コーヒー豆を買いに喫茶店へ。
さて。昨日、
僕はコーヒーを注ごうとする。しかし。
「あれ?」
コーヒー豆がもうない。そう言えば、昨日は東条にコーヒーを出していたので昨日無くなったのだった。
だから、昨日の夜、コーヒー豆を買いに行くと電話したんだったっけ。
「うーむむ...」
今日も依頼はない。ミステリー小説も良い感じで、明日には公開できるだろう。
外出したくない...が。仕方ない。
「いつもの所に行くか。」
スーツのネクタイを緩めて、ロングコートを羽織る。
まだ冬の寒さは残っている。もう3月だ。春先だと言うのに、春の陽気は未だに来ない
エレベーターを降りて、アパートの出入り口から外に出る。
夕方だった。夕日が空に煌めいている。
ふぅ。息を吐けば白い水蒸気が出てくる。寒さが身に染みる。
しかし、僕は冬が好きだ。息を吐けば、露のように儚く、空に散る。コーヒーも美味しくなるし。他の理由ももちろんあるけども。
だから。僕は夏が嫌いだ。理由は色々あるけども。
人にはこれを、話したくはない。
良い思い出ではないからだ。いつか、説明しなければいけない日が来るのだろうか。
はぁと溜息を吐く。
機嫌が悪くなってしまった。ブラックコーヒーを飲みたい気分だ。早く着かないかな。
スクランブル交差点に行くと。仕事終わりのバックを持った沢山の社会人が僕とすれ違う。
これで厄介なのは、相手をよく見てしまうと相手の事が分かってしまう。
俯きながら僕は歩き続けた。
顔を上げると、信号機の赤色が点滅し、青色に変わろうとしていた。
しかし、そこで人を見たのがいけなかった。目が暗く、寝不足そうにみえる顔色の悪い男性は、ブラック企業に働く人のようだ。
危ない。これ以上顔を見てしまうと、感情移入が入ってしまう所だった。
だから外出は嫌なのだ。職場の3階の古びたアパートに家があるのはそう言う事である。
アパートの2階で執筆してたいなぁ...僕は悲しくなりながらもトボトボ歩いて行くのであった。
人通りの多いスクランブル交差点を抜け、裏路地を通ると人通りの少ない、道がある。あの人混みは何だったのだというぐらい人がいない。
そこのポツンと建っている建物は、僕が3年ぐらいたまに通っている、喫茶店である。
カランカラン
昔の喫茶店にあるドアを開けると音が鳴るベルのような物が僕を招き入れるような気がした。
客は誰もいない。すると。
「おっ!シィーロじゃん!いらっしゃい!」
緑色のエプロンをつけた、赤髪のポニーテールの女性が声をかけた。目が細くキリッとした目は男を連想させ、顔が細く、ザ・スポーツマンというスタイルの良さ。
美人だから色々大変なんだろうなぁ。
僕の感情移入が発動しながら、そう思ったのだ。
ついでにシィーロとは僕の白い髪から名付けられている。名前は言ってないからね。
「こんにちは
3年前までは
「そっそれがぁさぁ...き急用入ったらしくてさぁ今日い、いないんだよね!」
何で焦ってるんだろうか。ついでに僕は顔を伏せている。いつも来るとそうだ。
「そうなんだ...
「なっなに?!私とじゃだ、ダメなのか?!」
「
顔を伏せながら、ふっと笑ってしまった。
「焦ってない!後、笑うんじゃない!」
なんでだよ。僕が来るといつもこんな感じなんだよなぁ...
「それで?コーヒー1杯かい?」
「うーん。どうしようか。」
さっきまで機嫌は悪かったが、今は機嫌が良くなった。ここに来ると、機嫌が良くなる。
「いつもの1つお願い。」
「ほーい。砂糖とミルク入りね。」
——————————————————————
私、
おじいさんに喫茶店を継がないか?と聞かれ、大学を卒業したてで仕事先に困っていた私は、それにうん。と答えた。
それから2年。1年間修行し、その後は
おじいさんには
「あき、上達早すぎないか?」
と結構引かれていたが、私には頑張る理由があった。
シィーロというあだ名の青年が作家と探偵を営んでいる人がいるらしい。よく、愚痴を聞いていたとか、酷い過去を聞いたとか。私は知らない人に、興味を持っていたのだ。
そして。修行中のある日。
カランカラン
「
白い髪の青年に出会った。
思った事は、イケメン。かっこよすぎる。スーツがめっちゃ似合ってる。
語彙力が死んでいたが、青年があれ?違ったかな?という心配そうな顔でこちらを見ていたので、
「そ、そうです!
そう言うと青年はにこっと笑って言った。
「良かった。ありがとう。僕はこの喫茶店、無くなってほしくなかったからね。頑張って。」
「あ、ありがとうございます...」
その時はかっこいい人ぐらいにしか思っていなかったが、段々話していく内に、
あっ。好きだな。
そう、思ってしまった。それを自覚してから、焦ってる話し方になり、まともに話せない事が多かった。
はぁ。
直らないかな。シィーロは顔を見たら、感情移入で気持ちに気づいてしまう。それはそれでいいのだが、何か嫌である。
俯いてくれるのが本当に助かっている。
絶対、顔が赤くなってる。
私はコーヒーを注ぎ、砂糖とミルクを入れる。本当は本人にやって貰うが、今では私はシィーロのいつものを知っている。
おじいちゃん...何で来なかったの?と呟く。全ては昨日の事。
—————
「あき。シィーロから電話があってな。明日、コーヒー豆を買うそうだ。儂は今、用事が入ってしまってな、明日行けなさそうじゃ。すまんが、1人でやってくれんか?」
「え?今ってどうゆう事?」
「あきとシィーロの2人にする為に今、考えた事じゃ。多分、シィーロが来る時間帯にはお客さんもおらんよ。つまり、2人っきりという事だ。老いぼれの優しさに感謝せい。」
「え?おじいちゃん?え?知ってた感じ??」
「あんなに仲良く話しているしのぅ。シィーロは顔を見ないから分からんだけで、見たらすぐ分かるはずじゃ。儂にでさえ分かるレベルよ。」
「えっ...?そうなの...?」
「今度こそ、仲を深めて来い。」
————
無理だよ...おじいちゃん...
悲しくなりながら、コーヒー完成。
あっ。そうだそうだ。コーヒー豆だっけ。どこだっけなぁ...
棚を2、3回ほど開けて、探す。
「あったあった。」
「コーヒー豆あったかい?」
ドキィ
「う、うん!ごめんね待たせて。」
「大丈夫大丈夫。」
「それより、1人で大丈夫かい?僕も何か手伝おうか?これでも3年通ってる身だからね、迷惑にはならないはずだよ?」
「え?いいんですか?」
これも仲良くなる一環だよね?おじいちゃん?
「もちろん。暇だし、お世話になってるし。」
「あっ。でもお金は...?」
シィーロはふっと笑った。
「このコーヒー1杯。それでだけで充分さ。」
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