五十音表の「ぬ」
五十音表の「ぬ」を表すイラストに何が採用されていたか、あなたは覚えているだろうか。
某県の民族歴史博物館の品の中には、奇妙な五十音表がある。
一見すると幼稚園や小学校低学年の教室に掲示されているような、あ〜んまでのひらがなに、各ひらがなで始まるもののイラストが添えられているただのポスターである。
イラストはどれも親しみのあるものばかりで、「あ」なら飴、「か」なら柿、「さ」なら魚…と言った具合に、誰でも一目見れば判別可能なものばかりであるが、「ぬ」に添えられたイラストだけが、この世ならざるものを描いているという。
かつては某出版社から出版され、一般に広く流通していたが、
この五十音を使ってひらがなを学習した子供の親から「子供の書く文字がおかしい。ひらがなにも見えるが日本語の意味を成しておらず、不気味な異界の文字のようにも、呪詛のようにも見える」とのクレームが相次いだため発禁処分となり、偶然職員が未開封のまま所持していた一枚が、民族歴史博物館に保全されている。
さて、「ぬ」の欄に描かれたイラストだが、これを見た子供達の親はこう説明している。
「江戸時代の絵のような褪せた色使いで、畳のような窓のような、燻んだ黄緑色の四角がいくつか並んでいる絵だった。それぞれの升の中には蛇がのたくったような筆文字のような歪んだ線が描かれており、そのうちの一つだけ真っ赤な札のようなものが貼り付けてあった。真っ赤な札には、「n」「ら」「ら」「ア」と読める汚い文字が書いてあった」。
現在、この五十音表は一般公開はされておらず、実際に「ぬ」の欄に描かれているイラストを確認することはできない。
ところで、ヘブライ語で「呪い」を意味する単語は「קללה」である。
子供達はこの五十音表から一体何を学んだというのだろうか。
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