第14話:あの世行きの電車。

「あの〜未瑠奈みるなさん・・・私は生き返ることはできないんでしょうか?」


馬草把 礼奈衣うまくさわ れない」さんはすがるように未瑠奈さんに

聞いた。


「あ〜あんたね〜・・・あんたは間違って死んでないからね」

「予定通り死んじゃってるから無理かもね」


「そうなんですか?・・・残念です」


「・・・あのさ・・・どさくさに紛れて生き返らせてあげようか?」

「このさい、ひとり生き返らせるのもふたり生き返らせるのも同じだから・・・」


「え?本当ですか?」


「とりあえず瑠奈ちゃんを生き返らせてから考えるわ」


「お手間をとらせて申し訳ありません」


「じゃまあ、叶多と瑠奈ちゃんと礼奈衣れないは私と一緒にあの世に行く

からね」


「姉ちゃんは留守番しててくれ・・・かならず瑠奈を生き返らせて帰って

来るから・・・」


「分かった、がんばってね叶多・・・瑠奈ちゃんもね」


「お姉さん、行ってきます」


「あの〜私は?・・・」


「はいはい・・・馬草把うまくさわさんも頑張ってね」


「ありがとうございます、望美さんにそう言ってもらって超感激です」


「ちょっとウザいよね・・・」


ってわけで、俺と瑠奈と馬草把うまくさわさんは冥界に行くために未瑠奈

ちゃんに連れられて駅に向かった。


「未瑠奈ちゃん、あのさ・・・ひとつ聞いていいかな?」


「未瑠奈ちゃんって・・・私のほうが歳上だぞ・・・まあいいけど」

「なんだよ?聞きたいことって?」


「あの世へ行くんだろ?・・・なんで駅に向かってるんだよ俺たち」


「駅からあの世行きの電車が出てるんだよ」


「だいたい死の国に行く電車って設定は昔からそういうもんだと相場が

決まってるんだよ」


「電車に乗るんですよね?、楽しそうですね〜」


「瑠奈はノ〜天気でいいわ・・・」


ってことで俺たちまずバスに揺られて駅に着いた。


「乗車チケットなんかいらんからな入場券だけ買っとけ」


俺たちはホームに入ると未瑠奈ちゃんはホームの一番端っこまで俺たち三人を

連れて行った。


乗り場の上を見上げると「0番線」って表示板があった。


「この乗り場は一般の人間には見えないんだ」

「ここで待ってたら電車が来るから」


「瑠奈、あんまり前に出るな・・・電車がホームに入ってきたら吸い込まれるぞ」


「大丈夫だよ・・・二回も死なないから」


「幽霊でも自分の彼女が電車に轢かれてるところなんか見たくないだろ」

「だから、キョロキョロしない」

「初めて駅に来た幼稚園児か、おまえは・・・」


「おい電車が来たぞ」


未瑠奈ちゃんがそう言った。

俺と瑠奈がバカやってる隙に電車がホームに入ってきたらしい。


見ると真っ黒い電車が、こっちに近づいて来るのが見えた。

そして 0番線の前に停車すると、しばらくして自動トビラが開いた。


「お〜レトロな電車だな」


「さっさと乗るぞ」


俺たちは、これから、この電車に乗ってあの世に向かうんだ。

電車の中は、すでに数人の乗客が乗っていた。


「未瑠奈ちゃん、あの人たちは?」


「みんな死んだ奴らだ」


「げげっ、俺たち死人と一緒に乗ってんかよ」

「ってことは、なにか?・・瑠奈も亡くなった時この電車に乗ったのか?」


「う〜ん、よく覚えてないかも〜」

「覚えてないって自分のことだろうが・・・」


「私、寝てたかも・・・」

「寝てた?・・・あのな、もっと緊張感持てよ」

「そういやさ、生きてる時からどこででもよく寝てたよなおまえ」


「叶多〜駅弁買ってくればよかったね」


「人の話聞いてんのか?」


「だってお腹空いたんだもん・・・叶多は空いてないの、お腹?」


「そりゃ、空いてるよ」

「俺は生きてるからな・・・だけどおまえ幽霊だろ、なのに普通に腹減るんだな」


「そんなこと今頃気づいたの?」

「ずっと一緒にいて・・・ひどい」

「自分の彼女でしょ・・・か弱い女にもっと気を使いなさいよ」


「悪かったよ・・・」

「でも、魂なのに食ったものどこに入ってってるんだよ」


「いつでもちゃんと実体化して食べてるから、ちゃんと消化してるよ」

「でも実体化が解けたら食べたものが床に落ちるかも・・・」

「まだ失敗したことないけど・・・いつか失敗するかもね、あはは」


「あははでないわ・・・なに、呑気そうに言ってるんだよ」

「もし失敗して食ったものが、そこらへんに落ちたら自分で掃除しろよ」


瑠奈は、掃除するのはおまえだよって言うように叶多を指さした。


「まじか?どこまでも手間がかかる幽霊だな 」

「早く生き返って欲しいわ・・・生きてた時のほうがまだマシだったぞ・・・ 」


「私は、叶多といられるなら人間でも幽霊でもどっちでもいい」


「俺は瑠奈とエッチできないと困るし・・・」


「叶多はそれしか頭にないの?」


「愛しい彼女がいて相思相愛なのにできないって情けないと思わないか?」

「それにさ幽霊のままならいくら頑張っても実体化維持30分までなんだろ?」


「気合と根性が足りないんですかね、私・・・」

「ジムにでも通って、もっと鍛えようかな」


「おまえらバカか・・・そのために瑠奈を生き返らせに行くんだろうがよ」


「おう、そうだった・・・瑠奈もう実体化しなくていいんだよ」


「私・・・どっちでもいいです〜」


「どっちでもって・・・俺たちにとって大事なことだろうが・・・」


「ん〜よく分かんない・・・」


「叶多・・・瑠奈はもしかしたら、どんどん記憶を無くして行ってるのかもな」


「え?なんで?・・・なんで、そんなことになるんだよ?」


「死んだものは、前世での思い出を忘れて行くようになってるんだ」

「未練を残さないようにすることと転生した時、生前の記憶が残ってたら

ややこしいだろ?」


「じゃ〜このままだと瑠奈は俺のことも忘れて行くのか?」


「いずれな・・・だから急がないとね」


「窓の外、真っ暗でなにも見えませんね」


瑠奈が呑気にそう言った。


「本当ですね・・・」


今まで借りてきた猫みたいに大人しかった馬草把うまくさわさんが

ぼそっと瑠奈に相槌を打った。

電車は俺たちを乗せて死の国へ走って行った。


とぅ〜び〜こんて乳。


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