傾向と対策・3

■中間選考作品にむけて


 とにかく、一次選考を通過し、中間選考作品に入るのを目指そう。

 カクヨム甲子園に限らず他の賞においても、一次選考で応募数の一割ほどに絞られる。何度もいうけど、九割は落とされるのだ。

 読後感もよくて面白かったとしても、上手くまとまりすぎて残るもがない作品は通過できない印象がある。  

 落とされないためには、面白いのはもちろん、読み手を驚かせるような、他の人が書かない作品であることが望ましい。

 たとえば、複数のジャンルをかけ合わせてみる。

 現代ドラマに恋愛やミステリー要素を加えたり、SFにホラーやミステリーを混ぜたり、組み合わせることで差別化を図ることができる。上手く組み合わせることで、読み手の意表を突くことができるだろう。


 カクヨム甲子園は、どんな作品でも応募ができる間口の広い賞である。とはいえ、レーベルにあった作品か、カテゴリーエラーがないかも確認すること。

 応募規定にある字数オーバーした作品は、カテゴリーエラーとして落とされるので注意したい。

「男同士」「女同士」の友情は『現代ドラマ』、「男女」「同性」の絡みは『恋愛』となる。これを守れていれば、アダルトっぽいものも応募できる。ただし、アダルトな話が選考通過できるかは別。

 カクヨムには『表現についてご留意いただきたいこと』として、「表現の自由を制限するものではないが、青少年を含む利用者が気持ちよく利用できるよう、物語上の必要な要素として必要最低限の描写となるよう配慮するように」とある。

「表現・描写などにより著しく性欲を刺激するもの」

「暴力的又は陰惨な画像・表現・描写などにより興味本位に暴力行為又は残虐性を喚起・助長するもの」

「自殺を誘発・助長・ほう助するもの」

「犯罪行為及び刑罰法令に抵触する行為又は誘引・助長・ほう助するもの」

「他者に対する差別表現、権利を侵害する行為」

 これらについての過剰表現や描写の割合が大きいものについては、修正依頼等の連絡がくる場合や、作品の非公開化・削除を行う場合がある。

 また「未成年の飲酒・喫煙」など、法律で禁止されている行為について、物語の表現上やむをえず描写する場合は、そういった描写のある作品の紹介文の末尾に『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』など、行為の非推奨コメントを記載すること。

 先に上げた表現・描写を含む作品については、閲覧者への配慮としてセルフレイティング表示を行うなどのガイドラインがあるので、応募する際は各自で確認されることを勧める。

 カクヨム甲子園においても、過剰の表現や描写については控えるのが望ましいと考える。

 自分の作品が大丈夫かどうかは、これまでの受賞作品を読み、自作がそこに並んでもおかしくないかで判断すればいい。


 流行りの中にあって目新しいものはあるか。読み手に既出や類似作を思わせるものは、敬遠されると考えられる。意図していればパクリとなる。選考側としても、似た作品は選びたくないだろう。


 タイトルは格好良く、面白いか。長さは、作者の好みで決めたらいい。読み終わってタイトルをみたとき、テーマやお話全体の雰囲気をうまくまとめられていると感じられるかで、判断するのもいい。


 冒頭は読み手が興味を引くような、面白いところからはじまっているか。文法は正しいか、読みにくくないか。伝わりやすく書けているか。状況描写、外見描写、心理描写、雰囲気描写、行動や出来事、説明や考えの六種を用いて、読み手に伝わりやすく書けているか。終わりは盛り上がっているか。三幕八場構成で書かれているか。登場人物の葛藤の流れが書けているか。作者のエゴが強すぎないか、強すぎると敬遠される。

