第2話 冒険者ギルド
父親であるグラダスが亡くなってから一年が経ち、グランは喫緊の問題のため冒険者ギルドを訪れていた。
ギルドの中では剣や鎧を身に着けた厳つい男が多くいる。
その姿に父親のことを思いだしつつ、奥のカウンターに座っている制服姿の女性達の方に歩いていった。
女性達のなかで一番若い茶色の髪な女性のカウンターが空いていたため、彼女にグランは話しかける。
「すみません、ギルドへの登録をお願いしたいのですが」
「はい、こちらの用紙記入していただくのですが、代筆は必要でしょうか?」
「お願いします」
受付嬢はグランに質問をしながら用紙を記入していく。
グランが年齢を答えると彼女は驚きの声をあげた。
「えっ、6歳? 大きかったから気づかなかったわ。ごめんね、ギルドの登録は10歳からなのよ」
「お父さんが理由があったら10歳じゃなくても登録できるって言ってました」
「お父さんの名前は?」
「グラダス……」
「そう、
受付嬢は伏目がちにそうつぶやいた。
一年前に
ギルドも街の冒険者を招集し魔物や魔獣に対して防衛に協力している。
騎士団と冒険者による共同の防衛ではあったが
グラダスが亡くなったのはその防衛の最中である。
グランは黒髪の短髪であり、同じ黒髪に短髪であったグラダスの面影があった。
そしてグランが6歳の子より頭一つ分大きい体なのは、大柄だったグラダスの遺伝である。
受付嬢は顔を近づけ、周りに聞こえない声量で質問をした。
「お母さん、体が弱いって聞いてたけど、あってる?」
グランが頷くと、受付嬢は納得した。
ギルドから戦没者への支援金は出していたが、それは有限である。
エリスは体が弱く、仕事は家で簡単な内職程度しかできず、貯蓄は目に見えて減っていた。
冒険者の特別登録は経済的な困窮から、子供が犯罪に手を染めるのを防止するためにある制度である。
本来、孤児や孤児院を対象とした制度ではあるが、受付嬢はグランにも適用して問題ないと判断した。
受付嬢は用紙への記入が終わると、ギルドについて簡単な説明をした。
冒険者のランクは上から順にS、A、B、C、D、E、F、Gに分けられる。
Gは10歳未満の特別登録者専用のランクであり、Fランクの依頼しか受けられなかった。
10歳になると自動的にFランクになり、すべての依頼を受けられる。
FランクがSランクの依頼を受けることも可能である、もちろんギルドの関係者も周りの冒険者も止めはするが、それでも受けるのならばそれは自己責任であった。
受付嬢は説明が終わると、事務処理を進め、ギルドカードをグランに手渡す。
「10歳になっても、報酬が良いからって無茶な依頼を受けちゃだめよ」
受付嬢が不安げな顔で言ったが、グランが二つ返事をすると、笑顔でグランの頭を優しくなでてくれた。
受付嬢の言った言葉にグランは覚えがある。
それは冒険者登録をすることを最後まで頑なに反対していたエリスが折れた際に言った言葉であった。
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