第6話 合格しました!

 試験の翌日。

 ボクたちは結果を確認するために再び学校の門の前にやってきた。

 だいぶ早いが、そうしないと遠くから来た受験者に合否が伝わらなくなる可能性があるらしい。

 ちなみに師匠は騒ぎになりたくないからあとからこっそりと行くといっていた。

 そこには合格者の名前が書かれた紙が貼りだされていた。

「ドキドキしますね」

 アリアの言う通り、さっきから心臓が激しくなっている。

 ボクたちは深く深呼吸をしてから、意を決して確認した。

 えーっと、ボクの名前は・・・

「あ!あった。よかったー!」

「私の名前もありました!」

 アリアが弾んだ声でそう言ってボクの両手をつかんできた。

「これで二人とも無事に合格できましたね!安心しました。私だけ合格できてなかったらどうしようと思っていたので」

 しばらく二人で喜びをかみしめたのち、ボクたちはそのまま入学手続きの列へと向かった。

 手続きといっても本人確認をしたのち制服と教科書、それから学生証を受け取るくらいだ。

 この学校の制服はいくつかの組み合わせがあり、その中から自分の好きな組み合わせを選ぶらしい。

 列は思いのほかすぐに減っていき、ボクの番になった。

 あらかじめ師匠が出していた資料を基にボク本人であることを確認された後、制服の受け渡しのために身長やどの制服がいいかなどの記載を求められた。

「以上で必要な確認は終わりました。では、こちらが教科書と制服、それから学生証になります。この学生証がないと校内の売店での買い物ができないためなくさないようにしてください」

 渡されたものはそれなりの量だが、学校側が持ち運び用のバックをくれたり、お金はかかるが頼めば郵送もしてくれるらしい。

 ボクはバックをもらって自分で持ち帰ることにした。

 門を出てしばらく待っていると、アリアも戻ってきた。

「すみません、待たせちゃいましたか?」

「気にしなくていいよ、それよりこの後はどうする?明日の準備をする?」

「そうしましょうか。ところで、こっそりとくると言ってた師匠はどこに行ったんでしょう?」

 確かに。今のところ姿を見ていないけど。

「すみませんが道を教えてもらえないですか?」

 唐突にマントのフードを深々と被った知らないおじいさんが話しかけてきた。

「ごめんなさい。私たちもこのあたりには詳しくないんです」

 アリアがそう答えると、おじいさんは笑い始めた。

「アッハッハッハ、わるいわるい、俺だよ」

 おじいさんがフードをめくると、そこには師匠の顔があった。

「師匠!なにしてるんですか?」

「何って変装だよ。いっただろ?こっそりついていくって」

「てことは初めからいたってことですか?」

「ああ、お前たちが喜ぶのもしっかり見ていたぞ。合格おめでとさん。じゃあ今日はお祝いだな」

 お祝いって、昨日もだいぶ食べたんだけどな。

 しかし師匠はなに言ってるんだという顔をした。

「昨日のは試験お疲れのお祝い、今日のは合格おめでとうのお祝いだ。全然違うだろ。な、アリア」

 さすがにアリアも否定するだろう。

「はい、師匠!」

 そうだった、アリアは師匠と前から一緒だったんだ。同じ感覚でも不思議じゃないか。

 結局ボクたちも思う存分食べて、合格の喜びを分かち合った。


 翌日、今日は入学式。

 ボクたちは制服に着替えて学校へと向かった。

 ボクが選んだ制服は白シャツの上に赤の薄手の上着、下は黒のズボンだ。

 隣を歩くアリアも同じような服装だが、唯一違うのは、アリアは青の上着にしたらしい。

 彼女曰くこれが一番シンプルかつ動きやすそうだったらしい。

 学校に着くと、新入生は講堂に集められた。

 しばらく席に座って待っていると、いよいよ入学式が始まった。

 どの世界でもこういう場での先生の話というのは長いらしい。

「続いて、新入生代表挨拶。新入生代表アマデル・エネルジコ」

「はい!」

 大きな声とともに一人の女の子が壇上に上がった。

 どうしてか周りにざわめきが広がった。

 白と黄色の上着とスカートに金髪が相まってすごく目玉って見える子だ。

 と言うかあの子って確か・・・

「ねぇアリア、あの子ってアリアが戦った人じゃない?」

「たぶんそうだと思います。新入生代表だなんてすごいですね」

 実際すごく強かったから新入生代表なのも納得できる。

 ボクらが話していると壇上のアマデルさんのあいさつが始まった。

「ご紹介にあずかりました、新入生代表のアマデル・エネルジコです。今日この良き日に来賓、保護者の方々に見守られる中、この栄えある王立グラツィオーソ学園に入学できたことを心よりうれしく思います」

 ここまで聞いてまじめな子なんだろうなと思った。

「わたくしは王族の娘としてこの学校のリーダーとなれるような学生になりたいと考えています。そのために今ここで宣言します。わたくしは同じ新入生の皆さんのみならず、在校生、教師陣の誰よりも優れた魔曲師になります!今この時より、この学校に所属するすべての人がわたくしのライバルです!以上でわたくしのあいさつは終了とします」

 ・・・え?

 あの子今自分のことを王族の娘って言った?でも確かにあの子の姓はこの国の名前と同じエネルジコだ。

 どうりであの子の名前が呼ばれたとき周りが騒がしくなったわけだ。

 それにあの子のあいさつ、後半からだいぶ強気な感じだったな。

「アマデルさん、すごい挨拶でしたね。私と戦った時もすごく自信がありそうな感じでしたし」

 アマデルさんは周りの人の注目を集めながらも解いた席に戻った。

 王女さまと同級生だなんて本当にすごい学校なんだなぁ。

 そのあともあいさつなどが続いたけれど、アマデルさんのあいさつのインパクトが強かった分周りの人はより一層退屈そうにしていた。

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