第10話 実習後半

「いきますわよ!アリア、カナデ!」

 アマデルはハープの音色とともにホルル草があるであろう水辺へと加速した。

 それに続くようにボクとアリアもそれぞれ魔法を使って加速した。

 後ろにはほかの班が追いかけてきている。

 ボクたちと同じように加速する人、ほかの班の妨害をする人など様々だ。

「このままだと、ついても取り合いになりませんか?それにさきにホルル草を採取した人もいるでしょうし」

 アリアの問いにアマデルは「そうですわね」と考え始めた。

「一か八かみんなが行きそうにないところに行くのはどう?」

「そうするしかなさそうですわね。では地図にある洞窟へと行きましょう。そこは周りが複雑ですので選ぶ人は少ないはずですわ」

 アマデルの提案に賛成して、ボクたちは洞窟を目指した。


 洞窟に行くまでの道は確かに入り組んでいた。

 立ち込める霧の中にそびえる岩はまるで迷路みたいになっている。

「さっきみたいに飛ぶのはどうですか?」

「この霧飛んだら危ないんじゃないかな」

「そうですわ。それに上から見ても洞窟がわかるかわかりませんわ」

 結局ボクたちはそのまま歩いて洞窟の入り口へと到着した。

 驚いたことにそこにはもう一班来ていた。

 なんかチンピラみたいな雰囲気の人たちだなー。

「誰だ!お前ら!ここは俺たちが先に目をつけてたんだから邪魔すんな!」

 うわー、いかにも嫌な性格をした人って感じだ。

「おい!聞いてんのか!」

 ボクたちが黙っていたら相手が怒鳴りだした。

「この人たちはほっといて行きましょう。かかわっても私たちにメリットはないんですから」

 アリアの言葉にボクとアマデルは「それもそうだ」と頷いて、洞窟のほうへと進みだした。

「無視すんじゃねー!邪魔すんなっつってんだろーが!」

 うわっ!

 いきなりギターの音色をかき鳴らしながら稲妻を放ってきた。

 とっさによけたけどあたっていたら軽傷どころじゃなかっただろう。

「ちょっと!なにするんですの!生徒への攻撃は禁止のはずですわよね!」

「うるせぇ!邪魔したお前らが悪いんだろうが!」

 その言い草はないでしょう。

 仕方ない。

「そっちがその気ならボクだって」

 ボクは舞のイメージで神楽鈴、琴、篳篥、太鼓の音色を奏でた。

 地面が揺れ始めた。そしてそこから植物の芽が次々と出てくると、たちまち大きく成長し始める。

 とたんにボクたちと相手の間は木々でふさがれ、さらには岩ばかりだった辺りが緑生い茂る森になった。

 あっ、これはやばいかも。

 ボクはふらっと倒れそうになった。

「カナデ!」

 すんでのところでアリアに支えられた。

「ごめん、ちょっとやりすぎたかも」

「いえ、おかげで助かりました」

「ちょっと!大丈夫ですの?」

 アマデルも心配して駆けつけてくれた。

「大丈夫だよ。ちょっと魔力を使いすぎちゃった」

「魔力を使いすぎたって・・はぁ、まぁたしかにこれだけのことをやったのなら仕方がありませんわね。これから洞窟内を探しますけど歩けますか?」

 うーんそんな歩き回れそうにはないな。

 それに

「その必要はなさそうだよ」

「え?」

 さっきの魔法の勢いで洞窟ごと壊してしまったらしい。中がむき出しになっている。

「あれは地底湖じゃないですか?」

「よし、ではカナデはそこで休んでいてくださいませ。わたくしがさがしてきますわ!アリアは万が一にもあいつらがやってきたらカナデを守りながら逃げてください」

 アマデルは地底湖、もとい池へと駆け出した。

「ごめんね、アリア。手間をかけて」

「いえ、あの状況を相手を傷つけずに何とか出来ただけでも十分ですよ」

 そういってもらえるとありがたい。

 とはいえ帰りはどうしよう。

「ありましたわー!」

 アマデルが戻ってきた。

「これで全部そろったね。あとは戻るだけだ」

「そうですね。少し休んだら出発しましょう」

 アリアの提案でボクたちは少しの間休憩することにした。

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