第9話 実習開始

「まずは作戦を立てますわよ」

 アマデルはそういって地図を広げた。

「これによると森には古い遺跡や川など様々な場所があるようですわ。採取する必要があるメルミ花は高い丘に咲く花で、ホルル草は湿度の高い場所に育つ植物ですわ。ここからですとメルミ花がありそうな丘のほうが近いのでそこから行きましょうか。二人はそれでいいですか?」

「はい、私はそれで問題ありません。カナデはどう?」

「ボクもそれでいいと思うよ」

「じゃあ出発しましょう!」

 こうしてボクたちの班は出発した。

 森にはすでに多くの班が行動していた。

 みんな同じ入学試験を受けたというだけあって、進むルートに大きな違いはないみたいだ。

 これだと先を越されたら採取されつくされないかな。

「このままでは追いつけないそうにないですね。今から私が魔法をかけるのでそれで加速しましょう」

 そういってアリアは魔法を使う構えをとった。

 鳴り響くはハープの音色。

 軽快な音楽とともにボクの体が軽くなるのを感じた。

「ありがとう!これなら追いつける」

 魔法によって強化されたボクたちはあっという間にほかの班の人たちを追い越した。

 ボクたちが魔法で強化されたことに気づいたほかの班の人たちも続々と魔法を使っている。

「じゃあボクはこうしようかな」

 ボクは大太鼓の音色を力強く響かせた。

 それとともに先を行くボクたちの後ろに大きな土壁が現れた。

 攻撃は禁止だけど妨害は禁止されていないからいいはず。

「すごいですわ!さぁ、このままいきますわよ!」

 結局誰も追いついてこないままボクたちは目的の丘のところに到着した。

 そこはたしかに高いがあたりには木々が生い茂っていた。

「メルミ花のもうひとつの特徴として日当たりがいいところに咲くことが挙げられますわ。ですのでこのあたりでとくに日差しが差し込んでいるところを探しましょう」

 日当たりのいいところ日当たりのいいところ。

 うーん、ぱっと見じゃわからないなぁ。

「見つかりませんわねぇ。仕方ありませんわ。アリア、カナデ、わたくしのところに来てくださる?」

 何だろう。何か思いついたのかな。

「どうかしたんですか?」

「このまま下から探していても見つからないので、上から探そうと思います。そこで二人には協力してほしいことがありますの」

 協力?何をすればいいのかな?

「いまからわたくしは空へ飛びあがります」

 飛ぶ?空を?

「危なくないかな、それは」

「ですので三人でやるんですの。わたくし一人だと飛ぶことはできても着地の際に魔法が使えるか怪しいですので、地上にいる二人でわたくしを受け止めるなり魔法を使うなりして着地させてほしいんですわ」

 なるほど。って、いやさすがに無理があると思うけどな。

 アリアも「いくら何でも無茶です」と言っている。

「二人なら大丈夫だと信じていますわ!」

 はぁ、ここまで来たらやるしかないか。

「しかたない、、やってみよう、アリア」

「わかりました。私もできる限り頑張ります」

 ボクたちの返事にアマデルは満足そうにうなずいた。

「さあ、カウントを始めますわよ!3、2、1、スタート!」

 その言葉と同時にアマデルはフルートの激しいリズムとともに高く飛び上がった。

 しばらく空中にいたのち、アマデルは落下し始めた。

「浮かせるイメージでいきますよ!カナデ!」

「うん!」

 ボクたちはアマデルを受け止めるための魔法を奏で始めた。

 アリアは得意のフルートの音色を奏で、ボクはそれにドラムの音色を重ねた。

 ふわりとした風が巻き起こった。

 さらにそこに落下中のアマデルがハープの音色を重ねた。

 するとアマデルの飛びあがるというイメージと浮かせると、ボクとアリアの浮かせるというイメージが合わさり、ボクとアリア、さらにはアマデルも再び空に飛びあがった。

 そのうえ今度は飛び上がるだけじゃない。ボクたちは一緒に空を自由に飛んでいた。

「うわー!すごいですわー!わたくしたち、今空飛んでいますー!」

「アマデルのイメージのおかげですね。空からの景色、すごくきれいです」

 本当にきれいだ。どこまでも広がる地平線。町からではよく見えなかったお城もよく見える。

「世界はこんなにも広いんですのね」

「そうですね、この先には私たちがまだ知らない景色が広がっているんでしょうね」

 ボクたちはしばしの間授業のことを忘れて空の景色に見とれていた。

「そういえば目的のものは見つかったの?」

「ええ、見つかりましたわ!ただ歩いていくには難しそうな場所にあったので二人の魔法に重ね合わせたらうまくいくんじゃないかと思いましたのでやってみたらこうなりましたわ」

「それはどこなんですか?」

「あそこですわ!」

 アマデルが指さした先には日差しがさしこんでいるがまわりが小さな崖に囲われているところがあった。

 たしかに歩いていくのは難しそうだ。

「さぁ、いきますわよ!」

 ボクたちは向きを変えて目的のところに着地した。

「ここにメルミ花があるはずですわ!探しますわよ!」

 さて、どこにあるかなー。

 ん?あれは・・・

 そこにはさまざまな色を含んだ花弁を持つ色鮮やかな花が咲いていた。

「アリア!アマデル!あの花じゃないかな」

 アマデルは喜んだ顔をした。

「ええ!あの花ですわ!やりましたわ!これで目標を半分クリアですわ!」

「やりましたね!」

 これで残るはホルル草だけだ。後半も頑張っていこう。

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