ブンボウガー

神無月118

第1話 僕の名前は『ペンシル』


僕の名前は『ペンシル』


どこにでもある普通の文房具。


「よっ、ペンシル!今朝もずいぶんと薄いな!」


「うるさいなー、お前だって角汚れてるくせに」


からかってくるこいつが『イレーザー』


今日もいつもと変りなく、イレーザーと一緒にブンボー学校に登校していた。


「……おい、ペンシル。見ろよあれ」


そんな登校中、急にイレーザーはお得意の白い体でつついてくる。


「お、おいやめろよ。お前に跡がついちゃうだろ。大体なんだっていうん……」


イレーザーの視線、その先になにがあるかのか、つられて僕もみる。


そこにいたのは───


「───ファウンペン……先輩」


美しい直線でありながら、丸みのある掴みやすい抜群のプロポーション。


サラサラと、その漆黒は誰もを魅了する。


「あの先輩、いつ見ても凛々しいな?こりゃオタク君なペンシルもお熱なわけよ」


「オタクは余計だけど、当たり前だろ!そもそも凛々しいなんて言葉じゃ、書ききれないよ。まるで4H───」


言いかけて、考えを改める。


「ううん、6Hぐらいに芯の硬さがある、そんな憧れの的だよ」


「へぇ、そんなもんかね。俺っちにはわかんねーわ……おっ、見ろよペンシル。俺にはあっちの方が好みだぜ」


イレーザーの視線の先には、見るからに他人を寄せ付けようとする色香を周囲に撒く消しゴム、『キャラ』達がワイワイと話しながら、グループを成して歩いている。


「うひょー!マジたまんねぇわ、あの体!許されるなら俺とこすり合わせたいもんだぜ!!」


「ちょっとやめろよ!そんなこと大きな声で言うもんじゃないだろ!お前の場合、想像するだけで熱くなるだろ……」


確かに『キャラ』達は、丸いだけで疎まれがちなもの消しゴムだけど、けっして下品ではなく、まるでそう形づくられたかのようで、イレーザーには内緒だけど、僕もそういうことを考えたことはある。


「だってよー、あんなに淫靡なのにめっちゃ硬いんだぜ?ギャップがたまらねーっつーか」


そう。彼女たち、失礼は承知で言うが、あんな見た目なのに身が相当硬いのだ。


「あれなんだっけ、お前みたいなオタクに優しくしてくれる『キャラ』っていうの最近流行ってたよな?」


「『オタクに優しいキャラは存在する!』ね。あれも流行ったのはずいぶん昔だけど」


一時期、『キャラ』の見た目でオタクに優しいという意外性で一部界隈が盛り上がったことがあった。


まぁ、そんなものは現実には存在しないんだろうけど、僕も夢見る鉛筆。しっかりトレース済みだ。


そんないつものように、どうでもいい話でイレーザーと盛り上がっていると向かう先から鐘の音が鳴り響いてくる。


「あっ、やべっ!おい急がねーとやべぇぞ!」


「わかってるよっ!」


僕とイレーザーは急いで学校に向かい、担任の教紙にとがめられることなく、無事自分の筆箱に収まったのであった。



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ブンボウガー 神無月118 @-118-

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