第3話 アブラナと蜂蜜

「土地は余っているので、アブラナ畑を三面ほど今年は栽培します」


 妹が計画案を立案してくれた。


「アブラナからは蜂蜜とそれから種ができればナタネ油が取れます」

「そうか、二度おいしい」

「そういうことになりますね」

「エンデルソンは温かいので、秋にはコスモスを植えてまた蜂蜜を採ります」

「なるほど、三度おいしい」

「そうです。よかったですね」


 養蜂場の農家を勧誘して、国内からミツバチを集めた。

 そうして一面の菜の花畑にハチがぶんぶんと飛び回る。

 予想の通り、この方法はかなりうまくいき、春の蜂蜜が大量に取ることができた。


 ナタネ油も絞ることができて、フライドポテトを作ったら、それが大ヒット。


「やっぱフライドポテトだな」

「ポテトうめぇ」

「芋だよ芋」


 ジャガイモはもともと栽培していたので、美味しい食べ方として広まるようになった。

 油を贅沢に使うが、露店の出し物として、とても有名になった。

 今では毎日エンデルソンのどこかでフライドポテトの露店が出ている。


「うふふ、お茶会でもフライドポテトは欠かせませんわ」

「そうですわ。おいち」


 貧乏だった男爵家仲間のティーパーティーではフライドポテトも評判で、ハーブティーと共に出された。

 黒糖パンと黒糖クッキーを欠かせない。

 そこに今年は蜂蜜クッキーも出して、黒糖クッキーとの食べ比べられるようになった。


 こうして黒糖&蜂蜜クッキーセットはエンデルソンのお土産として、よく売られている。

 特に最近、王都への輸出品として知名度を急速に上げており、エンデルソンといえば甘いクッキーとまで言われるようになっていた。


「お兄ちゃん。この世界でも甘い物、たくさん食べられるようになってきましたわ」

「だね、さすが俺の妹」

「えへへ」


 頭をなでてやると、ティーナはへにゃりと顔を崩して笑った。かわいい。

 それでもまだまだ甘い物は贅沢品で、基本的に貴族のものだった。


 本来なら、もっと庶民みんなで食べられるような甘いものを提供したいのだ。


「どうしたらいいんだろう」

「お兄ちゃん、そうだなぁ。最初から甘い食材だよね」

「うん、果物とか?」

「そ、だね」


 イチゴは雨に弱いなどハウス栽培がないと厳しそうだ。

 メロンも基本的にハウス栽培なので、同じような気がする。


「何かないかな?」

「果物でしょ。甘いやつ。お兄ちゃんそうだなぁ」


 二人して考える。


「そうだ、オレンジなんかどう? 甘いだけじゃなくて酸っぱいのもあるけど、その甘みと酸味がいいんだよ」

「そうだな、オレンジか」


 次に広げる植物はオレンジに決定した。

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