第13話:其処岳 未瑠奈(そこだけ みるな)って人。

俺と瑠奈がショッピングパークからマンションに帰ると、リビングに

姉ちゃんと馬草把うまくさわさんの他に見たことない女の人がいた。


俺たちが買い物に行ってる間にその女性が訪ねてきたらしい。


で話を聞いてみると、なんとその女性、三途さんず の川辺で、亡者 の

衣服をはぎ取るっていう三途河の婆しょうずかのばばって人だって、馬草把うまくさわさんが説明してくれた。


「叶多・・・この人、馬草把うまくさわさんと同じ、あの世の人みたいね」


姉ちゃんが言った。


「だな・・・」


その三途河の婆しょうずかのばばって女の人は 俺の姉ちゃんくらいの歳恰好のめっちゃ綺麗な人だった。

瑠奈がいなかったら、お付き合いをお願いしたいくらい・・・。


「え?ばばってくらいだから、ばあさんじゃないの?」

「おネエさん、めっちゃ若いけど・・・」


「この姿は現世での仮の姿だよ・・・ニイちゃん」


「あ〜そうなんですか・・・」

「あ・・・僕の名前「遥 叶多はるか かなた」って言います。


「知ってるよ・・・君のことも瑠奈ちゃんのことも・・・」

「ここへ来る前に調べて来たからな」


「私、其処岳 未瑠奈(そこだけ みるな)って名前」


「あ〜どうも・・・其処岳そこだけ?・・・未瑠奈みるなさん」


「叶多、其処岳そこだけさんは瑠奈ちゃんと馬草把さんを連れ戻しに来たんじゃないの?」


って姉ちゃんが・・・。


「そうなんですか?未瑠奈みるなさん?」

馬草把うまくさわさんはともかく瑠奈はあの世になんか返しませんからね」


「心配しなくても連れて帰ったりしないよ」

「その逆・・・実はいい話を持ってきたんだ」


「いい話って?」


「叶多くん・・・生身の瑠奈ちゃんと幽霊の瑠奈ちゃんとどっちがいい?」


「幽霊もいいですけど、やっぱり生身の瑠奈がいいかな」

「瑠奈の実体化維持タイムは今んところ30分が限界なんですよ」

「でも後どれだけ伸びるか分かんないし・・・このまま実体化できないかもしれない

じゃないすか?」


「私、がんばってるよ、叶多」


「分かってるけどな・・・このままじゃエッチできるかどうかも分かんないだろ?」


「叶多・・・おまえそれしか頭にないのか?」


「それって大事なことだろうがよ、姉ちゃん・・・」


「あのさ・・・そんなにエッチしたいんなら生前の瑠奈ちゃんを生き返らせれば

いいんだよ」


「え?そんなことできるんですか?、未瑠奈さん」

「どうやって? だいいち瑠奈の体は火葬場で焼かれちゃってるんですよ」


「バ〜カ、灰になった体なんか役にたたないことくらい分かってるよ」

「ちゃんと形を留めてる時を狙うんだよ」


「実はこの方法はちゃんとした理由がないかぎり使わないんだけどな」


「方法って?」


「三途の河の手前に過去に行ける扉があるんだよ 」


「まじで?・・・どこでもなんちゃらってやつですか?」


「まあ似たようなもんだな」


「それはな、死んで冥界にやって来た死者の過去を見に行くためにあるんだけどね・・・その死者が生前どんな諸行に及んでたかを見て、その情報を元に閻魔様が

天国へやるか地獄に落とすか采配を下すってわけ・・・」


「え〜そんなことで天国行きか地獄行きが決まるんだ・・・」

「ちなみに聞くんだけど瑠奈は天国か地獄どっちへ行く予定だったの?」


「もち天国・・・ただしあの世の規則を破ってこっちの世界に帰って来ちゃってる

からね・・・」

「もしかしたら地獄に落とされるかもな」


「え〜私、地獄行きなんですか?」

「叶多〜私、地獄になんて行きたくないよ〜」


「まだそうと決まったわけじゃないだろ?」

「大丈夫だよ・・瑠奈が地獄行きならこの世に行きとしける生きモノはみ〜んな

地獄行きだよ・・・俺だって蚊もハエも台所のゴキもな」


「え〜私をゴキと一緒にするな?」


「だからさ、そうなる前に瑠奈ちゃんを生き返らせないと・・・」


未瑠奈さんが言った。


「過去へ行けるって早い話タイムスリップだよな・・・そんなことが

実際できるんだ」


「たとえば、瑠奈ちゃんが亡くなった時の風呂場の現場まで戻って、

瑠奈ちゃんが死ないよう風呂に入れないように阻止する」

「瑠奈ちゃんがそこで死ななきゃ今も生きてるきてるってことだろ?」


「なるほど〜・・・でもそんなことして怒られないの? 歴史変えちゃう

ことになるよ」


瑠奈が不安そうに言った。


「実はね、瑠奈ちゃんはまだ死ぬ運命じゃなかったんだよ」

「風呂場で転んだのは不可抗力・・・ほんとはあそこで頭は打ったけど

助かってたんだよね・・・だけど、救急車が来るのが遅かったのと病院の

処置にミスがあって謝って死んじゃったんだ」


「死ぬはずじゃなかったんだから、あの世に来てもらっちゃ困るの・・・

つじつまが合わなくなるからね」

「だから、そういう時にも扉を使って修正してるんだよ」


「そうなんだ・・・瑠奈は死ぬはずじゃなかったんだ・・・そうか・・・」

「分かりました・・・そうだと分かったら善は急げ、早速でもすぐにでも

三途の川の扉まで行きましょうよ、未瑠奈さん」


「普通、冥界になんか行くって言うとたいがいはビビるんだけど・・・

叶多、おまえ前向きだよな」

「そんなに瑠奈とエッチしたいのか?」


(うっ・・・・図星だ・・・)


「違うよ・・・なにより瑠奈のことが心配だからに決まってるだろ」


みんな、揃ってそうじゃないだろって疑いのまなざしで俺を見た。

瑠奈、おまえまでそんな目で俺を見てどうすんだよ。


とぅ〜び〜こんて乳。





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