ゲーム世界だからと転生者に好き勝手されてたまるか! ~モブの少年は幼馴染を守るために戦う~

コミ・ヘコミ

1章 モブの少年 グラン

第1話 変わり始めた少年の未来

 その日、街はいつもと違っていた。

 まだ日は高いが誰も外を歩いておらず、街を静寂が支配している。

 そんな街の様子だからか普段は聞こえることのない、獣の遠吠えがよく聞こえていた。


 グランは固く閉ざされた家の窓から街をうずうずしながら見ていた。

 グランは5歳の男の子である。

 おとなしい子ではあったが、年齢に対して体は大きく、外で遊ぶのが好きであった。

 前までは可愛らしい幼馴染の女の子と外を駆けまわっていた。

 その子は陽に煌めく金色の髪をしており、眼は海のように澄んでいる碧眼である

 彼女は幼いながらも知的な瞳をしていた。

 グランが年相応なおバカな行動をことをしていても、温かい目をしながら笑いフォローをするのだ。

 二人の仲は良く、彼らの両親も仲が良かった。

 ただ、グランは最近彼女とも、その両親とも会えていない。


 グランは家に居るのが退屈になってきたので外に駆けていきたかったが、今朝の父親の様子を思いだす。

 

 グランの父親であるグラダスは今朝早くから皮の鎧を身に着け、剣や弓を持って出かける準備をしていた。

 彼が準備する音や、グランの母親であるエリスとの話声によってグランは普段より 早くに目が覚めてしまう。

 まだ眠たいのか、グランは目を擦りながら両親の傍に歩いていった。

 

 「おはよう……」


 起きてきてしまったグランの頭をグラダスは優しく撫でる。


「起こしちまって悪かったな。グラン、今日は外に遊びに行くんじゃないぞ。…………もし俺に何かあったら、お前がお母さんを守ってやれよ」


 グランはまだまだ寝ぼけてはいたが、グラダスの言葉にしっかり頷く。

 グラダスはニカッとグランに笑いかけた。

 立ち上がるとエリスに向かい合い抱きしめ、キスをした。

 家を出ていくグラダスの姿をグランはエリスに抱きしめられながら見送った。


 グランが今朝のグラダスの様子を思い返してみると、冒険者として活躍するグラダスが武装をすることは普段通りではあるが、今朝はいつもとは違う緊張したような強張った顔だったように思えた。


「グラン、外は危ないからこっちに来なさい」


 エリスに呼ばれたグランはエリスの傍に歩いていく。

 エリスは寄ってきたグランを抱きしめた。


「大丈夫よ、明日になったらいつも通り外で──」


 遊べるわ、と言おうとしたとき、強烈な鋭い光が窓から入ってきて二人は目を開けていることができなかった。

 目の眩みから治る前に、火山が噴火するような音、獣の恐ろしい唸り声と立つことができないような揺れが二人を襲う。

 そのようなことが何度も続き、周囲の家から人々の悲鳴も聞こえてきた。


「大丈夫よ……明日になったらいつも通りよ……」


 エリスはグランを抱きしめながら、祈るように何度も繰り返した。




 その夜、グラダスが亡くなったことを他の冒険者から二人は聞いた。





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