エメリアの場合

 雪の降るこの時期になると、いつも思い出す。私が大好きで仕方がなかった妹、エリスの事を。




 妹はとにかく私の事を嫌っている様子だった。いろいろと周りの人から聞いた話では、どうやら頭の回転が鈍くてぶりっ子なところがとにかく気に入らないのだという。…私にそんなつもりは全くないのに…



 私の事が大嫌いな妹は、私が嫌がる事ばかり行ってきた。それこそ、時には王国憲法に接触するんじゃないかと心配になってしまうことすら、中にはあった。しかし私は妹の事が大好きなので、ずっとずっと我慢をしていた。


 ある年、妹はついに一線を越えた嫌がらせを行ってきた。私がかねてから懇意にしていた婚約者を、無理やりに犯したのちに奪って行ったのだ。優しかった彼は私が傷つくことを恐れ、自身が悪役になる事で私との婚約を破棄し、事態の収集を図ったのだった。


 その時の妹の表情と言うのが、今になっても鮮明に思い出させる。心の底から憎む人物の死を知らされた時のような、快楽におぼれた時のような、あの表情。


 しかし私は妹の事が大好きなので、そのまま二人を祝ってあげることにした。特に悔しい様な表情も浮かべずに、二人の婚約を心の底から盛大にお祝いした。何も不思議な事ではない。だって私は妹の事が大好きなんだから。


 しかし妹にとって、私の行動は不気味で仕方なかったようだった。日に日にその不信感は募っていったようで、ある日ついに彼女は精神錯乱状態になってしまった。


 それからは精神的に不安定な毎日を送っていた。けれど私は妹の事が大好きなので、毎日のようにお見舞いに行った。なにもおかしなことじゃない。


 そんな毎日を送っていたある日、妹は飛び降りた。雪の降る日だった。





 私は今でも、妹を心の底から愛している♪

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