第5話 試験本番~終了
「以上で筆記試験を終わります。受験者の皆さんは昼食をとった後に再び最初の広場に戻り、今度は正門の正面の扉へ向かってください」
思ったよりも長かったけどなんとか筆記試験は終わった。
師匠が教えてくれた内容がほとんどだったから何とかなったと思う。
次は実技か。気をつるめずに頑張っていかないとな。
昼食を食べ終わると、ボクは実技試験の会場へと向かった。
会場は体育館ぐらいの広さがある闘技場のような場所だった。
「これから試験後半の魔法の実技試験について説明します。ルールは受験者同士の魔法による対人戦です。制限時間は3分です。今から皆さんには番号が書かれた腕輪を配ります。同じ番号の人が対戦相手となります。またこの腕輪は壊れる代わりに一回だけ魔法を防いでくれる効果があります。どちらか一方のバッチが壊れたら終了です。なお、対戦の勝敗は合否には直結しません。ここまでで何か質問のある人はいますか」
特に質問のある人はいないようだ。
「では、受験者の皆さんは腕輪を受け取ってください。順番が来たら呼びますのでそれまでは二階の観覧スペースに集まってください」
ボクに渡された番号は30番だった。
ボクの番まではまだしばらくかかるだろうし、それまでほかの受験者たちの対戦をよく見ておこう。
いざ始まると参加者の実力の差が浮き彫りになった。
中には魔法をほとんど発動できていない人もいる。
あ!次はアリアの番だ。
その相手はすごく自信に満ちた顔をしている女の子。。
髪は金髪でウェーブがかかったロング。
服装から見るにおそらく身分が高い人だろう。
少なくとも全く魔法が使えない人ではないと思う。
試合が始まった。
先に攻めたのはアリア。フルートの音色とともに相手の周りに風を巻き起こした。
これで決まるかと思ったが、相手の女の子はハープの音色とともにこちらも風を起こしてアリアの魔法をかき消した。
これには観戦していたほかの受験者の多くが驚いた声を上げていた。
今までの参加者の中ではアリアは上位のほうにいると思っていたけどあの女の子も同じぐらいの実力があるということだろう。
そこからは消耗戦だった。
一方の魔法をもう一方が打ち消すという展開が続いた。
互いに同じような魔法を使うということで決め手に欠けたのかもしれない。
二人の試合は時間切れで引き分けとなった。
それでも、二人には惜しみのない拍手が送られた。
次はいよいよボクの番だ。
ボクの相手はさっきと同じく身分が高そうな男の子だった。
師匠には魔力のコントロールができるようになるまで、なるべく大きな魔法は使わないないように言われている。
しかしこの相手がさっきの女の子と同じくらいの実力だったとして果たして魔法に触れたばかりのボクにさばききれるだろうか。
なるべく大きな魔法ではなく、しかし威力の高いものを使はなくては。
ボクは魔法を奏でる。あたりに太鼓の音色が響き渡る。
それと同時に相手の真上には真っ黒の雲が現れた。
そこから大きな音とともに落雷が発生した。
相手はそれをとっさに防いだ。でも、それは予想通り。
ボクはあらかじめ一つの太鼓の音に二つのイメージを重ねておいた。
一つは今の落雷、そしてもう一つは振動。
相手は振動のほうには防御が間に合わず直撃してしまった。
けがはなかったが腕輪が壊れたため、この試合はボクの勝ちとなった。
よし、なんとか勝つことができた。
観覧スペースに戻るとアリアが待っていた。
「お疲れさまです!すごかったですね!相手の人は手も足も出ない感じでした!」
「ボクはアリアほど魔法への反応が早くないからすぐに決めるほかなかったんだよ。アリアこそすごい試合だったね」
「あの子すごく強かったです。いったいどんな子なんでしょう」
それからは二人で残りの参加者の試合を観戦していた。
でも結局アリアの試合以上に白熱したものはなかった。
全試合が終わると受験者はその場で解散となった。
ボクたちは再び宿のほうへ帰り始めた。
「あとは結果を待つばかりだね。合格してるといいなぁ」
「本当にそうですね。でも、ほかの受験者の中では私たち結構アピールできたんじゃないでしょうか?」
「確かにそれは言えてるかもね」
そうこうしていると宿が見えてきた。
「おっ!受験お疲れさん」
驚いたことに宿の前で師匠が待っていた。
「師匠!帰ったんじゃなかったないんですか?」
師匠は心外そうな顔をした。
「弟子の試験なのに勝手に帰る師匠がいるかよ。ちょっと事情があっただけだ。それより飯でも食いに行こうぜ!」
ボクたちは師匠に連れられて近くの料理店に立ち入った。
「よーし、今日は好きなだけ食え!」
料理を待っている間ボクは気になったことを聞くことにした。
「そういえば受付の人が師匠の名前を見て驚いていたみたいだけど、師匠昔何かやらかしたんですか?」
師匠はちょっと言いにくそうな顔をして口を開いた。
「あー・・別に言う必要はないだろうと思ってたんだが、聞かれた以上答えるか」
ボクとアリアはやってきた料理を食べながら話の続きを待っていた。
「まぁ、大したことじゃねえけどよ、その、なんだ、ちっとこの国を昔救ったってだけだよ」
ボクとアリアは互いに顔を見合わせ、手に持っていたフォークを落としてしまった。
え?聞き間違いじゃなければ、今『国を救った』って言った?
「ほらな!そんな反応になると思ったからあえて言わなっかったんだよ!」
「じゃあさっき言ってた事情というのもそれに関係しているんですか?」
ボクの質問に師匠は「そうだ」とうなずいた。
「実は王様に久々に顔を見せてほしいと頼まれてな。さすがに断るわけにはいかんと思ってちょっくら行ってきたんだよ」
王様に呼ばれるって相当のことだと思うけどそれをそんなに軽く言うなんて。
ボクとアリアは飽きれ半分驚き半分で食事を終えた。
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