 気をつけたいのは、前年の受賞作に似たものを書かないこと。せめて一年あけてほしい。

 最後に、応募作品に「完結済み」とするのを忘れないように。連載中のままにしておくと、カテゴリーエラーで落とされるだろう。



 一次選考を通過した中間選考作品を読むと、ショートはショート、ロングはロングに合った内容の長さで描かれているのがわかる。

 こういうところも、判断基準の一つになっているだろう。 

 一般的に一次選考を通過した作品は、商業レベルで最低限の出来ということ。



 中高生が読書に求めている三大要素には、


一、「正負両方に感情を揺さぶる」

二、「思春期の自意識、反抗心、本音に訴える」

三、「読む前から得られる感情がわかり、読みやすい」


 がある。

 また、効率的に満たす四つの型として、


①「自意識+どんでん返し+真情爆発」

②「子どもが大人に勝つ」

③「デスゲーム、サバイバル、脱出ゲーム」

④「余命もの(死亡確定ロマンス)」「死者との再会・交流」


 これらを満たすような作品が選考されていると感じる。

 絶対とは言い切れないまでも、苛烈な環境ないし定型的ではない家族や人間関係に置かれた子供、または若者の成長過程を描きながら、終盤に切ない激情が爆発する(エモい)作品が獲りやすい傾向にある。

 描かれている関係性は、「家族」や「恋人」のようにわかりやすいものもあるが、必ずしもそれだけではない。

 テーマも「家族の絆」「友情」「恋愛感情」などもあれば、ひとことで片付けるのが難しいものもある。

 デスゲームや余命ものほどシンプルな設定の作品もあれば、「読む前から内容がわかる」話ばかりではない。

 物語では、難しい環境に置かれた子どもや若者が中心人物となり、悩み、傷つき、最後にはカタルシスが得られる「自意識+どんでん返し+真情爆発」型の作品が少なくない。

 カクヨム甲子園の受賞作は、三大要素の三番目に合致しない私小説や純文学も選考されるが、本屋大賞の受賞作に近いと考える。

(本屋大賞受賞作品とは、「親にも友達にもいえない悩みを抱えた子どもや若者が登場」「ラストは感動する」点が共通し、読んだことがある人には同種の感動が期待できると「読む前からわかる」 傾向がある)



■最終選考作品にむけて


 カクヨム甲子園では、二次選考を通過したものが最終選考作品となる。

 中間選考作品の七割ほどが落とされ、応募総数の約三パーセントに絞られる。

 

 一般的に二次選考以降は、その作品が売りやすいか売りたいと思えるかをみられる。

 売れるための何か。読者が作品に興味を持つ理由が足りているかどうか。時代性や新奇性、キャッチーさはあるか。自分が編集なら、売りたいと思える作品か。そういった視点で選考される。


 カクヨム甲子園は、現在高校生である貴方にしか書けないもの、オリジナリティに溢れた、いままで読んだことのない新たな作品を欲しているのだ。

 そんな作品が、最終選考作品に選ばれる。


 どんな賞にもいえるが、たとえ出来が良かったとしても、前年の受賞作品と似たテイストの作品は選ばれない。

 選ぶ側としても、二年連続で似たような作品は選び辛い。応募の際、前年度の受賞作品をひと通り、目を通しておくといい。

 たとえば二〇二三年の大賞は、憧れの男性作家と出会った少年がちょっと大人になるジュブナイル小説だったので、二〇二四年は似たような作品は選ばれないだろう。



■受賞にむけて


 最終選考に残ることだけでも立派であり、受賞できなかったのは、決して小説を書く力が劣っていたからではない。

 一般的に最終選考作品から受賞作を選ぶのは、いわゆる箔付け。

 こればかりはめぐり合わせ、運もある。 

 最終選考に残った作品群から、小説の出来の良さ、読み応えだったり読後感だったり、斬新さ、目新しさなどが比較される。

 なにより、なぜそのジャンルが好きなのかを突き詰め、追求し、どうしても書きたいとこだわったものが選ばれる。

 一次選考ではエゴが強い作品はよくないが、最後に残るためには作者のこだわり、好きかどうかが大事になる。

 いわゆる王道の作品が選ばれる。

 カクヨム甲子園で受賞される作品では、いわゆる尖った作品、他の作品とは何かが違うと思えるものが選ばれている。

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