セレステラの場合
「あ、あの妹様とご婚約をされるのですか…?」
セレステラ…彼女の話は私も聞いたことがあった。同性からの評判と異性からの評判が正反対の人物であると…
「ああ。君も理解してくれているようで話が早い。実に見事な女性であろう?その美しい容姿もさることながら、あらゆる術式を網羅している文武両道と言った女性だ。君よりも、数段僕にふさわしい妃となろう」
美しい容姿と言うのは、高級品で着飾っているからそう見えるだけのような…
「それに…これはあまり言ってはいけないことかもしれないが、彼女には底なしの資金力があるのだ。貴族家として生き、戦っていく上では、その力はあまりにも大きすぎる。影響力が違うからね。お分かりかな?」
要は、お金目的に私からあの女への乗り換えを決めたのだと…
「はあ…そうですか」
いろいろと警告をしてあげようかとも思ったものの、この状態に陥ってしまった男につける薬などないことでしょう。そう思った私は、何も言わずに男の婚約破棄を受け入れたのだった。
しかしこの妹君、私がにらんだとおりの大訳アリの女だった。
「な、なんだよこの財政決算書は…」
はじめてその報告を財政部から受けた男は、一気に顔を青くした。そのまま担当者を問い詰めた後に、妹君を呼び出して話を始めた。
「どういうことだ!!いったいこれは!!」
しかし妹君は何ら悪びれる様子もなく、さも当然と言った表情を浮かべている。
「だって、貴族家妃となる女の身の回りの装飾品ですよ?それくらいは当然でしょう?…むしろ問題なのは、これすらもまともに資金調達できないあなたの貴族家としての力のなさなのでは?」
「な、なんだと!!??」
…二人の口論は終わることなく、結局法院調停場に至る最後の瞬間までそのやり取りは続けられたのだった。
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