第16話 NPC、近所迷惑が引っ越してきた

 店に戻ったが夜の営業はなかった。それなら工房でも行こうとしたが、工房でも作業をしないと言われて渋々帰ってきた。


 どこも同じように今日は営業をしないらしい。


 店は少し荒らされた程度で、片付けを終えた俺は久しぶりに何もない時間をベッドの上で横になるしかなかった。


【ステータス】


 名前 ヴァイト

 STR 47 +10

 DEX 35 

 VIT 10

 AGI 75 +10

 INT 10

 MND 60 +10



【職業】


 ♦︎一般職

 ウェイター7 +1

 事務員4 +1

 販売員4 +1


 ♦︎戦闘職

 剣士7 +1

 魔法使い6 +1

 弓使い4 +1

 斥候3

 聖職者1 +1


 ♦︎生産職

 料理人7 +1

 解体師6 +1

 武器職人5 +1

 防具職人3

 魔法工匠2


 デイリークエストも全て終わらずに、明日のためにステータスポイントを振って寝ることにした。



「ヴァイト、今すぐに起きてこい!」


 翌朝、バビットの声で目を覚ました。


 いつもは起こされる前に目を覚ましているが、今日は寝坊でもしたのだろうか。


 俺は空気の入れ替えをするために、窓を開けるがさらに外はバタバタとしていた。


「バビットさん、なんかあったんですか?」


「ああ、ついに魔王が復活したとギルドから報告があった」


「マオウさん……ですか?」


 初めて聞いた名前に俺は全くパッとしなかった。


「あいつにさん付けはいらない。最近やけに魔物の動きが活発で、昨日高ランクの魔物が襲ってきた理由がやっとわかった」


 バビットの話では何百年に一度、魔王が存在してその度に人間達は命や住む場所を失っているらしい。


 魔王の能力は様々だが、どれも強力で共通しているのは魔物を従える力があると言われている。


 その影響で最近魔物が暴れていたらしい。


 簡単に言えば、迷惑な人が引越ししてきたようなものだ。


 近所迷惑を気にしない人ってどこにでも一定数いるからな。


「それと外がバタバタしているのは、何か関係があるんですか?」


「魔王に唯一対抗できるのが勇者だ。各国で勇者が召喚されたと言っていた」


 人族、小人ドワーフ族、妖精エルフ族、獣人族、魔族が住む5ヵ国で勇者召喚が行われた。


 そして、人族の勇者が召喚されたのがこの町のすぐ近くらしい。


 近所迷惑よりも規模が大きいようだ。


 それに勇者は強力な才能を持っており、魔王を倒すには彼らの力が必要になる。


「ひょっとしたらここに寄るってことですか?」


「ああ、だからみんな朝からバタバタ準備しているんだ」


「ははは、じゃあ今日も忙しくなるんですね!」


 俺は嬉しくなって急いで掃除の準備を始めた。


「ヴァイト……大丈夫か?」


「今日も元気ですよ!」


 たくさんの勇者が訪れるなら、飲食店のここにも来るはずだ。


 掃除をしているとジェイドとエリックも顔を出した。


「バビット元気か!」


「ああ、お前達も弟子探しか?」


「そうだ! 勇者なら剣士の才能を持ったやつがたくさんいると思うからな」


「それは魔法使いも同じですけどね」


 どうやら冒険者達も弟子の恩恵を受けるために、勇者を勧誘するらしい。


 全ての職業がギルドの所属に声をかける。


 まさにお祭り騒ぎってこういうことだろう。


「色んな才能がある人がたくさん来るなら、もっと好きな仕事ができますね」


「うぇ!?」


 ジェイドやエリック、そしてバビットの弟子ができたら、俺が縛られることはなくなる。


 せっかくお世話になったから、弟子にならなきゃいけないという恩義感は気にしなくて良いのだ。


 俺はもっと気にせずに自分のやりたい仕事が探せるのだ。


「お前はもうそれ以上働かなくても良いんだぞ? さっきも少しおかしかったぞ?」


「そうだぞ? 昨日教会に行ったけど何もなかっただろ?」


 教会の聖職者に声をかけられていないため、みんなは俺に聖職者の才能があることを知らない。ただ、俺から才能があると伝えたら、半透明な板の存在を教えないといけなくなる。


