一枚の雑巾
青太郎
一枚の雑巾
高校の同窓会に参加した私は懐かしい2人の人物に視線を送る。
すっかり変わった2人は、昔おばあちゃんが掃除中に話してくれた物語を思い出させた。
細かい部分も題名も忘れてしまったが、なるほどと思った内容だった為、簡単な粗筋はよく覚えている。
『むかしむかしとても醜い娘ととても美しい娘がいました。
ある日、醜い娘が困っているお婆さんを助けるとお婆さんはお礼に一枚の雑巾をくれました。
そして、その雑巾で顔を拭くように醜い娘に言います。
醜い娘は言われた通りに雑巾で顔を拭きました。
すると、なんと醜い顔がキレイな顔になったのです。
その様子を見ていた美しい娘は自分も更に美しくなりたいと思い、醜かった娘から雑巾を奪います。
そして、雑巾で顔を拭きました。
すると、美しかった顔は更に美しくなるどころか、なんと美しくなくなってしまったのです』
話の粗筋は大体こんな感じだったと思う。
今、同窓会にて久しぶり会った同級生の2人を視線の先に捉えつつ懐かしいおばあちゃんの話を思い出す。
物語自体はこれで終わりだが、おばあちゃんの話は続く。
『このお話はね、汚い場所を雑巾で拭くと綺麗になるけれど、綺麗な場所を雑巾で拭くとかえって汚くなってしまうという事なんだよ。
…だから、床を拭いた雑巾で机は拭いたらダメだよ』
子供心に心の綺麗さは関係なかった事に軽く衝撃を受けた後、なるほど…と思った。
そして、何故今その話を思い出したのかというと、同窓会に参加している2人がその状況に酷似しているように思えたからである。
昔、綺麗だと評判だった女子とその見た目や体型で一部から馬鹿にされていた女子。
2人共に整形をしたようだ。
綺麗だと評判だった女子は元がとても綺麗だったので却って違和感を感じる顔へと変わり、馬鹿にされていた子は気になる部分を直した為すっかり綺麗になっていた。
正直可愛さでいえばどちらも同じくらいなのだが、やはり元を知っているだけに綺麗になった子の方が皆の好意を集めやすい。
どちらも皆の注目の的になっている。
美しかった彼女はうっかり雑巾に手を出してしまったのだな…
なんとなくそう思った。
美しい物にはそれに合った方法があったはずなのに…
…ちなみに…私も整形したのだが誰からも気づかれていない。
一枚の雑巾 青太郎 @aotaro_aotarou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます