第一章 やり直しの時間③
客間で待っていた殿下は、私の姿を見ると
その笑顔を見て、ほっと
そもそも冷たくなったジェイド殿下だったら、私のお見舞いになんて来るはずがない。それが分かっているのに
「エリアナ、元気になったみたいで良かった。調子はもういいのかい?」
「はい殿下、わざわざありがとうございます」
殿下が困ったように笑う。
「殿下などと。いつものようにジェイドと呼んでくれ」
その言葉を聞いてぎゅっと胸が痛む。
巻き戻る前、殿下に言われたのだ。ある時
学園で
「……ジェイド様」
「入学式の後から体調を
「ええ、もうすっかり良くなりましたわ」
「それならよかった。無理をしてはいけないよ。学園で何かあったらいつでも私を
殿下に声をかけられた側近であるリューファス様が、他の護衛から何かを受け取って戻ってくる。
その手には小さな花束。色とりどりの花が美しい。
「王宮の庭園から選んできたんだ」
「まあ、殿下ご自身で?」
昔はいつだって殿下からいただく花束は一色で
私の手を
「……エリアナ?」
私に久しく向けられることのなかった優しい
ふいに
「ごめんなさい……」
今の殿下に、私の
それなのに殿下は何も聞かず、ずっと私の髪をなで抱きしめ続けてくれた。
そう、ジェイド殿下はそういう人だった。優しくて、私に安心を
殿下は私が泣き
確かにこの頃の殿下はいつだって私に優しかった。殿下にしてみればいつものように私を甘やかしてくれただけなのかもしれない。だけど、時を戻ったばかりの私の体感では
同時に、巻き戻る前のあの悪夢のような日々は、やはり文字通りただの悪夢だったのではないか。長い長い悪い夢を見ていただけではないかと、そんな気持ちも
「あの、エリアナお
やっと涙が止まった頃、目元を赤くした私にリッカが控えめに
私の返事を待たずに、リッカの向こうから姿を見せたのは……。
「え……?」
すらりとした長身に、
そこにいたのは、まさかのテオドール第一王子殿下だった。
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