僕がまさに今触れておきたい、小田舵木さんという作家
珍しきかな、書き手さん紹介。今書かないと、この感覚を逃すと思った202404。
小田舵木さま
https://kakuyomu.jp/users/odakajiki
つながったきっかけをよく覚えていない。
同郷だとか、そういう事だったろうか。僕のエッセイにアンサーエッセイを頂いたりした。飾らない方だ。文章に現れるそういった精神性を、勝手に尊敬している。
さてこう、お付き合いゆえの褒め上げという感じにはならないかもしれない。
僕が小田さんの作風の変遷に面白さを感じたのは、昨年暮れ(2023暮れ)あたりからだと思う。
お勧めするか、といえば勿論おススメする。だが、わからん人にはわからんかもしれないとも思う。とにかく考えさせ唸らせるものを書く力がある方である。代表作も面白い。
でもやはり……僕にはどれをお勧めしていいか分からない。
基本、彼の一人称が語る作品世界は暗い。エンタメな作品がもちろんあるけれども、根底がいわゆる『明るい』とも限らない。
一種つかみどころがない様でもある。そして文章の多くは鬱的だ。
えーとなんだ。鬱的である、とはどーいう事かというとだ。
ものっすごい単純化すればアレだアレ。
『未来を過去のように認識し、過去を未来のように認識する』
のが鬱っぽい要素だ。
ちょっと前提をおこう。
未確定で可能性があるのが、未来だ。だよね。
いちおう確定済み、変えられないのが過去だ。だよね。
一般論として、まずまずコレは異論がないだろう。
ところが未来に可能性を認識せず、むしろ不可逆性を見出す。
その一方で過去にタラレバな可能性を求め、根拠のない想起をする。
この不思議な二項がループしてしまう。帰結として、頭の中で未来は明るくはなくなっていく。すでにあらかた、決定しているように感じられる。考えれば考えるほどそうなっていく。もはや、鬱にはまると運命論者や決定論者になってしまう……ようにすら思える。
こう、鬱ループに陥ってる人って、事実として明るい未来を提示しても頑として受け入れないことがあるよね?
気休めではなく、あり得る可能性を提示しても『ありえないもの』として拒絶する。そりゃ無理もない。その認識の変容が、まさに鬱の病巣だ。
であるから他人に「そのうち良い事あるって!」とか言われたところで
(……ああ確かにそうだよなぁ。良い方もあり得るよなぁ……)
とは、鬱の意識ではならない。
まったく鬱と言うのはヘンなヤツだ。懐疑的である事とは、決定的に異なる。非なるモノだ。懐疑は説得可能だが、鬱は不可能である。
例として挙げてみるなら。
「あの時はこうすればよかった、こうあるべきだった」
と嘆くとする。
これは過去に可能性を認めてしまっている。
「――であるから……この先、こうであるに違いない」
と考える。
ここでは未来に可能性を認めない。真逆なのだ。
人間だれでも多少は抑うつ的になるときがある。こういった思考に陥った経験は多くの人にあると思う。ホントに人間の意識と言うヤツは面白いのだねェ。
小田舵木さんの作品には、こういった傾向が散見された。重い、もしくは長い鬱というのは、人にこうした一面を付与してしまうものかもしれない。まったくワケわからんヤローだよ鬱。
また無力感、虚無感、景色が灰色で動かないような感覚。などなど。なるほど鬱の時の世界だわーって読書体験、読後感を、僕は小田さんの作品からかなり感じていた。仮定の話なのでテキトーにぶっちゃけてみると、僕はいつか飽きていたかもしれないとまで想像する。
ところがところがだ。なんだか去年の暮れかちょい前くらいから感じ始めたのだが、小田さんの作品がぐんぐん面白い。決定的に何かが変わったかと聞かれるとうまく言語化できないのだけれど。
なんだか、風景に色と動きが着き出してぐにゃぐにゃ動き出したように思う。どこかワクワク感がある。卵の殻を内側から叩く小気味よい音とか、ヒビ割れからクチバシの先がのぞいたような、高揚を誘うワクワクを感じるようになった。
この感じを残しておきたくて、キーをたたいている。
とはいえ一方、お仕事が忙しくなったせいだろうか?
推察するしかないのだが、小田さん自身は自作にいろいろと煩悶したりもしているようである。創作というのは苦しんでいる姿が芸だったり、迷う姿がサマになってたり色々とままならない。
はいでも、面白がるなとか愉しむなとか思われてもね!
僕というか、読者は勝手に楽しむのでね!
こう……病に囚われてもはや小説というより闘病記とか愁訴日記になっちゃう方って、悲しいことに結構見かけるんですが小田さんは根っこのとこ、けっこう生命力がたくましいのではないかと思うのです。でないとあのような昇華されたものは書けないと思います。
お? 最後はちゃんとヨイショできた気がするぞ。
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