第4話 初仕事

 初仕事は大変であった。


 地域ごとにドブさらいの範囲は分割されているとはいえ、子供にとってその範囲は広い。

 その範囲の半分も進まず、グランは今日の作業を明るいうちに終えることになった。

 ギルドでの手続きなどで作業時間は自体は少なかったが、グランは掃除で疲れ果てしまう。

 汚泥を掬い、それを袋に詰め、埋め立て地に持っていく。

 その重労働により腕は上がらないぐらいに重たくなっていた。

 

 最近は誰も掃除していなかったのか汚泥の臭いもひどく、腐ったような臭いが絶えずしておりグランの精神を削っていく。

 ギルドで会った強面の男に言われたように、布で口と鼻を覆っていなければ病気になりそうな環境であった。


 グランは疲れ果てた姿でギルドへ帰っていく。

 道行く人達は臭いが移ってしまったグランに気づくと距離を取り離れて歩いていた。




 グランがギルドに帰ると、臭いが移っていたため受付嬢にギルドの裏手にある水浴び場に案内された。

 グランは近くの井戸から水を汲み、簡易的な仕切りのある場所で体を洗う。

 だが臭いは取れず、悪戦苦闘していると受付嬢が石鹸を持ってやってきた。


「石鹸なんて使わせてもらっても良いんですか?……あの、体は自分で洗えますよ?」


「良いの、良いの、ドブさらいで臭いがつくのは当たり前だし必要経費よ。まだまだ子供なんだからお姉さんに洗われておきなさい」


 受付嬢にまるっと洗われてしまったグランはまだ日も高いということで、臭いが移ってしまった服も洗っていた。

 服が乾くのを待っている間、受付嬢と話をしながら過ごす


 彼女の名前はカレンといい、グランより6つ上の12歳であった。

 10歳の時から働いているらしく、もちろんギルドの職員としては最も若い。

 ギルドで会った強面の男はキースという名前で、このギルド内ではトップクラスであるCランクの冒険者であった。


 そのような話や雑談をしながら、服が乾くのを待っていると、カレンとは別の受付嬢がやってきた。

 グランと楽しそうに雑談をしているカレンを見つけると首根っこをつかみ、ギルドへ引きずって戻っていく。


「サ、サボっていたわけじゃないんですよ。グラン君、今日が初めてじゃないですか、だからギルドについていろいろ教えていたんですよ。そ、それに今私休憩時間ですし……えっ、もう終わっている。あーーじゃ、冒険者が戻ってきて、今忙しい時間ですね……えへへ。痛い痛い、すみませんでした。時間を忘れててすみませんでした!!」


 引きずられるカレンを見送った後、服が乾いたことを確認して、グランは家に帰っていった。

 家に帰るとエリスが温かく迎えいれてくれるが、その表情は少しだけ暗い。

 

 エリスとしてはまだ六歳の子供働きに出したくはなく、自分の体の不甲斐なさが苦しかった。

 グランはエリスが自分を責めなくていい様に明るく振舞う。

 グランはギルドで出会った人たちのことや、どんなことをしたかなど楽しそうにエリスに語った。

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