第2話 現代にて

ものごころのついた時には他人とは違う記憶があった。

少し成長するとそれが前世の記憶である事を理解した。


1番最初の記憶が1番印象的だった。


今の世界にはない風変わりで美しい景色。

壮大な自然、今の世界では見た事のない植物や生き物達。


そんな世界の中でも私はちょっと変わった存在だったと思う。


大気に融け込み全てを見て、全てを知っていた。


そこにいるようでいない、でも確かに存在する…なんだかフワッとした存在。


そんな私は一瞬の出来事でその世界から消えた。


何かあったのか…無かったのか…


ただ、大きな力を感じた瞬間私は消えていた。


それが最初の記憶。



次に気付いた時、私はたぶんこちらの世界に産まれていた。


貧困に苦しむ家庭の子供として。

とても貧しく、口減らしのために産まれて1年程で私が私を感じる事も無く殺された。



その後も、色々な場所や国、世界に、産まれては消えて産まれては消えてを繰り返した。


とても長い繰り返しであり、色々な人生を送ってきた。


そう、私はこの世界で転生を繰り返し続けているのだ。




そんな私は今、日本という国で今井美里(イマイミサト)という名の女子高生へと転生した。


とても恵まれた環境でとても恵まれた状態で、今までで一番快適に過ごしている。


何度も何度も何度も…転生を繰り返してきたけれど、どれも厳しい環境が多かった…。


厳しい自然や環境の中、更に貧乏であると命はとても軽い。食べ物も住むところも無ければ弱い者から消えていく。しかし、たとえ豊かな家へと産まれても敵が多ければ妬みやや謗り誘拐やなんやかんやで結局命の危険は更に増す。


国が違えば、価値観も違う。


しかし、どこに産まれても死はとても身近な物であった。




そんな中、今回の私は地球にある日本という国で産まれた。


とても平和で安全安心、命の危険が限りなく低い国。


ガス、水道、電気。暖かいご飯に暖かいお布団。そして贅沢なお風呂。

子供のうちは無料で受けられる病院。

義務で行ける学校。

可愛い服に様々なファッション。

音楽にスポーツ等娯楽も多い。


そんな贅沢生活も日本ではなんと一般的。


銃どころか刃物は持ち歩かない。


命の危険は基本的にないのだ。(あ、車には細心の注意を払ってます。)


なんて素晴らしい。


日本最高。


JK最高!!


これは今までで1番の人生だと確信している。



今世での父(45)は普通のサラリーマン。母(41)は普通のパート主婦。

そして普通・・の私(16)に可愛い妹一人(14)の4人家族。


この国ではごく平均的な家庭であり、この上なく平和な家庭でとても満足している。


私が小学生の時に両親が思い切って家を建て絶賛ローン返済中。


お陰様で一人部屋という私的空間までも手に入れた。


母は最近ちょっと遅れて韓流ブームがきたようだ。

その為、過去の作品へ遡りつつ推しのグッズを収集するため新しくパートを始めた。


妹(中学2年)は多少反抗期で難しいお年ごろ。

しかし、姉である私にはなついており、なんとも可愛くてしょうがない。


そして、私もこの春みごと難関高校に合格し、華の女子高生としての生活が始まったのだ。


素晴らしき華の女子高生。


命の危険もなく勉強さえ最低限熟せば娯楽に溢れているこの世界。


そんな中で私は確信したのだ。


今世のわたしは間違いなく…勝ち組だ。




あ、因みに家族には前世の記憶がある事は伝えてはいない。(言われても困るだろうし)

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