第83話 VSシュベルト
破壊された訓練場の中でアリシアとシュベルトは向かい合う。
シュベルトの顔は端正で整っている。
今まで多くの女性を魅了してきていただろう。
ただその顔はアリシアには憎たらしく見えてしょうがなかった。
「引っ張叩きたいか……、私と君は初対面だと思うんだが、嫌われたものだな」
「ええ、初対面ですよ。ですが、その自分が我慢をすれば良い方向に向かうって思っていそうな顔が気に食わないです。好きな相手に好きと言えなそうなところが特に!」
「私は愛する聖女には好きだと伝えているよ。彼女のためにも君には少々痛めに会ってもらうよ」
シュベルトは剣を構えるが、アリシアはそれどころではなかった。
シュベルトが、「愛する聖女」や「好き」と言った言葉を吐いた瞬間にアリシアはぞわぞわした不快な気分に襲われる。
(うう~、何でこんな嫌な気分になるんでしょうか? とっとと終わらせてグランの腕に抱かれたい……)
全く集中できていないアリシアに接近しシュベルトは剣を振り下ろした。
アリシアを斬りつけると思われたその刃は、白い何かに遮られる。
「『クリエイション・ロッド』 あなたのことが本当に苦手です!」
アリシアは自らが創り出した身長ほどの長いロッドで、シュベルトの剣を受け流しロッドで打ち据える。
アリシアはフレイアに師事している際に、魔法だけでなく杖術についても学んでいた。
シュベルトは剣でアリシアと戦おうとするが、リーチの差で近づくことはできなった。
それならばと距離を取り魔法を唱える。
「『フレイムランス』、『アイスランス』 私はこれでも天才でね、勝たせてもらうよ」
シュベルトは燃え盛る炎の
本来であれば、一属性の魔法しか使えないが、王族の血を持つシュベルトは二属性を使うことが出来る。
この火と氷の二属性を同時に使用するというのが、シュベルトを天才足らしめていた。
過去の記録を振り返ってもに属性を同時に使用した者など数える程しかおらず、現存する王族にはシュベルト以外にいない。
「二属性扱えるというのが何だって言うんですか?」
ではアリシアはどうであろうか。
女神ファルティナに正統な聖女として選ばれていた彼女は貴族でもなんでもない、ただの平民の出身である。
彼女は学園に平民として初めて満点合格した才女であり、身に膨大な魔力を有しながら緻密な魔力操作も可能であった。
「『ホーリーランス』」
アリシアの美しい声が響く。
既に手に持っていた白いロッドは消えていた。
四本の光輝く騎兵槍が放たれ、炎と氷の騎兵槍と対消滅し粒子となった散っていく。
アリシアとシュベルトの戦いは魔法の撃ち合いになっていく。
当初余裕を見せ二属性を使って見せていたシュベルトは徐々にアリシアに生成速度で後れを取り始める。
シュベルトは『フレイムランス』のみの生成に切り替えるが、それでも徐々にアリシアとの生成速度に後れを取り始めた。
平民であるがアリシアは天才である。
それも王族の天才と呼ばれるシュベルトを超えるほどの。
シュベルトは新たに騎兵槍を創りだそうとするが、アリシアにはまだ二本の騎兵槍が残っており、それをシュベルトに向けて放つ。
緻密なコントロールにより、シュベルトの体すれすれに落とし、バランスを崩させる。
その隙をつき、身体強化を使用したアリシアはシュベルトに肉薄する。
そして、宣言通りムカつく綺麗な顔を殴りつけ魔法を唱える。
「『
デューイに"服従"を掛けられていた女子生徒と同様にこれで洗脳のスキルは解けているはずであった。
今は洗脳を解除した影響で寝ているがいずれ、目を覚ますであろう。
アリシアは倒れている兵士たちにも魔法を掛けて、洗脳を解除していった。
遠くでは戦闘音がいまだに鳴り響ている。
その音は大きく、建物が崩れる音も聞こえてきた。
おそらくそこでグランが戦っているのであろう。
戦力的に言えば、まずはオルレアのところに向かうべきであったが、アリシアは嫌な胸騒ぎがしていた。
オルレアを安心させるために、ああ言ったがアリシアは相手の大男から普通ではない異常さを感じ取っている。
(グラン無事でいて……)
アリシアは音を頼りに、グランの所に向かって走っていった。
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