第1話 知らない部屋

 目が覚めるとボクは知らない部屋のベットで寝ていた。

 ここは・・・ログハウスかな。

 部屋の中にはボクが寝ていたベット以外に小さな棚、暖炉、テーブル、椅子、床にはラグが敷いてあり、向かい側にはドアがある。

 ベットの横にある窓からは緑の野原と少し離れたところには森のようなものも見える。

 ・・・野原?森?

 家の近くにそんなところあったっけ?

 それからさっきから部屋の中でピアノの音色が響いている。

 それを聞いているとなんだか癒されるような感じがする。

 そのときドアが開いて、ボクと同じ年くらいの女の子が入ってきた。

 乳白色の髪の毛の両サイドにみつあみを作りそれを後ろに回して結んだような髪形をしている。

 服装は白の長袖の服の上から黒色で袖のないワンピースを着ている。

 外国の人なのかな?

「あ!目が覚めたんですね。私の言っていること、わかりますか?」

 言葉が通じる。ってことはここは日本?

「きみ、森で倒れてたんですよ。何があったんですか?」

 よく見ると女の子の手には水の入った桶とタオルがある。

 この子がボクを介抱してくれていたのかもしれない。

 というか森で倒れてた?

「助けてくれてどうもありがとう。ここはいったいどこなの?」

 その時、今度はおそらく40歳くらいの男性が入ってきた。

 短く切られた灰色の髪の毛はくせ毛なのかところどころ跳ねている。

 どこかに外出していたのか古くなったマントを羽織っている。

「お!目が覚めたんだな。調子はどうよ」

「師匠、お帰りなさい。あ!まだ自己紹介していませんでしたね。私はアリア。で、この人が私の師匠のヨハン師匠。ここは師匠の家で、私はここで師匠と一緒に暮らしているんです。君の名前は?どこに住んでるんですか?」

「あっ、ああ、ボクの名前は音崎奏。日本に住んでいるよ」

 日本だけじゃどこに住んでるのかわからないかな。

「カナデくんですね。よろしくおねがいします。にほんという名前の場所は・・・ごめんなさい、わかりません?師匠は何か思い当たりますか?」

 ヨハンさんは首をかしげた。

「いや、わからんな。エネルジコ王国だけじゃなく他国の地名にもそんな名前のところはなかったはずだ」

 え?ここってそもそも日本じゃないんだ。

 それにエネルジコ王国?どこだろう。

 地理の授業でそんな国聞いたことあったかな。

「カナデはどうやってここへ来たのかわかるか?」

 そういわれても・・・ボクにもよくわからない。

 気が付いたらこの家のベットで眠っていたわけだし。

「まぁわからんなら無理に答えなくてもいいさ。それからもしも行く当てがないならしばらくこの家でゆっくりしていくといい」

 え!

 思いがけない提案に驚いた。

「いいんですか?こんな見ず知らずのボクを泊めて」

 はっきり言って今のボクは身元も出自も不明の明らかに怪しい人だと思う。

 そんなボクを家に置いておくなんて何もメリットはないだろう。

 しかしヨハンさんは軽快に笑ってから口を開いた。

「気にしなさんな。困ったときはお互い様だろ?アリアも別に構わないよな」

 アリアさんは笑顔でうなずいた。

「師匠がいいなら私はかまいませんよ。カナデくん、しばらくよろしくおねがいします」

 ありがたい。

 行く当てがないのは事実だしここについてもよくわかっていないので、結局ボクは二人の好意に甘えることにした。

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