馴れ馴れしい隣人

 三重県●市のとある借家には、馴れ馴れしい隣人がいるという。


 駅まで車で五分という好立地にも関わらず、その一軒家の借り手はすぐに出て行ってしまうらしい。


以下は、その借家の元入居者達から入手した情報を纏めた、隣人についての概要である。



・入居初日の夜、引っ越し作業の疲れを癒そうと居間で寛いでいると、突然インターフォンのチャイムが鳴る。


・玄関を開けるとそこには隣家の者を名乗る人物が立っている

※のちに話を聞いた元入居者達は口を揃えて「顔はおろか、服装や性別すらも思い出せない」と語っているそうだ。

 

・隣人は親切な態度でその地域のゴミ出しのルールや最寄りのコンビニの場所を教えてくれる。


・入居者は初め、良い隣人に恵まれた、と思いありがたく話を聞くが、何時間経っても隣人は玄関先で話し続ける。


・夜も遅く、引っ越し作業の疲れが残っていることから入居者は「そろそろ……」と帰宅を促すが、隣人はなおも話を続け、しまいには巧みに制止を交わして宅内へ上がり込んでくるという。



・疲れと諦めで半ば自暴自棄になった入居者がしかたなく茶と茶菓子を出してもてなすと、隣人はいつの間にかいなくなっている。

 


・翌朝、出勤のために玄関を出た入居者が目にするのは、更地になった隣家の敷地と、その中央に据えられた古ぼけた祠のような物だけである。

 


・隣人とは、一体どこから来た何なのだろうか?

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