第38話 装備品の確認


 駆け出し冒険者だし、話を聞いた限りでは薬草の採取のためにこの森に来ていたことから、大した道具は持っていないということは分かる。

 それでもゴミを拾って大喜びしていた俺にとっては、簡単に手に入るアイテムでも全てがお宝。

 期待するなという方が無理な話であり、ワクワクした気持ちでまずは装備品に手を伸ばした。


「この防具はタンクの男が装備していたものか?」

「ソウデす! サブとオナジように、オレがきようとオモッテいたンですけど、チイサクてキレナかっタんデス!」

「イチは大分大きくなってしまったからな。粗鉄の胸プレートは中々良いが、微妙なサイズだな」


 バエルがギリギリ着れるかもしれないが、サイズ感としては少し大きいだろう。

 盾のように改良しても良さそうだ。


 それから大きめの木の盾と皮の靴。

 タンクの男が身に着けていた装備はこんなものか。


「狩人の身に着けていたものは全てサブが装備しているのか?」

「フクいがいはソウです!」


 服は置きっぱなしにしてあるとのことで見てみたが、動きやすいためか布の服。

 これもわざわざ身に着けるものってほどではないし、服としてじゃなくて布として使うぐらいしか使い道はなさそうだ。


「僕が倒した戦士の服はそっちの畳んであるものです。他のものと比べても質が高いと知らないなりに思いました」

「……確かにワンランク上のものかもしれない。それにしても几帳面だな」


 他は乱雑に置かれていた中、付着していたであろう血液や汚れをしっかりと落とし、綺麗に畳んだ状態で置かれている。

 バエルの性格がモロに出ていて非常に好感が持てる置かれ方だ。


 装備品の質に関しても言っていた通りワンランク高く、他の二人と比べても分かる通りルーキー冒険者が買える装備品ではない。

 この装備を身に着けていた戦士だけが、一般の出ではなかった可能性も十分に考えられるな。


 何か良いアイテムがないか鞄を漁っていると、次々に使えそうなアイテムが出てきた。

 煙玉や毒玉、火炎瓶に魔力玉と攻撃手段として使えるアイテムから、回復ポーションにマナポーション、薬草の中で最上級と呼ばれている弟切草まで入っていた。


 これらのアイテムは買ってもらったが使えなかったんだろうな。

 俺としてはこうして現物が残っているのはありがたいが、使われていたとしたら負けていた可能性まであったので背筋がヒヤリとする。

 嫌いな性格の人間ではあるが、おっさん戦士が盾に使ってくれたことを感謝するしかない。


「この戦士が持っていたアイテムは全部使えるな。他とは分けて置いておいてくれ」

「分かりました。巣の中に運び入れておきますね。そして最後はシルヴァさんが倒した人間の装備品です」


 最後に紹介されたのは、おっさん戦士が身に着けていた装備の数々。

 さっきの戦士の装備品もワンランク質が高かったが、この白銀のフルプレートは別格の装備品。


 こちらの装備も綺麗にしてくれたようで、ピッカピカに輝いている。

 残念なのはサイズが大きすぎることだが、工夫すれば鎧以外としても使うことができるし、イチなら装備することができそうだしな。

 

 そして何よりも嬉しいのが……この鋼の剣だ。

 今まではゴミ溜まりから拾った折れた剣を加工して作った、なまくらの短剣で戦っていた。


 それがこの鋼の剣を使えるというだけで、相当な戦力アップに繋がる。

 フルプレートはイチにでも身に着けさせるとして、俺はこの鋼の剣を使わせてもらうとしよう。


「この剣は俺が使ってもいいか? 短剣も折れてしまったからな」

「わざわざ僕に聞かなくても大丈夫ですよ。全てシルヴァさんの物ですから!」

「決してそんなことはないが、いいというなら使わせてもらう」


 バエルの後ろで三匹も首を縦に振ったのを見て、俺は鋼の剣を腰に差した。

 鞘もかなり質が良く、着け心地が最高だな。


「この人間はアイテムとかを持っていなかったのか?」

「そちらにある鞄を持っていましたが、中身は空っぽでしたのでアイテムは持っていなかったと思います」

「なるほど。強敵のいない場所だからって何も持ってきていなかったのかもな。それじゃアイテムに関してはこんなものか」

「そうですね。結果を見ると僕が殺した戦士が一番アイテムを持っていたと思います!」

「おっさん戦士の方も期待していたんだが、まぁでもこれだけアイテムが手に入れば上出来だな。それじゃ……いよいよみんなの能力の確認をさせてもらおうか」


 アイテム確認を終えたところで、お待ちかねの能力確認の時間に移る。

 俺も何かしらの進化を遂げているし、自分自身の能力も確認したい。

 成長次第ではオーガを倒す算段をつけられるし、今からイチ、サブ、バエルの能力の確認するのが楽しみだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る