美味しい。でも悲しい。
ふぅ。
仕事の手伝い終了だ。
疲れたな。帰るか。
帰宅準備を進める。と言っても何も持ってきていないので、片付けをするだけなのだが。
ゴシゴシ...
食器の洗う音が静かな店内に鳴り響く。
「あっ!シィーロ!何やってるんだ!」
外の掃除から帰ってきた
「私の仕事を取るんじゃない。休んでなさいっ!」
「
夕食を
「それでもシィーロにやらせるにはいかないよ。ほら、お皿」
へいぱすみー。へいぱすみー。と呟きながら、皿を取ろうとする。
僕はそれ避けつつ皿洗いを遂行する。
「ちょちょちょっと
「シィーロ...?私がやるって言ってるんだよ...?」
怒ってる。怒っているけど顔は笑顔。これが一番怖いやつだよね。
「でも、ほら。もう終わりかけてるよ?」
「まさか、私がお皿の取り合いに夢中になっている間に...?」
ふっ。
1人でよっしゃと心の中でガッツポーズをする。
「夕食、良かったら作りましょうか?」
「え?何でシィーロ知ってるの...?」
そりゃ忙しそうで、お腹減ってそうな顔してるからだよ、という言葉を飲み込んだ。
「まあまあ。
「ありがとうっ!シィーロ!」
———————
シィーロが料理を作ってくれている。それがとても嬉しかった。だが、今はとても暇だ。
スマホを使うのもなあ。
悩んでいると、ふと、ある事を思い出した。
「シィーロ?」
「何だい?」
料理を作りつつ、こちらを向いてくれる。
「あの白髪の女の子と仲良く話してたけど、知り合いなの?」
シィーロは返答に困っているようだった。難しい顔をする。
「あー...そうだな...友人、かな」
「あっ!友人だったんだ!良かったね、会えて」
「1つ訂正しておくと、
ん?
麻美さん?
下の名前呼び?
私まだ名前呼ばれてすら無いんですけど?
「ほい!完成!どうよ。即興品にしては完成度高いんじゃない?」
確かに凄い。とても美味しそうだ。だが、さっきの言葉にショックを受けて、素直に喜べない自分がいる。
「あっありがと!美味しそう!頂きます!」
バクバク。
美味しい。美味しい。でも、悲しい。
私の方がシィーロといる時間長いのに。
「そんなに早く食べると喉に詰まらせるよ
苦笑いしつつ、彼は水を用意してくれるのだった。
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