駆け出しの冒険者シルヴァは仕事の依頼をしてきた勇者パーティに裏切られ、ダンジョンの探索中に死亡する。強い恨みを持って死んだ彼は生前の記憶を持ちながらゴブリンに生まれ変わる。
前世では勇者に搾取されたシルヴァだが、ゴブリンに生まれ変わっても世知辛い境遇は変わらない。上位の魔物であるオーガに食料を集めてくるように命じられ、必死に森で獲物を探す日々。この調子では勇者への復讐は夢のまた夢……と思いきやゴブリンという種族はある特殊な力を持っていた。それは捕食した相手のスキルを奪うというもの。そしてその力は魔物だけではなく人間相手にも発動し……。
シルヴァは強くなるためなら手段を選ばず、相手が人間だろうとためらわずに命を狙う。人間と同じ知性を持ちながら、この倫理観のなさが本作の大きな特徴。また知恵を活かして格上の生物を捕食して成長していくのがこの種の作品の醍醐味だが、本作はシルヴァだけではなく仲間のゴブリンも成長していき、強力な群れとなっていくのも良い。
どんどん成長していくこの凶悪な集団が今後世界にどのような被害をもたらすのかぜひ注目していきたい。
(「異世界版 裏社会の歩き方」4選/文=柿崎憲)