第4話 オレンジ
「オレンジなら庭にもあるけど」
「この木はちょっと酸っぱいんだよね」
「だね」
商人に掛け合う。
「領内のオレンジの木を調べて欲しい。甘いオレンジの木を探すんだ」
「へへぇ」
もちろんこれも十歳くらいの時の話だった。
あれから五年。
「えへへ、オレンジの木もだいぶ大きくなってきたわ」
「だね」
すでに小さい木ながら立派な実をつけるまでになった。
「甘いっ」
「どれどれ」
「このオレンジ、すごく甘い」
領内あちこち探し回り、甘いとされる木の種を植えたので、やはり甘いオレンジだった。
家の庭にも植えていた。
「これと同じものを一山植えました」
「山一個か」
「はい」
商人に確認する。このためにかなりの投資をした。
黒糖の利益をほとんどつぎ込んでいた。
商人も本気だとわかると、自分たちの資金も投球してくれた。
それで山一つ分確保できたのだ。
「オレンジ~甘いのとほのかな酸味もいいね」
「だな」
「お兄ちゃんも好きなオレンジ~」
生で食べるだけではない。
「オレンジティーとかもいい感じ~」
妹がハーブティーと一緒にしてお茶にする。
「皮はハーブティーにして、実はドライフルーツにしてみました」
「おぉおぉ、さすが俺の妹ちゃん」
「えへへ」
オレンジのドライフルーツは日持ちがする。
ハーブティーも同様に乾燥品なので、王都へ輸出するのに最適だった。
こうしてオレンジがまた特産品に加わった。
しかしまだまだ生産量は少ない。
地元の農家と協力して、今苗木をあちこちに植えているところだった。
数年後が楽しみだ。
「コスモスの蜂蜜とオレンジの合わせ技もいいよ」
「なるほど、妹ちゃん、えらいえらい」
「にゃはは」
貴族向けのオレンジの蜂蜜漬けもお土産品にいいだろう。
最近、Bランク以上くらいの冒険者が王都への土産にと買っていってくれる。
野営では干肉をかじるほか、乾パンも食べる。
しかしそれだけでは味気ないのだろう。
そしてやっぱり五年前くらい。
「次々、もっともっと、庶民にも甘い物、何かないかな」
「そうだなぁ。穀物だといいんだけど」
「トウモロコシも少し甘いよ。あとはそうだ、サツマイモ」
「そうだな、そのあたりだな」
ということで、一番庶民に無償で種芋を配布して普及を急いでいるもの、それがサツマイモだった。
トウモロコシは保留中になっている。
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