第17話 他のゴブリン
約一時間ほどで全てのゴブリンから食材の徴収が終わった。
全体を見回して観察していたが、今回ノルマを達成したゴブリンの班は俺達含めて九班だけだった。
ベテランっぽい感じが班が五つ、それから若い有能そうなゴブリンが率いる班が三つ。
若い組を率いる三匹のゴブリンは全員特色があり、ゴブリンの大半を占める汚い緑色の体ではなかったのが目に付いた。
一匹目は黄色みがかった体も一回り大きい個体で、ホブゴブリンと呼ばれる種類のゴブリン。
全体を見渡しても数匹しか確認できなかったし、ダンジョンではよく見かけたがゴブリンからホブゴブリンが生まれることは千分の一ぐらいの確率なのだろう。
二匹目は片手剣に盾に鎧まで装備したゴブリンで、恐らくだがゴブリンソルジャー。
俺達の集落では、人間を捕食できたゴブリンは老体の一匹しかいないのだが、このゴブリンソルジャーの班にはリーダーとは別に三匹のゴブリンが進化を遂げていた。
リーダー以外は鎧を見に着けておらず武器もかなり質素なもののため、恐らく冒険者ではない一般人を食べたゴブリンビレッジャーだろうが、様々な集落から集められたこの場所の中では圧倒的に一番の武力を兼ね備えた班だと思う。
最後の三匹目は真っ白な体をしたアルビノ個体のゴブリン。
ダンジョンでも見かけたことがないし、特殊なゴブリンだと思う。
ローブに杖を装備していたことからも、ゴブリンメイジだとは思うが……通常のゴブリンメイジはあんな感じではないのは確かなため、本当に珍しいレア個体なのは間違いない。
それと、恐らくアルビノ個体のゴブリンはメス。
白いだけで普通のゴブリンと大して見た目は変わらず、人間の記憶を持った俺が欲情する訳がないのだが、長く見ていると下腹部が異様に疼いたのがその証拠。
心とは別で体が反応してしまっているような感じで、身を以てゴブリンの生殖能力の異様さを体感している。
とまぁ無駄な情報は置いておいて、ここにいる中で目ぼしいゴブリンはこの辺りだろう。
いずれは仲間にしたいゴブリン達だし、少しずつ仲良くはなっておきたい。
今日のところは観察するだけに留め、俺達は広場を離れて自分達の巣に戻った。
ひとまず最初の食材のノルマを無事に達成でき、今日からは新たな食材の確保に移りたい。
ただ、重さが基準となっている以上生の方が重量が稼げるため、すぐに獣を捕らえることができたら、期限一週間前までは狩りを行わずに過ごそうと考えている。
最初の一週間は狩りを行い、獲物を狩ることができ次第、自身の強化にシフトしていきたい。
強化についてだが、狙いたいのはやはり人間。
ゴブリンの性質上、やればやるほど伸びた人間の頃と違って自己鍛錬だけで強くなるには限界があり、スキルを活かした捕食行為でしか強くなる方法はない。
その矛盾点として、魔物は自身よりも上位の魔物には手出しできない本能が組み込まれており、バエル、イチ、ニコ、サブの四匹は大半の魔物は捕食することができない。
そうなってくると必然的に人間を喰って強くなるしかなく、俺達のこれからの目標は人間を狩ることとなる。
人間を食べてゴブリンソルジャーやゴブリンメイジといった上位種に変わることができれば、他の魔物も捕食対象にすることができて一気に幅が広がる。
階段を一気に駆け上がれるようになるとは思うのだが、その人間を捕食するというのが非常に難しい。
戦闘職についていない人間なら現時点でも勝てる算段はあるが、そんな人間は基本的に街から出ない。
この森に近づくのは冒険者が大半で、たまに商人は近くを通るだろうが、確実に冒険者や兵士の護衛をつけている。
弱小の行商人なら護衛の冒険者も弱いだろうし狙い目だが、弱小かどうかの判別をつけるのが難しい。
馬車の大きさや荷物の量からで何とか判別はつけられそうだが、腕利きの冒険者が護衛だった場合のリスクは図り知れない。
商人は弱いだけでなく、運んでいる商品を手に入れることができるメリットもあるんだが……。
流石に死に直結するリスクは取れないな。
そうなってくると、狙いはルーキー冒険者しか残されていない。
こっちもリスクがなくはないのだが、この目で見ることができる分ベテランとルーキーの判別はつけやすいだろう。
俺は強くなるための獲物をルーキー冒険者に定め、ここから動いていくことに決めた。
まずは俺が魔物を狩って捕食し、ルーキー冒険者以上に強くなるのが最優先。
やることが山積みだが、明日から一つずつこなして着実に強くなっていこう。
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