第4話 【八神side】
僕の名前は八神怜斗(ヤガミレント)。
人よりちょっと出来が良いだけの普通の高校生男子である。
この春、ずっと好きだった女の子と同じ高校へと通うようになった。
中学2生の夏、たまたま部活で行った遠征試合で、彼女を見つけた。
誰かの応援なのか、制服のまま観客席にいる彼女を見つけた。
嬉しくて仕方がないといった様子で隣の小さい女の子と話をしていた。
年齢的にみて、姉妹だろう。
何がそんなに楽しいのか、一緒にいる妹らしき子の事を優しい瞳で見ながらニコニコと嬉しそうにしていた。
幸せそうなふわっとした笑顔に目が離せなくなった。
僕とは距離もあり、彼女が僕に気付く様子は無かった。
知らない人に見られる事は多くても、僕が知らない子を見つめる事になるとは思わなかった。
今まで感じた事のない胸の高鳴りを感じた。
話さえしていないのに目が離せなかった。
今まで、誰かにそこまでの関心を覚えた事は無かった為、そんな自分にも驚いた。
正直、こんな一方的で馬鹿みたいな一目惚れを自分がするなんて思っていなかった。
すぐに幼馴染の女の子達に呼ばれて、その時はそれ以上の事は何もなかった。
話さえしていないあの子に、全てを持っていかれた。
自慢では無いが、自分は他人よりも出来る方ではあると思う。
勉強しかり、見た目も周りが騒いでいるのは知っている。
正直、女の子に興味が出るお年頃ではあったけれど身近にそれなりに見た目の良い身内や幼馴染が居たのと、女の子の熱量に圧倒されて、他の男子程に興味を持てなかった。
友達(男)にも、そのままで良いと言われ特に考えた事も無かった。
それが、彼女を見てからは色々と考えるようになった。
今までは好意を寄せてくれる子を嬉しいと思う反面、どこか面倒に感じていた。
嫌われるよりは良いと思いつつもよく知らない相手の気持ちが重く、自分の行動を把握されるのは少し気持ちが悪かった。
それが、彼女を知ってからは気持ちがわかるどころか彼女達の行動を軽く感じた。
彼女がどんな人間なのか、どんな性格なのかどんな声なのかどんな環境で育ってどんな人達と関わりがあってどんな物が好きでどんな物が嫌いでどんな物を食べてどんな服を着てどんな会話をして…とにかくどんな事でも知りたくなった。
ただ、これを友人に相談したところドン引きしながら、重いと言われた。
とりあえず、大抵の女の子ならイケるから、知り合って付き合うまでは気持ちを抑えるようにアドバイスを受けた。
ストーカーと間違われて嫌われたくないなら言う通りにしろと言われ、不満が残りつつも話は聞く事にした。
必要以上に調べる事は禁止されたが、名前と学校位までなら調べても大丈夫だと許可が出たのですぐに調べた。
もちろん彼氏の有無も調べた。居なくて本当に心の底からホッとした。
調べている時に初めて嫉妬というものを知った。
今井 美里 さん。
名前まで可愛いく感じる。
こんな気持ちは初めてで、周りが見えなくなる人の気持ちがわかった気がする。
でも、焦って失敗だけはしたくない。
嫉妬を実感として知ると同時に周りの女子の姿も見えてきた。
今まで見えていなかった物が見えるようになった。
今井さんに近づきたい…でも、周りの女子の嫉妬の的にはしたくない。
付き合えるなら何としても守るけど、まだ付き合える段階にも、いっていない。
仲良くなりたいが、中途半端な関わりで面倒な相手だとは思われたくない…
そんなジレンマを抱えつつ今井さんと同じ高校に進学した。
勿論どんな高校でも同じ高校へ行こうと思っていたのだけれど、今井さんの進学希望は偶然にも自分と同じ希望校だった。
誰にも気づかれる事無く同じ高校へと進学し、同じクラスとなった。
正直これはもう運命なのではないかと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます