第8話 暗雲
イノシシ狩りの後も、グランは狩りに精を出している。
食料生産のために需要があり、狩猟依頼はいつでも掲示板に貼ってあった。
あの日以降、魔獣は出現せず、グランは鹿やイノシシなどを狩猟している。
日々依頼をこなし続けた結果FランクからEランクへと昇格した。
Fランクからの短期間での昇格はGランクでのドブさらいなどの功績が反映されたためである。
Fランクの依頼では鹿やイノシシなどの草食動物の狩猟がメインであった。
Eランクでは魔獣化していない肉食動物がメインとなり村に近づいてきた狼などの討伐である。
グランは依頼以外にもキースやほかの冒険者たちに講義や特訓をしてもらっていた。
このところグランは成長を感じている。
体が慣れてきたのか以前よりも長く稽古を続けられるようになっていた。
稽古中に冒険者たちに攻撃を打ち込まれても倒れることも減ってきている。
そんなある日、珍しく狩りの依頼がないためグランは薬草採取の依頼を受けていた。
採取が終わりギルドに戻ると違和感がある。
いつもよりギルド内に人が少なく、雰囲気も暗かった。
報告のためにグランがカレンのカウンターに行くと、カレンの顔は普段よりも青ざめている。
「何かありましたか?」
「今日新しく冒険者登録に来たのがヤバいヤツで私が絡まれて、キースさんが……」
言い難さそうに眼をそらす。
「倒されて骨を折られたわ。それを止めようとした人達も昏倒させられて……」
震えだしたカレンを隣のカウンターにいた受付嬢が背中をさすり励ます。
「あなたのせいじゃないわ」
グランがカレンの言ったことを理解できずにいると、重苦しい空気のギルドに能天気な声が響く。
「イヤー楽勝だったよ」
グランが声の方を見ると少年だった。
毎日ギルドに通っているグランだが、その少年の顔に見覚えは無い。
受付嬢はカレンを隠すように動いた。
少年は空いているカウンターに歩いていく。
「あのおっさんが止めろ、止めろ言うからどんだけ強いんだと思っていたら、弱すぎて楽勝。ゲームでも雑魚だったし、かすり傷も負わなかったよ」
少年は受付嬢が事務手続きをしている間もベラベラとしゃべる。
「あの相手程度に止めてきたって、あのおっさんはよっぽど弱いんだろうな~。いや、実際弱かったか。それとも僕が強すぎたのかな」
カレンの話と合わせて少年が誰のことを言っているのか、グランは気づく。
グランは頭に血が上るのが分かった。
ギルドの内にいる人たちの目つきも鋭くなっている。
グランが一歩踏み出そうとするが、その歩みは服を掴むカレンに妨げられた。
「グレッグ君、手続きが終わったからギルドカードを返すわ」
受付嬢からギルドカードを受け取ったグレッグは周りの冒険者たちを見回すと、ニヤニヤ笑いながらギルドから出ていった。
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