優しいあいつ
「冗談は置いといて、そのネタを教えてくれよ」
僕は本題に入ろうと声をかける。
「その前にコーヒー一杯だぁ」
そう言って僕の目の前のカウンター席に腰掛ける。
「はいよ」
自分もコーヒー好きなのだ。
そう自身を持ちつつコーヒーを作る。
作っている最中にあいつに声をかけられる。ついでに名前は知らない。聞いていないからだ。
「今日は白髪が働いているからなぁ。明日とかどうだ。空いているかぁ?」
一瞬考えるが、仕事はない。小説を書くだけだ。それなら、ネタを提供してくれる方がとても喜ばしい事だ。
「あぁ。空いているとも」
「うむ。それなら、ここの喫茶店で待ち合わせはどうだ。俺は暇だが何時頃が良い?」
見た目はちょっとあれだが、こういう所が優しくてこいつの良い所なのだ。
「僕も何時でも大丈夫だよ」
「なるほど。ネタが尽きたか」
コクコクと首を縦に振る。
僕の事情が全て分かるとは。交友関係が広いのも納得できる。
「では、コーヒーも飲んだことだし。また明日な」
そう言って席から立ち上がろうとしていた。
いつの間にかコーヒーは無くなっていた。
出入口の扉の前に会計をする場所がある。そこに
遠藤さんとは話し終わっていたらしい。もういなかった。
会計する時に何か話している。盗み聞きは良くないなと思い、その場を離れようとすると、一人のお客さんに話しかけられた。
ショートの白髪の女の子。染めたのだろうか。顔は、何というか、少し怖い。怒っているのだろうか。
「ねぇ。あなた、同じなのね」
白髪になって初めて、僕と同じ存在の人を見つけた。
―――――――――
私は、シィーロを白髪と呼んだ人の会計をしている。
仲が良いのか分からないが、シィーロとよく話しているのを見かけていたので顔は知っていた。
「店長さん、いや
話しかけているのか、独り言なのか分からないがそう呟いている。
「どうして?」
向こうが敬語を使ってこなかったので私も敬語は使わない事にした。
そう言うと男はにっと笑った。
「俺にはもう分かっている。だから協力してやったんだ」
顔が熱くなる。多分赤くなっているだろう。
あぁ、何で分かったのだろう。そう聞こうとした時。
「白髪が美少女と話しているぞ」
あと、160円でよろしく、と呟く。
本当だ。アイドルみたい。凄く可愛い。
「ほれ早く行け。釣りはいらんぞぉ」
カランカラン…
流れるように消えていった。
ひとまず、シィーロの所に行かねば。
顔を冷やして、早歩きでシィーロの所に向かった。
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