2 強欲
――…〈ウチ〉は馬鹿だ。大馬鹿者だ…。
「なんでウチは……あそこで、あの子の手を離してしまったんだ…」
一時の手離し。
一時のお別れ。
数秒、数分。どれだけの時間だろうと、一瞬でも彼女から離れたのは…――ウチにとって最大の、最凶最悪のミス…。
現にそのせいでウチの大事な宝石は宝石箱から出て行ってしまい、今は名も知らない博物館で管理されてしまってる。……本当に、最悪だわ…。
「馬鹿だわ、ウチは。正真正銘の、大馬鹿者だわ……!」
――…宝石箱から零れたのは、一際強い輝きを持った金剛石の様な宝石。
箱の中でも特に気に入っていた宝石なだけに、離れて行ってしまった事がとても悲しく、とても苦しい…。
「……なんで、なの…?」
「なんであの子は、ウチの元から離れて行ったのか?」
「なんでウチとは違う、全く別のヤツに向いてしまったのか?」
なんでナンデなんでナンデなんでナンデなんでナンデなんでナンデ…――。
〔”なんで?”〕
巨大な疑問が脳内を埋め尽くす。
だけど、それでも「理由」は分からない。全く分からない。
片時も”彼女”の事を…。”彼女達”の事を忘れた事なんて無いのに……本当に、どうして?
「……だめ……」
段々と、脳内が「彼女」で支配されていく。
思い出も、他の彼女達の事も忘れる程に「彼女」の”呪縛”は強く、そして禍々しい”…。
――もしかして。
「これは……罰なの…?」
貴女一人を愛せなかった。愛する事が出来なかった。
〔”そんなウチに対する、罰だと言うの?”〕
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