第11話 帰還

「さて、出発しましょう!カナデ、動けそうですか?」

「あと簡単な魔法数回くらいなら使えるだけの魔力は回復したかな」

 ボクの返事にアマデルは「わかりましたわ」と頷いた。

「それならまたさっきのように空を飛びましょう!」

「でも霧が濃いから危ないんじゃなかったんですか?」

 あー・・・それは・・・

「さっきの魔法の影響で霧も晴らしちゃったみたい」

 ボクが使った魔法によって霧は晴れ、頭上には青空が広がっている。

「そういうことなので一気に上昇して目的の場所に行きますわよ!」

 ボクたちは再び魔法を奏でた。

 ボクたちの体は空に飛びあがった。

 上から見たらよくわかる。ボクも魔法で育った木はほかの木よりも高くそびえたっている。

 やりすぎたかもなー。

「あ!あれはさっき絡んできた人たちじゃないですか?」

 本当だ。洞窟の入り口があったところで木々に囲まれて動けなくなっている。

 あの感じだとクリアできるかも怪しいだろうな。

「向こうから仕掛けてきたんですから自業自得ですわ!」

 それもそうか。

「あ!見えましたよ!」

 アマデルが指さした先には先生たちが待っているスタート地点があった。

「よし!行こう!」

 ボクたちはそこめがけて降下を始めた。

「私たち何番目くらいなんでしょうね」

「わかりませんが最後のほうではないはずですわ」

 そんなことを話しながらボクたちは先生たちのところに到着した。

「アマデルチームの皆さんお疲れ様です。採取したものの確認をするので見せてください」

 ボクたちが来たことに気づいた先生がそう言ってきた。

「これですわ」

 アマデルが提示したものを確認している。

「はい、確かにメルミ花とホルル草ですね。おめでとうございます!一番でのゴールです!」

 え⁉一番⁉

「ほかのチームはまだ戻ってきていないんですか?」

「戻ってきていないというよりも、採取先で混戦になったらしく、生徒への攻撃で失格となった生徒が多かったのですよ」

 ボクたちもあのまま川のほうに向かっていたら巻き込まれていたかもしれないのか。

 あぶなかったなあ。

「まあそもそもあそこの川にはホルル草は生えていないんですがね」

 ははは、本当に危なかったな。

 二人も同じことを考えたらしく、ボクたちはそろって苦笑いをした。

「ま、まあ無事に授業を終えることができたってことでいいじゃないですの」

「そうですね。なんのかんのいって私たちが一番だったんですから」

「そうだね。あ!そういえばボクたちに攻撃してきたチームがいたんですがその人たちの動きを封じたので助けに行ってあげてください」

 ボクの話に先生は「心配はいらない」といった。

「すでにほかの先生たちが向かっているので問題はないです。それにしても攻撃してきた相手を傷つけないで無力化するなんてすごいですね。それにさっきの飛行魔法。今年の新入生はすごい人たちが入ってきたんだな」

 途中で倒れちゃったんだけどね。あはは。

 アマデルは「当然ですわ!」と鼻高々になっている。

 たしかに浮かせる魔法が空を飛ぶ魔法になったのはアマデルの機転のおかげだからな。

「もう少ししたら全員揃うと思うのでそれまで奥の休憩スペースでゆっくりとしていてください」

「じゃあそうしましょうか」

 休憩スペースには座る場所があり、飲み物や軽食が準備されてあった。

 ボクたちは並んで腰を下ろした。

「疲れましたわねー」

「ほんとにそうですね」

 ボクも緊張が解けたのか一気に疲れがやってきた。

「まさか一番だなんてね」

 ふたりは「本当に」と頷いた。

「あの時洞窟に行くことを提案してくれたアリアのおかげですわね」

「いえいえアマデルこそ、魔法へのかけ合わせはとてもうまかったです。あのおかげで戻りはすごく楽でした」

「魔法と言えば、カナデの魔法はすごかったですわね」

 効果は確かにすごいと思うけどまだ使いこなせてないんだよなぁ。

「まだまだだよ。相手がもし突破してきていたら動けなくなったボクなんて手も足も出ないだろうし」

「まぁ、わたくしたちはまだ入学したばかりの学生ですからね。これから強くなっていけばいいんですのよ!」

 それもそうだね。

 なにはともあれ無事に終わってよかった。

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