(新)第6話 義母へ
「どういう……ことだ?」
「お前らが最初に放ってきた火球の速度…オレレベルの魔法使いでなければ躱せない。
それに、お前らの連携も完璧だった。」
「じゃあ……俺らに勝ち目は?」
「そうだな……お前らに勝ち目はなかった。
だが、お前達はオレに一矢報いるための格上対策(ジャイアントコントロール)の数々は見事なものだ。」
まぁ、最もそれは魔法使いってよりも賊みたいな戦い方だけどな。
「そのまま工夫を積み続ければ、俺がヘマ売って死ぬ頃にはお前らが最強の魔法使いと呼ばれる日が来るさ。」
オレはそう笑顔で彼らに告げた。
「ケッ…慰めなんてイラねぇよ。」
「フン」
二人はオレたちに背を向けて、のそのそと歩き出した。
だがオレはすっかり頭に入っていなかった。
民衆が俺達の戦いを食い入るように、観戦していたことに。
「あっ…あの…そのコレはですね…」
オレはすっかりいましたやり取りが恥ずかしくやって少し、冷静さを失ってしまっていた。
「うおおおすげぇ!! とんでもねぇ」
「素晴らしいです!!」
「かっこよかったぞー!若賢者様!」
「おいお前、サインくれ!!」
私も……ファンになっちゃった!!若賢者様!握手してください。」
「賢者様万歳!!」
「俺らも若賢者様みたいになりたいぞー!」
オレがたじろいでいると、民衆の皆んなは歓声を上げながらオレ達の周りに集まり、オレをもみくちゃにし始めた。
「アハハ……どうもどうも……」
オレは思わず愛想笑いを振りまいてしまった。
「若賢者様!!握手してください。」
「賢者様、握手してください!」
「チョッ…ちょっと待って…引っ張らないで押さないで…やめ…やめて…やめて…ロクシス助けてぇ」
オレがロクシスに助けを求めると、ロクシスは口元に手を当てて腹を抱えていた。
「アハハ……ハハハハ!! 」
ロクシスは笑いをこらえながら民衆の波を割って、オレの方に近づいてきた。
「いや……助けてよ」
オレはロクシスに、抗議の声を上げた。
するとロクシスは手を差し伸べて、オレの手を握り、民衆の波からオレを連れ出した。
「もう…だから外普通に歩くのは嫌なんだ!!」
オレがロクシスにそう言うと、彼女は笑顔で返答した。
「ハハ……ゴメンゴメン。
いや……やっぱり若賢者は、流石だなって思ってさ。」
「……。」
ロクシスのその言葉に、オレは言葉を失った。
ロクシスは続けて言った。
「このままついてきてくれる? 大丈夫今度は人気がないような場所だから。」
ロクシスのその言葉にオレは頷き、彼女の後をついていくことにした。
「さ……着いたよ。」
「ここは?」
ロクシスに連れられたところは、町外れの、展望台だった。
「見てごらん、上」
ロクシスはオレにそう言いながら、遠くを見るように促した。
俺はロクシスの言われるままに、上を覗き見た。
「「空中機動都市船アルフューノ三型、か…もう試運転をしてるみたいだな…お前はこれを見せるためにオレを連れ出したのか?ロクシス。」
「違うよ」
ロクシスは、ニヤリと笑いながらオレに言った。
「違うって?」
「ねぇ…ゴルジ…。 ボクががあなたをクビにするって、言ったこと覚えてる?」
「ああ、覚えてるよ。」
「…当然冗談のつもりで言ったけど、あなたは本気で焦っていたよね……」
「…。そうだな。」
「ボク……本当に冗談のつもりで言ったんだよ。」
「……。で?何が言いたい。」
「君は自分がどれだけ必要とされているのか…わかってない。」「そんなことは……」
「そんなことあるんだよ!ゴルジ!!」
ロクシスは、オレの言葉に被せながら、強く言った。
「君は……ボクが…君をどれだけ必要としているのか……わかってない。」
ロクシスは、真剣な眼差しでオレを見つめながら言った。
「いや……でもオレは……お前に……」
「【ナイン】が攫われたのは…君のせいじゃない。」
「!!!? 違っ…オレはそんなこと!!」
「君が……自分を責めていることは知ってるよ。」
「いや……オレは……」
ロクシスは、オレの否定の言葉を無視して話を続けた。
アンダークロス 世界を渡る呪い 倉村 観 @doragonnn
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