第一章 最悪の出逢い④
居間には如月屋の面々──計五名が長方形型のテーブルに並んで座していた。
上座に座るのは、
雨音は最後に居間へと入ってきた桃が座したのを見届けると、如月屋の面々それぞれに視線を投げかけながら、静かに
「皆、今回の仕事もご苦労だった。
雨音の報告に、
「そして、紹介が
あの〝
「逢魔、これからはよろしく
「……」
逢魔は雨音の呼び
(如月屋の方針を
逢魔を再び前にして、微かに
「そこの異形殺しについては、聞きたいことが山ほどある。まず、ウチの方針に沿えるのかって話だ。如月屋は、〝異形との共存〟を目指す
「……それは本当か? 逢魔」
朝緒の言葉を
「ぼくは異形殺しだ。今は人間に危害を加えようとする害悪異形しか殺せないが──いつか必ず、全ての異形を殺し
逢魔はやはり無機質な声で、
「なんだとてめぇ……!? 全ての異形を殺し尽くすだの、ふざけたことを!」
雨音は
「逢魔。お前の異形殺しとしての思想は否定せん。だが、お前もこれから祓い屋としてウチで働くというのなら、異形に手を出すのはご
「そんなもの知らない。ぼくは何よりも、害悪異形を殺すことを優先する」
「そうか……まったく。いつか俺が、お前を
雨音が軽く頭を
きっと逢魔のことは一生かかっても、一
「あ、あの……」
不意に、
「ご、ごめん。出てきちゃって……でも、ア、アオの大きな声が聞こえたから、気になって……だいじょうぶか……?」
朝緒が
「人間の気と、
「あ……お、おれたちを殺そうとした……! お、おれに近寄るな! ニンゲン!」
異形市で、逢魔が自分たちに向かって
「少しでも異形の血が流れているのなら──殺す」
ドン、と。重い銃声が落ちる。
しかし、子どもに逢魔の
「何しやがるてめぇ!」
逢魔は無表情のまま小さく首を
「その子はぼくに敵意を向け、
「ふざけんじゃねぇぞ! こいつは、何の罪もないただの子どもだ! それを害悪異形だと……? んなわけねぇだろうが!」
「子どもだろうが、何であろうが関係ない。異形は殺すべき存在──特に半異形はあらゆる
朝緒は大きく目を見開いて歯を食いしばり、
「てめぇがやろうとしてることは、無差別殺人だ! この
朝緒が今にも
「おいおい、殺し合いでもおっぱじめる気か? どうどう、
朝緒を
「……こうも好き勝手されるのは見過ごせん。逢魔、このままではお前が捜している異形の情報も手に入らんぞ?」
封印された逢魔は灰色の眼を細めて、強い視線を雨音に
「まさか、さっそく封印することになるとはな……弥朔、半異形の子を部屋まで送り届けるのを頼む。そして桃、この
「は……はい。わかりました、雨音先生」
「へいへい」
弥朔は気を失ってしまった半異形の子どもを。桃は呪符で縛られた逢魔を
まだ怒りの収まらない朝緒は、荒々しい呼吸を繰り返しながら雨音を睨みつける。
「見ただろ……あの
「いいや、逢魔には引き続き如月屋で働いてもらう。あの男は、確かに
「な……あの
雨音は
『假屋逢魔を、如月屋の一員として
如月閃。それは、半異形である朝緒を拾い育てた、朝緒の養父にあたる男の名であった。また、雨音の父にもあたる。
如月屋顧問である閃は現在、如月屋を長く留守にしている。閃は放浪
信じられないと、何度も書状を読み返す朝緒だが、徐々に血の気が引いていく。ようやく書状から顔を上げた朝緒は、
「何考えてやがる、あの放浪爺……! よりにもよって、俺が。あんな異形殺しの狂犬クソ野郎と組めるわけねぇだろ!?」
「……気持ちはわかるが落ち着け、朝緒。俺たちもサポートする。それに、〝異形との共存〟を目指す俺たちが、異形どころか人間相手と相容れることができずに、どうする」
「……!」
雨音の正論に朝緒は
雨音は
「桃と弥朔、逢魔には伝えていたが、お前にはまだだったな──さっそくだが、次の仕事が入ってきた。
雨音からの問いに、しばらく朝緒は深く考え込む。
異形市で
(もし、俺の正体があいつにバレたら……)
先ほど
今すぐにでも、逢魔との仕事から降りたい。逢魔に近づきたくもない。しかし、みすみす逢魔を目の届かぬ所へと放置していたら、自分以外の
しかも、今回逢魔を朝緒に任せてきたのは、
そこまで考え至ってようやく、朝緒は長く息を
「……やる。何かあった時は、俺があの狂犬野郎をぶん
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