第6話 NPC、転生したのにピンチ!?
目を覚ますといつものようにデイリークエストの内容が書かれた、半透明な板が浮いていた。
【デイリークエスト】
♦︎一般職
職業 ウェイター
料理を10品以上運ぶ 0/10
報酬 ステータスポイント3
♦︎戦闘職
職業 剣士
剣を10回素振りをする 0/10
報酬 ステータスポイント3
職業 魔法使い
精神統一を10分する 0/10
報酬 ステータスポイント3
♦︎生産職
職業 料理人
料理を1品作る 0/1
報酬 ステータスポイント3
どうやらデイリークエストの内容は基本的に変わらないようだ。
俺は半透明な板を閉じると、ポイントを割り振ることにした。
昨日からデイリークエストが4つになったことで、一日に手に入るポイントが12に増えた。
ステータスと体の動きが関係するなら、今後もデイリークエストが重要になってくるはずだ。
ここは慎重に決めたほうが良いだろう。
「んー、とりあえず動きが速い方が時間を有効活用できるよなー」
せっかくだから今までできなかったことをこの世界ではやっていきたいと思っている。
それには速く動ける体が第一優先だ。
【ステータス】
名前 ヴァイト
STR 11
DEX 10
VIT 10
AGI 30 +15
INT 10
MND 10
「よし、これで今日も楽しく職業体験ができるな!」
ここに住むためにウェイターとして手伝っているが、正直まだ職業体験をしている感覚だ。
「ヴァイト起き――」
「あっ、起きましたよ!」
俺が急いで一階に降りると、バビットは目をパチパチとさせていた。
そんなに高速で瞼を瞬きをして、目が疲れないのだろうか。
「お前……動きが速くなっていないか?」
きっとステータスをAGIに全振りしているからだろう。
移動が楽になればウェイターとして働くなら仕事はしやすいはず。
「職業体験の成果ですね」
「あっ……ああ。職業体験って結構すごいんだな」
どうやらこれで納得できたらしい。
別に嘘は言ってはないしな。
俺は外の掃除と店内の拭き掃除を急いで終わらせると、早速サラダの準備を始める。
「なぁ、ヴァイト?」
「なんですか?」
「お前には料理人の才能があると思うぞ」
「昨日も言ってましたね」
今日も俺を料理人として誘いたいのだろう。
俺としては自分の可能性を広げたいし、やりたいことだっていっぱいある。
「その才能はここではもったいない気がする」
「えっ……ここから追い出されるんですか!?」
まさかのバビットの言葉に俺は戸惑っていた。
正直そんなことを言われるとは思わなかった。
ここから追い出されたらお金がない俺は路頭に迷うだろう。ただ、まずは路頭に迷うことができるところを探さないといけない。
昨日町の中を歩いて回ったが、浮浪者の姿はどこにもなかった。
「いやいや、追い出しはしないよ。ただ、ここに縛りつけるんじゃなくて、本当にヴァイトのために、その職業体験ってやつをやった方が良いと思ってな」
どうやら俺を追い出すためではなく、やりたいことを見つけるために、応援してくれているようだ。
幸いデイリークエストをすることで、さらに俺は健康な体になることができる。
せっかくなら力もあって、足も速くなりたい。
それに今は何をやっていても楽しい。
今後も料理人やウェイターは続けることになるだろう。
「休憩や暇な時間に違う職場体験をしてくるので大丈夫ですよ」
「あー、そうか」
俺は再び手を動かして仕事の準備をする。
「あんなに若いのに社畜生活を望むとはな……」
バビットは何か一人でぼやいていたが、俺の耳には届かなかった。
営業の準備を終えた俺は、冒険者ギルドに向かうことにした。
隙間時間があるなら剣士と魔法使いのデイリークエストを終わらせた方が効率が良いと思ったからだ。
「こんにちは!」
冒険者ギルドの中に入って、ジェイドとエリックを探す。
どこかにいるかと思ったが、いる様子はなかった。
俺は近くにいた職員に声をかけた。
「えーっと、ジェイドさんとエリックさんは今依頼に行っていますよ」
いつもは昼過ぎに来ていたから、今は依頼に出かけているようだ。
冒険者である師匠がいなくて、訓練場は使えるのだろうか。
「訓練場って使えたりしますか?」
「あっ……訓練場は冒険者ギルドに登録した方か師弟関係のある人しか使えない仕組みになっています」
やはり俺だけでは訓練場は使えなかった。
これからはお昼の営業が終わったタイミングで来ないといけないのだろう。
「それじゃあ、忙しいからごめんね」
どうしようか迷っていると、職員達がバタバタしていることが目に入った。
主に冒険者ギルドの職員は依頼の張り出し、依頼の受理、その他依頼についての説明をしているようだ。
職場体験でもしようかと思ったが、忙しそうにしているため、俺は冒険者ギルドから立ち去ることにした。
「んっ……あれは何をやっているんだ?」
冒険者ギルドから出ようとしたら、訓練場の近くの小屋で何かをやっている人がいた。
何をやっているか気になった俺はひょこっと顔を出す。
「ははは、これは大物だな」
そこには血だらけで大きな出刃包丁を持った男が、ニヤリと笑っていた。
見てはいけないものを見てしまったと思い、俺はすぐにその場を離れることにした。
――ジャリ!
「誰だ!?」
どうやら俺は速く逃げようと思い、地面を強く蹴ってしまったようだ。
「しゅ……しゅみません!」
すぐに頭を下げて謝ると、男はニヤニヤしながら近づいてきた。
ああ、俺の人生はここで終わりなんだろうか。
まだ転生してから三日目の出来事だった。
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