向からそのことは伏せられていた。しかし婚約破棄に当たり答え合わせのように彼女の詳細が明かされるに行き、レルクの表情はみるみる青ざめて行った。…そしてそれは彼と共にリーリエを虐げていた人々も同じであり、もはや彼らの未来が暗いものとなっていることは明白であった。
その一方でソルドの純粋な思いはリーリエの元へと届き、二人は今後親密な関係を築いてゆくことになる。
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