オリジナル短編集(異世界ファンタジー)

@konisioonisi

食べ物系

ゴブリンの食べ方

ゴブリン


緑色の肌を持った子供ぐらいの大きさの二足歩行の魔物。ずる賢く、複数で奇襲することだ多々ある。また繁殖能力が非常に高く、一日で最大10匹生まれる。初期モンスターとして知られているこのモンスターの使い道は魔石と角しかなく役に立たない。


「それを食すとしたら、どうすればいいと思う?」

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ここはモンスターの生態や特性を研究する王立研究所。多数の研究成果を生み出し、世界有数の研究所となった。そんな研究所の窓際研究室、通称「ゴミ捨て場」の第2研究室での一幕。


俺と太っちょ研究員はゴブリンの皮膚・筋肉に関する資料を博士から取ってこいと言われてしまった。そんな時のお話。


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「馬鹿だろ。そもそもゴブリンは衛生環境の悪い場所に生息することが多く、死体であろうとなんだろうと触れたらすぐに消毒しなければ感染症のリスクにつながることもあるんだ。そんなもんを食えるわけがなかろうが。」


「でも繁殖能力はピカ1なんだろ?食せれば食糧問題はある程度解決すると思うんだがなぁ...」


「たしかにそれはそうなんだが...でも、洞窟とか不衛生な場所に住んでいるやつらだろ?そんなの汚すぎて食えたもんじゃねぇよ。」


「それだったらきれいな場所で繁殖させたらいいんじゃないか?」


確かにそれならば衛生的にもいいだろう。最近は貴族の間で卵の生食が流行っているらしくそのために衛生面ではバッチリなようだが、それは無理な話だろう。


「無理だね。ゴブリンは胎生でしかもキングチキンとかと違って皮膚に菌が付着しやすいようになっている。確か、身を守るためだったか。皮膚が緑色なのもそのせいだったりすることが影響しているとか、前の資料にのっていたし。」


「そこは加熱調理すればいいのではないか?」


確かにそうなのだが...


「ゴブリンは病源菌からの毒素に強い耐性がある。というかその毒を皮膚に貯める特性がある。これはごく最近に発表されたことなんだが、ゴブリンを病源菌の毒度に大勢のない魔物に食べさせると発熱・頭痛・魔力暴走などの状態異常が発生した。この状態異常はゴブリンに接触したことでも感染する『アナム病』の重症のときの症状に酷似していた。このことからそういう特性何だと結論付けられたんだよ。まぁ要するに『アナム病』の病源菌とは共生関係にあったってことだな。」

「ちなみに加熱しても意味ないぞ。熱耐性を持っている上にその病源菌もゴブリンの筋肉組織に潜んでいるらしいし。」


「まじかぁ....」


「内蔵は...何くってんのか想像できないしまず食えないわな」


「東方の国では内蔵食文化があるらしいが、それは家畜類だからなぁ。」


東方の国では魔物の量が少ないから家畜を飼って育てているらしいし。それなりに安全なんだろう。


「ん、見つけた。んじゃ行くかねぇ。」


「そうだな。いつまでも喋ってたら痺れ切らして怒鳴り込んできそうだもんな。」


俺等は資料を博士に渡しに行くことにした...




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「マスター、蜂蜜酒ミードをくれ」


「相変わらずお前は甘党だな。俺には葡萄酒ワインをくれ!」


研究所の仕事を終わらせた俺たちは町の酒場でさっきの話を肴に酒を飲んでいた。


「やっぱゴブリンの肉は食えんよ。さっき資料を探したけど料理法なんてなかったし、肉自体硬くて苦くて食えたもんじゃねぇ。」


「まぁそこはやせ我慢しなければやってらんないだろう。それさえ大丈夫ならば腹空かして我慢する執拗はないんだからよう」


「その前に毒素の問題が残っているがな。」


「あぁ、そういえばそうだったな...」


「ん〜何だ〜にぃちゃん。ゴブリンの研究でもしてんのか?」


俺等が話に夢中になっているときに不意に声をかけられた。そちらに顔を向けるといかつい顔した男がでっかいジョッキを持って顔を赤くしていた。


「ああ、俺等は王立研究所のお荷物研究室の研究員だ。今俺達はゴブリンの肉について研究していて、そのことで肉を食べれないかって話が浮かんでそれについて議論していたのだよ。」


「ゴブリン?あれかぁ...一度食ったことがあるがあれは「本当かっ!」おっおう」

「あれは俺がまだ駆け出しだった頃の話だ...」


何かすっごい長かったので要約すると


この男がまだ駆け出しだった頃、依頼に失敗してしまい多額の違約金を支払ったそうだ。そのせいで貧乏になって食える飯が少なくなったそうでいつもひもじかったそう。その時割の良いゴブリンの討伐依頼を受けて討伐の証明のために角を取っていたときに空腹のあまりゴブリンの肉を焼いて口にしてしまったらしい。肉は硬く味はエグみが酷く茹でてアクを取ろうにもアクが出まくってそれどころではなかったようだ。なんとかマシになって食ったあと、毒をくらったそうで毒消薬アンチポイズンポーションを飲んで事なきを得たそう。


「・・・だから金輪際ゴブリンの肉だけは食わないようにしてんだ。あのときはやばかったぜ。何かクラクラしてきたからとっさの判断でポーションを飲んだから助かったが危うく魔物に食われる可能性もあったからな。」


「それは大変でしたね...」


「それ以来この話を若い奴らに話して注意喚起をしてる。あんたらもゴブリンの肉を食おうとなんて馬鹿なこと考えないほうがいいぜ」


「ま、そういうことだな。」


「そうかぁ...まじかぁ....」


いい案が思いついたと思っていたんだろう。肩をがっくりと落として意気消沈してしまった。


「その話を聞いて毒消薬をつければいいだろうと思っていたやつがいたんだがそいつは死んじまったからな。馬鹿なことは考えないで別のことに切り替えたほうがいいと思うぜ。」


「そのとおりだ。もう諦めて酒でも飲んで忘れようぜ。」


「ああ、もう...今夜は飲み明かすぜ!」


「おうおう兄ちゃんその意気だぜ!」


「はははww」


俺等はその後やけ酒しまくって...見事に二日酔いで撃沈したのだった...




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『ゴブリンの食べ方』をお読みいただきありがとうございました。

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〈おまけ〉

アナム病


症状:吐き気・熱・頭痛・寒気・呼吸困難・立ちくらみ


発生場所:湿気のある洞窟


特性:炎熱耐性Ⅴ、繁殖能力Ⅴ、毒生成Ⅲ


ゴブリンとの共生関係を持ち、栄養素の一部を貰う代わりに毒を生成して敵を倒している。ゴブリンと生物が接触するとそこから感染。繁殖を上げて一気に肉体の栄養を吸い取る。

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