傾向と対策・1

 カクヨム甲子園に応募される作品群は、ラノベやライト文芸、ファンタジー、児童文庫、純文学、ノンフィクション、詩など多岐にわたる。

 受賞作をみれば、、現代ドラマや現代ファンタジー、恋愛、SF、ミステリー、ホラーなど多様なジャンルに及んでいる。小説だけでなく、作者の実体験であるノンフィクションも選ばれたことがあり、選考幅が広い。(ただし異世界転生ものは、今のところみられない)


 カクヨム甲子園で受賞してもデビューや書籍化の用意はない。

 ただし、二〇一九年のキンコーズ・ツクール賞の受賞者に、表紙デザインから本文のレイアウトまでデザイナーがサポートした受賞作品を本にして二十冊プレゼントされたことがあった。

 また、カクヨム甲子園2018にて奨励賞を受賞した作品「めんとりさまー」がメディアワークス文庫より『めんとりさま Faceless Summer』書籍化された。



■文字数を守る


 ショートストーリー部門の応募規定文字数は、『四〇〇文字以上、四〇〇〇文字以下の作品』。

 ロングストーリー部門の応募規定文字数は、『六〇〇〇文字以上、二〇〇〇〇文字以下の作品』。

 文字数は守ること。

 規定オーバーすれば落とされてしまう。

 詰め込みすぎず、描きたいことを一つに決めるといい。

 書き終えたら必ず、『完結済み』にするのを忘れないように。


 ショートストーリーの場合、四百字詰め原稿用紙換算枚数は、一枚から十枚まで。壮大な長編物語を描くには不向きな文量。

 お魚で喩えると、魚の切り身。

 ある日の出来事やちょっとした思いつきなどが適している。


 ロングストーリーの場合、四百字詰め原稿用紙枚数換算だと十五枚から五十枚まで。読み応えある作品が書ける文量。

 お魚で喩えると、頭から尻尾までの尾頭付きの魚。

 原稿用紙一枚で一分とすると、五十分くらいのアニメやドラマをイメージすると書きやすいと思われる。



■誤字脱字や文章の書き方には寛大


 三点リーダーやダッシュの引き方、「 」の使い方、文章頭のひとマス明けなど、文章の書き方が正しくなくとも読まれる。

 作者の熱量こもった書きたいもの、伝えたいもの、読んで深く味わえる作品ならば、多少のことは目をつぶってくれる。

 参加する高校生の多くがスマホで執筆、投稿しているのを理解していると考える。正しい文章の書き方ができたほうが読みやすいが、大事なのは作者が作品に込めた熱量、面白さである。多少の間違いを恐れる必要はない。

 でも、誤字脱字等はしないように。

 読み手に伝えたいことが伝わらなくなってしまう。

 書き終えたら声に出して読み直し、確認することを勧める。



■高校生にしか書けないものを書く


 カクヨム甲子園は現役高校生しか応募できないので、高校生の生の声や体験、今しかもっていない感受性で書いた作品が良いと考える。

 過去ものや回想、昔話がいけないわけではない。

 でも読み手は、フレッシュさを感じたいし、どんな賞も常に新しいものが求められている。すでに読んだことがあると感じられる内容では、受賞は難しいと考える。

 素晴らしい文章で書かれた今を描いた作品と、回想を主とした作品が最終選考に残ったとき、比較して考えると、現役高校生の今だからこそ書ける作品が選ばれるのだと推測される。

 だからといって、必ずしも主人公が高校生である必要はない。



■人をむやみに殺さない


 登場人物が死ぬ作品があってもいいが、「感動させるためにキャラを殺せばいい」と安直に考えて書くのは止めたほうがいい。

 物語の山を作るためだけに殺されるキャラクターにとって、実に迷惑な話。読者を感動させるためだけに殺されるのだから。


 これまでカクヨム甲子園に応募されてきた作品にも、恋人や幼馴染や友達、主人公自身が死ぬ作品が多く書かれてきた。

 とくに二〇二三年はバラエティー豊かで、幽霊やいじめによる自殺、レモンティーが自殺したり、水槽に入れた恋人の死体を眺めたり、自殺の名所に殺した彼氏を捨てに行く、農業校の鶏の屠殺だったり、人類が滅亡した電脳世界などなど。ホラーやSF、ファンタジー作品でも多くみられ、まだこんな描き方があったのかと、種類の多さに感嘆させられた。

 死を描くことで生を描く手法もあるし、現代の高校生は少なからずネガティブな一面、希死念慮を抱いている証でもあるけれども、読み手が求めているニーズは果たしてそうなのかを考えてほしい。

 描きたい物語にどうしても必要ならば、描くことは構わない。

 その場合、他人が思いつかないような展開を考えること。読後感が悪いものは避けること。

 死を描きやすいジャンルはホラーやミステリー、SFやファンタジー、悲恋ものである。



■異世界転生ものは選ばれていない


 これまではというだけで、今後はわからない。

 ファンタジーは受賞されているが、未だに異世界転生ものが受賞されていない。

 内容次第だと思われる。ただ面白いだけではなく、異世界ものに何かを混ぜるのも一つの方法かもしれない。

 異世界転生ものとは、RPG世界を「自分だったらこう生きる」と考えた話なので、RPGに慣れ親しんでいないと難しいと思われる。

 日頃慣れ親しんでいるゲーム、マイクラやフォートナイト、プロセカ、モンストなど、自分たちが慣れ親しんでいるものを題材に描くのも方法の一つかもしれない。



■ホラーやSFも選ばれている


 選考側に、ホラーやSF好きな人がいると推測される。

 現代ホラー、ファンタジーホラー、あるいはSFホラーなど、かけ合わせて書かれた作品が受賞に至っている。

 ホラーは怖いミステリーのことを指すため、ミステリーを書ける人はホラーも書けるはず。ミステリーに科学的要素を盛り込めばSFになる。

 ありふれた視点をちょっとずらすために別の要素を取り入れると、他作品との差別化もでき、オリジナリティを増すこともできると考える。

 応募する時、大勢の人が書くジャンルを選ぶより、選ぶ人が少ないジャンルの方が、競争倍率が下がり、選ばれやすくなる可能性がある。

 ただし、既出感のある作品は避けた方がいい。

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