第一章 最悪の出逢い③
異形市で売買されていた異形は無事、全員保護することができた。
異形市
仕事現場で
「おい! ニンゲン!」
如月家の台所でぼーっと立ち
「その呼び方やめろって言ったろ。俺は朝緒だ。……で、なんだ?」
「この屋敷、広すぎる! 外に出られない! おれを閉じ込めて、またおれをどこかに売り飛ばす気だな!? ここから、出せ!」
「ダメだ。半異形のお前は、色んな
朝緒は再び視線を手元にある洗い物に戻す。子どもは、どこか疑うような眼で
その子どもは、朝緒たちが潜入した異形市で保護した〝
洗い物を終えた朝緒は、食器
「よし。おい、腹減ってねぇか? 食べてみろ、
朝緒はエプロンを外しながら、部屋の
「た、たべない! ニンゲンが作ったものなんて、信じられない……
朝緒は小皿に移した卵粥を一口味見して「毒は入ってねぇぞ」と言いながら、子どものもとまで歩み寄って、視線を合わせるように身を
「見ろ。俺はお前と同じ、半異形だ」
朝緒の顔に、
朝緒の狐面の紋様を目にした子どもは、大きな目を
「それに、俺も親の顔を知らねぇ。まあ、俺の場合は赤ん
朝緒の言葉に、子どもは小さな手をぎゅっと白くなるまで
「誰も信じられない。
「……え?」
不安に
「何かあっても、何もなくても。いつでもウチに来い。俺を
きっとそんな言葉をかけられたのは初めてだったのだろう。朝緒の言葉にひどく
それは、幼い朝緒が人間にも異形にも「
不敵な物言いのくせに、
子どもは鼻をすすってしゃくり上げながらも、朝緒に何度も
「食うか?」
「……くう」
「おう。ゆっくり腹に入れろ」
子どもは目を擦りながら、とてとてと
「……! うまい!」
「当然。おかわりもある。腹いっぱい食え」
子どもは目を
「そのまま食べてろ」
朝緒は、食事に夢中になっている子どもに軽く声を掛けると、扉を少し開けてその間からするりと廊下へ
扉の前には、桃と一人の少女がいた。朝緒は桃と少女へ
「もう帰って来てたのか。クラゲ、桃」
「うん。桃さんたちと
朝緒に「クラゲ」と呼ばれた少女の名は、
弥朔は朝緒の背後で微かに開いている台所の扉に目を向けながら、小さく
「半異形の子は、落ち着いた? 雨音先生と桃さんは、朝緒一人に任せておけば
「ああ。心配いらねぇ。今は大人しく飯食ってるとこだ」
朝緒の答えに、桃はニヤリと笑みを浮かべた。
「な? 言っただろ、クラゲ。しかも、半異形の
「……そうですね。桃さん」
弥朔は桃に頷きながら、長い
桃は「それはそうと」と目を
「すげー腹減ってんだけど。朝緒、俺の飯は?」
「……」
朝緒は桃の発言に半眼になりながらも、長い
「飯、ゆっくり食ってろ。俺が戻るまで台所からは出ないように。いいな?」
「……うん。わかった!」
匙を持ったまま、大きく首を縦に振って見せた子どもに、小さく笑みを
「それで
「色々とひでぇなあ……まあ、有り
食パンを受け取って、さっそくパンの耳を
「悪いな、クラゲ。お前は俺を呼びに来てくれたんだろ」
「ううん、大丈夫。そう、とりあえず居間に行こう。如月屋に新しく入った、新人の方を
「新人」という言葉に、朝緒は
「そういやクラゲ。今度の同人誌はどんなのなんだ? 俺、結構楽しみにしてんだが」
朝緒と弥朔の後ろから掛けられた桃の言葉に、弥朔は目を光らせる。
クールな見た目からは思いもよらない、喜びと興奮の入り混じった声で、弥朔は熱く語り始めた。
「……ふふ。次の作品も力作ですよ、桃さん。なんせ、モデルはアオ×モモですから! タイトルも〝青い果実〟って言って、お気に入りなん」
「はあ!? ちょっと待て。何考えてんだ、このアホクラゲ!」
得意げに語られる聞き捨てならない言葉を、朝緒は
「何だそのふざけたカップリングは!? この間まで自分と桃をモデルにした、ノーマルカプにするとか言ってただろうが!」
たまったものではないと目を
「桃さんモデルの夢絵もいいけど……最近はアオ×モモがあたしの中でキテるの。できあがった
「断じてやめろ! 俺は死んでも目に入れねぇ!」
「んな
「そうだよ朝緒。あくまでモデルなんだから。モデル」
「黙れ! ……ああ、もういい! 俺は先に行くぞ!」
朝緒は逃げるように廊下の先へと駆け出し、歩く二人を置き去って居間へと向かった。
「……ありがとうございます、桃さん。朝緒、少しは元気になってくれたみたいで、良かった」
「ああ。あいつは犬みてぇに
桃と弥朔は
「そういや、クラゲ。俺と朝緒だと、俺が右になるんだな?」
「はい! あたしの個人的な
「揺るぎなくか」
「
「あ~……あいつ、男だぞ」
桃の
「わ、そうだったんですか。あんまり綺麗な人だったから、てっきり」
「ま、気持ちはわからなくもねぇ。それに、あいつはキレーな
桃の
「
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