(新)第5話 見どころある決闘

「おい…なんだ? 決闘か?」

「警衛騎士団呼んだほうがいいんじゃねえか?」

「馬鹿野郎! 若賢者ゴルジが、生で戦うところみれんだぞ?!」


 不味いな、非常に。 周りにはもうあっという間に野次馬が集まっている。 今ここで俺が逃げてもいいが、そうすればキレてるコイツラが、ここにいる人達になにをしでかすか…。


「仕方ねぇな…。 ロクシス! 皆を遠ざけて。」


「りょうかーい♡ まかせて!」


 、野次馬の方へロクシスは歩いていき、腰に収めてあった。黄金に輝く勇者の剣を抜いてソレを天に掲げて叫んだ。


「はーいみなさーん!! 危険ですよ! この光る、勇者の剣より離れてくださーぃ! もっともっと離れてくださーい!!」


 ロクシスの声掛けのお陰で、随分と人払いができた。 すべての人は最早、彼女の指示通りずいぶん遠くからこちらの小競り合いをみていた。



「おい…もう十分周りには、人がいないぜ! 早く杖を出せよ。 そのショーケースの中だろ? わかってんだよ歪な魔力がそこから漏れてるからな!!」



「なるほど…。少しはできるようだな。 だが、オレは力を出す相手を選ぶ主義でね…。 加えてハンデを作るのにも自身がある。」 


「あん? なにがいいてんだよ」



「君ごときに杖は要らないって言ってんだよ。 コレはハンデだ、 いつでもいいぜかかってきな。」


オレは、両手を広げて二人を挑発して見せた。


早く済ませたい反面、喧嘩を売られるのは、久しぶりだ。 しかもふたりともオレと同じ魔術を扱う存在。 でも、オレが卒業した魔法学校の生徒の記録では、コイツラの、在籍情報はなかった。 つまり、俺とは違う魔術を学んできている可能性が高い。 


 なにをしてくるのかすごく楽しみだ。


「舐めやがって!!おいやるぞ」

「了解。」


 二人は、お互いに合図を送り合うと、一人は魔導書を開き、一人は杖を前に突き出して来た。


速!!


次の瞬間だった

杖を持った方の輩の方から火の玉が飛んできて、それは既にオレの眼前にまで迫ってきていた。


亜音速を突破しているほどの速度の火球を飛ばしてきたのだ。


「ひらり」

オレは、その火球をギリギリのところで躱す。

「ちっ!避けたか」


「おっおい今アイツなにかしたのか?」

「賢者様のところですごい爆発が…」

「なにか赤いものが飛んだ気がするけど…。」


超スピードで起こった事柄を理解できてない民衆が騒ぎ出した。



そして、今度は分厚い本を持った方の輩が魔法を唱えた。

すると突然、オレの足元に土が集まりだした。


その土は徐々に形を成していき、あっという間にオレの足は動かせなくなっていた。

クソッ!ヒデェことしやがる。


オレが状況を飲み込めずにいると、杖を持った方の輩が魔導書を取り出して、またこちらに火球を撃ち放った。

しかし、その火球がオレに届くことはなかった。


オレが腕を突き出すと、六角形の紫色の障壁が突如として出現し、火球を防いだ。

「チッ……完全防護魔法をノータイムで!!」

杖を持った方の輩は、オレの魔法に驚いている。

「オイオイ、 当たり前だろ?この魔法を開発したのは俺だぞ? ならばノータイムでこの程度使えて当然なんだよ」

「クソッ!だったら!!」

そう言って杖を持った方の輩は、杖をオレに向ける。

すると杖の先から赤い光が輝きだし、粉塵が巻き上がり始め、それは急に発火し、炎柱となった。

「おらぁ!!」

燃え盛る炎の槍がオレに向かってくる。


「その杖(トリガー)赤リンを形成できる魔光が施されているのか。 18属性元素の中であくまでも自分魔力と愛称の良い火炎魔法で戦う!! そのこだわりは嫌いじゃないぜ!」


 オレはそう叫びながら、足を拘束している土を魔力で吹き飛ばし、炎柱を横回転で躱す。

しかしそこで、分厚い魔導書を持った方の輩が魔法を発動させていた。

分厚い魔方陣がヤツの頭上に展開され、そこから巨大な岩の塊が出現していた。

「おいおい、こちらさんは、【大土】属性であくまで攻めてくるのね。」


「さっさと潰れろ!」


オレは迫り来る岩に向かって、魔方陣を展開し、中から炎柱を放った。

ドゴォォォォォォン 岩と炎がぶつかり合い、轟音と爆風が起こる。

「はぁはぁはぁ……」

煙が立ち込め、互いの視界が完全に塞がる。

「クソッ!どこに行きやがった。」


「クソッ! どこだゴルジ!」

オレは、その隙に二人の背後を気配を消して、取っていた。

二人の背中はがら空きだ。


 オレは二人が反応できないほどの速度で土手っ腹と背中に拳を叩きつけた。


「ぐへぇ!」

「うげぇ!」

二人は吹き飛ばされて、地面に叩きつけられた。


「ぐぁあ…身体強化系の青型魔法か……」


「クソッ!こんな青型魔法なんかを無詠唱で使いやがって…バケモンが」二人は完全に戦意喪失して、地面に突っ伏している。

「いや…魔法なんか使ってない。『素』だけど。」

「す?」

「え?」

オレがそう言うと二人は意味がわからないとばかりの顔をこちへ向けた。


 まぁそういう反応になるよね。


「オレ…元々運動には自信あってさ。物心付いたときから喧嘩とかでも負けたことなかったんだよね。」

「お前……魔法使いだろ?」

「いや……まぁそうだけど。」

「しかも……お前賢者だろ? 若賢者ゴルジ様だろ? アレだろ?その賢さを生かして、魔法を極めた大賢者だろ?」

「そうだけど。」

「そんなお前が……素の身体能力で……俺らを?」

「そうだけど? 悪いか?」

「ウソだ噓だ噓だ噓だ」

杖を持ったていた輩が顔をブンブンと横に振る。


「もういい…リグン。完敗だ…。負けたんだ俺達は……。」


魔導書をしまった方の輩がそう言って、戦意を完全に喪失した。

「ザイレン!!オイ! 嘘だろ? なぁ!俺たちの夢は? 諦めるのか?」


「冷静に考えろ…杖も使わない、魔導書も使わない、それどころか魔力の総量すらわからない。 挙句の果てには防護魔法以外魔法すら使っていない。

 …ふん、賢者様は最初っから俺達の魔力、そしてその適性性質、そして魔法の種類も手に取るように解っていたわけだ。

俺達のやったことといえば、魔力が切れるまで魔法を撃ちまくって、無様に敗北した。最初っから叶うわけなかったんだ。 なぁ…そうなんだろ賢者様よ。」

「……。」

ザイレンと呼ばれたヤツは、少し悲しそうな顔で、そうオレに問いかけてきた。


「いや…あながち悲観することもないさ

。」

オレは、ザイレンの肩に手を乗せた。



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