 だからここは静かに微笑むだけにしておいた。


「じゃあ、ちょっと外に行ってきますね!」


 俺は様子を見に行くために、門の方へ向かった。


「ああ、あれは自ら社畜道を決めた時と同じ顔をしているぞ……」


「働きすぎて死なないですかね?」


「そんな話聞いたことないぞ。働きすぎて死ぬやつっていたか?」


「ヴァイトならその可能性もありそうだな」


 三人はこそこそと何かを話していた。



 バビット達が言ったように、門の外から人がゾロゾロと中に入ってきた。


 年齢や見た目は様々で、女性よりは男性の方が割合としては多めの印象を受けた。


 勇者って数人の気がしたが、まさかこんなにいるとは思いもしなかった。


 町に入ってキョロキョロする人、住人に声をかける人、その場で走り回る人など様々いた。


「ちょっといいかな?」


 そんな中、俺にも声をかけてくる人がいた。


「はい、どうされましたか?」


「よかったら町の説明をしてくれる人ってどこかにいますか?」


「それなら俺が教えましょうか?」


 俺はバビットに言われた通りに、右側商店街、中央が商業街、左が生産街。そして、奥には各ギルドがあることを伝えた。


「ほぉー、色々とありがとう!」


「いえいえ、俺そこの飲食店で働いているので、お腹が空いたらよろしくお願いします!」


 ちゃんと店を宣伝するのを忘れない。


 それに俺以外にも同じように、質問に答えたり直接ギルドに連れて行く人達ばかりのようだ。


 さすがにこんな状況だとデイリークエストも受けられないと思い、昼の営業前にできるだけクリアすることを目標にした。


 まず向かったのは冒険者ギルドだ。


 すでにほとんどの勇者が冒険者ギルドに向かっていた。


 俺は勢いよく飛び上がり、屋根の上を走って行く。


 中央の道は人がたくさん通って行くし、見つかってしまうため斥候の職業体験もできない。


 冒険者ギルドに着いた時には、デイリークエストのクリアをお知らせする声が聞こえてきた。


 冒険者ギルドの中に入ると、もちろん忙しいのは予想していた。ただ、俺の方が勇者達より早く着いたのが幸いだった。


 たくさんの冒険者と職員が待機している横を通り抜けて、訓練場で剣の素振りと矢を放つ。


 剣の素振りなら自分で作ったものを使ってもデイリークエストに反映されていた。


 あとは弓矢が用意できたら、自宅でも出来るだろう。


【デイリークエストをクリアしました】


 そのまま小屋で解体作業を手伝おうとしたら、中には誰もいなかった。

 

 きっと解体師の弟子を探しに行ったのだろう。


 隣には昨日遭遇した、角が付いたウサギがいつものように置いてあった。


 せっかく来たから一体だけ、解体することにした。


 まったく可愛くない魔物だとわかれば、解体する躊躇はなくなっていた。


 普段よりも早く解体が終わると、まだ何も昼の準備が終わっていないため、店に戻ることにした。


 ああ、忙しい毎日って楽しいな。


 そう思っていたのは俺だけだと気づくのはそう遅くはなかった。


──────────

【あとがき】


「なぁなぁ、そこの人ちょっと良いか? 最近ヴァイトが働きすぎだから止めてくれないか?」


 どうやらNPCのバビットが話しかけてきたようだ。


「あのままだとあいつ死んじまうからさ。★★★とコメントレビューをあげるときっと休むはずなんだ」


 ヴァイトを止めるようには★評価とコメントレビューが必要なようだ。


(☝︎ ՞ਊ ՞)☝︎<次は12時に更新しますよおお!

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